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『MarkeZine』(雑誌)

第100号(2024年4月号)
特集「24社に聞く、経営構想におけるマーケティング」

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編集長インタビュー

自分の仕事はPLとBSに影響しているか? 西口一希氏に聞く、経営にインパクトを与えるマーケターへの道

 MarkeZineではこれまで、「マーケティングを経営ごとに」という考えの下、デジタルを中心にマーケティング全般について、さらに経営におけるマーケティングの意義について取材してきた。しかし、マーケティング部門がなかなか経営層から評価されない、業務が軽視されがちだとの声も聞く。本稿では『顧客起点マーケティング』(翔泳社)の著者であり、このほど経営層向けに『顧客起点の経営』(日経BP)を上梓した西口一希氏に、マーケティングと経営との接続について、またマーケターが経営視点をどう養えばいいかを聞いた。

経営層の「顧客を理解していない」という共通課題

安成:西口さんはずっと、顧客起点で考えることが重要だと主張してこられました。まずこのタイミングで経営層向けに書籍を書かれた背景からうかがえますか?

西口:新著『顧客起点の経営』の執筆に至った背景は、主に2つあります。ひとつは、経営に共通する課題があると実感したことです。前著がMarkeZine読者の方をはじめ幅広い方々に手に取っていただく中で、経営層からの相談がすごく増えたんですね。収益性、営業、組織や人材育成の課題などテーマは多岐にわたりましたが、業種を問わず、どれも「顧客理解が弱い」という共通課題に収束するとわかってきました。

 もうひとつは、前著に対してマーケターの方々から「顧客起点マーケティングを実践したいが経営レベルの理解に至らない」という悩みも多く聞いたことです。顧客に対する向き合い方を変え、顧客起点で事業を進めるには、やはり経営の理解が必要ですし、部門を横断したサポートも大事です。なので、この考え方を経営者向けにもまとめたほうがいいのではと思うようになりました。

『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』
『企業の「成長の壁」を突破する改革 顧客起点の経営』
西口一希(著)日経BP 2,530円(税込)

安成:新著はターゲットの違いに加えて、前著の考え方が進化している部分も大いにあったと思います。

西口:そうですね。書籍化に先立って昨年『日経ビジネス』本誌と電子版に連載し、その反響を元に試行錯誤して、マーケティングの知識がなくとも理解できるように再編しました。並行して、私のコンサルティング実務や経営者の方との相談内容も変わってきたので、まさに進行形の顧客起点の概念をそのまま本にしました。

なぜ、マーケティングは評価されないのか?

安成:「経営レベルの理解に至らない」というお話からは、マーケティングと経営の乖離という課題も想起されます。経営層に、どうしたら自分たちマーケティング部門の意義を理解してもらえるかと悩む方は、MarkeZine読者にも多いと感じています。

西口:よくわかります。マーケティング部門のひとつの課題として、「KPIは達成しているが事業が伸びていない」ケースをよく聞きます。新著では、顧客の動きを時系列で追う「顧客動態(カスタマーダイナミクス)」というフレームワークを新たに発表しましたが、動き続ける顧客の一部に関する指標をKPIにしても、それは顧客全体を代表するわけではありません

西口:一方、経営層はマーケティングのKPIが部分的だといったことは見えておらず、とにかくPLとBSのボトムラインを引き上げたい、売上と収益を伸ばしたいわけです。KPIを達成したと言われても、事業成長に反映されていないので、マーケティングへの不信感が生じてしまっている会社は少なくありません。

安成:それが、マーケティングと経営が断絶してしまう問題の大きな要素なのですね。

西口:そう思います。ひとことで言うと、マーケティングが事業を成長させるように定義されていない。かなり、不幸な状態ではないかと思います。全体のビジネスを向上させるために必要なことをマーケティング部門がやり切れていないから、経営からの信頼が得られず、評価されないのです。

安成:負の連鎖ですね。それは、KPIが間違っているということでしょうか?

西口:そうですね。具体的には大きく2パターンあると思います。ひとつ目はデジマ中心で、数値化しやすいCPAやCVR。LTVは見ていても、固定したままで再評価を長らくしていない。LTVって、結構、変わるのですよ。それらはカスタマーダイナミクスの一部だから、単体では事業の結果と連動しにくいです。

 もうひとつは、顧客と関係ない指標をKPIにしている場合で、大手企業に多いです。代表的なのはテレビCMの好感度だと思います。M-Forceでも調査を発表していますが、好感度と顧客の購買行動の相関は、実はそれほど高くないのです。広告賞や社内の評価、小売店の評価を重視する場合も同じです。いずれにしても、「顧客全体の動きを捉えてKPIを設定する」ことが大事です。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/39663

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