【特集】2023年、マーケターたちの挑戦 ──未来を拓く人・企業・キーワード
─ 2023年、私たちの挑戦(エージェンシー編)
─ 2023年、私たちの挑戦(EC事業者編)
─ 2023年、私たちの挑戦(マーケティングベンダー編)
─ 2023年、私たちの挑戦(SNS/プラットフォーマー編)
─ 2023年、私たちの挑戦(動画/音声メディア編)(本記事)
─ 経営がパーパスにリードされる状態を目指して。博報堂 藤平氏が目指す、パーパス起点の「整合」
─ メーカーは多様性にどう向き合うか? 次の時代のあるべき姿を探すPanasonic Beautyの挑戦
─ 消費者の選択肢が増えすぎた今こそ、ブランド価値の最大化を。ユニリーバ木村氏が語る、これからの戦い方
─ 半径10mのマーケティングへ 「広告だけでは売れない時代」にマーケターに求められる力
─ ブランド戦略論の第一人者 田中洋氏が見据える視点 二極化するブランド、その背景にあるトレンドを探る
─ トレンドに惑わされず本質を見きわめるためにすべきこととは? ブランド戦略論の第一人者 田中洋氏の提言
─ ひとりマーケターになったとき、必要な心得とは?
─ 「にしたん」の4文字の認知度・ブランドをもって次の10年へ。西村社長が仕掛ける2023年の戦略
─ 【注目領域】データの力でOOH市場の拡大へ。LIVE BOARDの牽引で進化するDOOHの現在地
─ 【音部氏取材前編】2023年は自主的な職住一致で消費が変化する
─ 【音部氏取材後編】マーケターに必要なのは洞察力と道具を超えた本質的スキル
以下3名の方からコメントをいただきました。
スポティファイジャパン 井原 舞氏/TVer 蜷川新治郎氏/radiko 山田佑季菜氏
スポティファイジャパン
2022年を振り返って
ストリーミングサービスの利用が日本でも広く普及し、コロナ禍での生活習慣の変化を経て、音楽やトークコンテンツに対するニーズがますます高まる中、2022年はパートナーシップを軸にした活動を積極的に行い、カルチャーファンダムやコミュニティにおいてSpotifyをいっそう欠かせない存在と感じていただけるように取り組むと共に、新たなオーディエンスとの接点も積極的に広げてまいりました。
『ONE PIECE FILM RED』や『すずめの戸締まり』といった話題のアニメ映画とのコラボレーションもこれにあたります。作品と連動したTVCMやSpotifyでしか楽しめない特別なコンテンツを収めたマルチコンテンツプレイリストの展開、さらに前者では渋谷の街に散らばった劇中歌の歌詞を探し出す宝探しイベントを、後者ではコラボTシャツを販売するユニクロ店内でのプレイリスト試聴ブースの設置を行い、劇場を出た後もいつでもどこでも音楽や音声で映画の感動を追体験できる環境を創り出しました。
日本を代表するトップクリエイターたちとのコラボレーションも実施しました。ポッドキャストでは、世界を舞台に活躍する渡辺直美さんやゲームクリエイター小島秀夫さんの番組を英語でスタートし、これに合わせて彼らのクリエイティブな魅力を世界のオーディエンスに紹介するマーケティング活動を海外でも行いました。音楽分野では、宇多田ヒカルさんや星野源さんをはじめとする国内アーティスト5組の撮り下ろし映像を収めたSpotify限定ビデオシングルシリーズ『Go Stream』の配信や、K-POPイベント『2022 MAMA AWARDS』との投票連動、BTSのニューアルバムリリースを記念したキャンペーンなど、ファンと一緒になって祝い、盛り上がれるような施策を多数実施しました。こうした企画は、アーティストやクリエイターとファンが出会い、つながり、その関係を深められるように一貫して取り組んできたSpotifyだからこそ実施できたものであり、我々の存在理由を改めて知っていただき、ブランドの差別化につなげられるものではないかと考えています。
2023年に向けて
2023年も2022年に展開したパートナーシップによるアプローチを推し進め、これまでSpotifyに触れる機会のなかったオーディエンスに知っていただくと同時に、それぞれの興味関心や生活文脈の中でSpotifyを選び、愛していただけるような価値提案をしていきたいと考えています。引き続きエンタテインメント分野でのコラボレーションや、2022年に実施したクックパッドやサムスン、NTTドコモ、ユニクロのような生活に密着したブランドやサービスと連携したキャンペーン、さらに新たなところではエリアマーケティングなども検討しています。ぜひご期待ください。
またSpotifyは常にアーティストやクリエイターに寄り添い、彼らの独創的な表現の実現やキャリア形成をサポートし、リスナーを広げられるように取り組んできましたが、2023年もSpotifyならではの強みを活かし、クリエイターとファンにさらなる付加価値を提供できるような取り組みを企画検討しています。改めて皆様にお知らせできることを楽しみにしています。
スポティファイジャパン
マーケティング統括(Head of Marketing, Japan)
井原 舞氏
米国アパレルブランドのOld NavyやコスメブランドのBare Escentualsにおいて、アジア圏におけるビジネスの拡大やマーケティング活動をサンフランシスコを拠点に推進した後、2016年10月にスポティファイジャパンに入社。日本におけるSpotifyのブランド活動やマーケティング・プロモーション戦略などを統括。
TVer
2022年を振り返って
行動制限などの影響もあり、ここ2~3年は我々のような動画配信サービスを含め、コンテンツ視聴に割く可処分時間の割合が急増していたのですが、2022年4月以降、規制が緩和したこともあり、その勢いが少し弱まってきている印象です。しかし、この数年で動画配信サービスの認知・利用率は非常に上がり、我々にとっては足場固めができた2年半だと捉えています。
そんな中、TVerでは2022年4月にサービスリニューアルを実施。これまでの「キャッチアップ放送」に加え、「リアルタイム配信」を開始しました。「リアルタイム配信」へのニーズが高まっていたというよりも、あらゆるニーズに応えたいという思いからのリニューアルだったのですが、場所・デバイスを問わずに見ることができるTVerの特長から、スポーツ観戦などだけではなく、ドラマなどのコンテンツにおいても「リアルタイム配信」で世の中との同時共有体験をしたいユーザーが多いことが見えてきました。
2023年に向けて
2023年は、いよいよテレビ局の戦い方が変わってくる一年になるのではないかと思っています。YouTubeやTikTokなど「自分が見たいジャンルのコンテンツを深堀して視聴できる」環境に変わった今、「テレビで、我々が作った編成通りにみてください」という戦い方は、ますます通用しなくなっていくでしょう。
テレビ業界においても 「セレンディピティ」よりも「アクセシビリティ」が重要になってくると思っているため、TVerではユーザーが場所やデバイス、時間を問わずに好きなコンテンツを楽しめる仕組み作りの開発を進めています。たとえば、3時間の特番を見逃し配信ですべて追うのは大変ですので、チャプター欄を設けて気になるポイントを追うことができたり、ユーザーがおもしろいと感じた瞬間にハートマークを付けてもらい、ムーブメントが起きた瞬間をキャッチアップできたりする機能を作ろうとしています。
また、動画配信サービス利用者の増加にともない、「テレビデバイス」の強みも再度注目を集めています。3年ほど前まではTVerをテレビデバイスで見るユーザーは10%ほどでしたが、今では30%ほどのユーザーがテレビデバイスで視聴しています。今後も、テレビデバイスで動画配信サービスを楽しむという動きは加速していき、テレビは放送ではなく、ネット配信を視聴するデバイスに変わっていくと思います。放送とのカニバリを過度に恐れず、コネクテッドTVという軸での訴求に最大限注力してまいります。
TVer 取締役 COO
兼 テレビ東京コミュニケーションズ 取締役
蜷川新治郎氏
1994年日本経済新聞社入社。インターネットサービスの開発を担当。2008年テレビ東京へ転職。コンテンツ戦略、インターネットサービス全般、局横断サービスの立ち上げ、企画開発、システム構築を担当。2020年より現職