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MarkeZine Day 2023 Autumn

1,000件以上のリードを創出!最後発でも結果を出したチーム・ヤマハのBtoB新規事業開発の軌跡


情報がない中でコンセプト策定を行う3つのポイント

 BtoBtoB市場で、情報がまったくないところから2社で作り上げることができたのは、3つの施策のおかげだと金氏は語る。

  1. 全ステークホルダーとの目線合わせ
  2. 徹底した情報のヒアリング
  3. リサーチ途中での情報共有と議論

 ヤマハは2017年、全社横断でマーケティングを実践していくという社内方針から、マーケティングハンドブックを制作した。そして、マーケティングの基礎が学べるこのハンドブックを使い、ウルトラソニカという実在する製品を使ってアイディエーションを行った。 このマーケティング研修では、マネジメント層、新入社員、ウルトラソニカに関わっている全社員など、なるべく多くの人に参加してもらうことにした。このことにより、マネジメントのトップに対して決済をするときに非常にスムーズに進むなど、対外的な効果を発揮した。

「この研修はファインテックの中に浸透しました。研修の翌日から、これまで利益や納期しか飛び交ってなかった営業会議の中でもマーケティング用語が出てくるようになりました。自分たちの価値はどこか?を意識するようになったと感じています。」(長畑氏)

 特にスピード感を必要とする新規事業は、トップとの認識合わせが市場に浸透するスピードを決める。元々マーケティング文化のないヤマハファインテックの中に、実在する商品だからこそ浸透したと長畑氏は語る。

マーケと営業のスムーズな連携に必要なこと

 ターゲットを絞ってコンセプトを作ったとしても、実働部隊である営業サイドとの情報共有が課題となりがちだ。そこはどのように実現したのか?

「身も蓋もない話ですが、今回は少数精鋭部隊で実行し、メンバーの中に開発と営業の両方を担当する人物がいました」と金氏。研修や毎週の定例会を通じて製品コンセプト作りから広告戦略まで、営業サイドの視点が常に付加され、情報が共有された。

 これでは、たまたま初期段階から営業・開発のメンバーがいたから上手くコラボレーションできていたことになってしまい、再現性は期待できない。この点について金氏は偶然性を認めつつ、だからこそ今後に活かすべきだと語る。

「さらに大きなプロジェクトになったら、最初から開発・営業・マーケティングの主要メンバーを入れたマネジメントチームを作ることが大事だと思っています。今回の件は最初からメンバーが入っていたことで、音のヤマハという、ヤマハが持っている資産に辿りつきました。シンプルですが、営業や開発をできるだけ巻き込んで毎回情報を共有することが大事です。」(金氏)

実際に、今回の実績を含めた再現性を活かすため、ウルトラソニカとは別でヤマハとヤマハファインテックの協業が進行している。

当初、「音のヤマハ」という強みに気づかなかった

 取り組みを経て、「BtoB、BtoCに大きな違いはなく、基礎が大切だと改めて感じます」と両氏は振り返る。

 ウルトラソニカの訴求で「音のヤマハ」を使うアイデアは当初メンバーの誰からも出てこなかったという。戦略立案をする中で、チャレンジャーとしての強みは何かが見えなくなっていた。「我々の価値は何か?」で行き詰まったところで基本に立ち戻り、顧客へのヒアリングや社員インタビューを実施。その中で改めて「ヤマハ」というブランドが培ってきた信頼を把握した。そこから「音のヤマハの超音波」という打ち出しが誕生したのだ。

「市場を策定し、どういったセグメントに対してポジショニングをするのかを考えると強みが見えてきます。どんな企業にも強みがあります。順序立てたフローを立てることで見えてくるものがあります。BtoCでもBtoBでも、製品やサービスの先に存在する人間を想像することが重要です。今回、ヤマハは130年培ってきたブランドがBtoBにも強いと実感し活用することができました」(金氏)

「今回はマーケティング思考と市場投入の話をさせていただきました。全世界へ作り上げてきた価値を届けていくにはデジタルマーケティングの価値が発揮されます。しかし、基礎的な部分は変わらないと感じました。」(長畑氏)

これからも基礎を忘れないようにしたい、という言葉でセッションは締めくくられた。

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この記事の著者

西原 小晴(ニシハラ コハル)

 京都府立大学農学部出身。前職は大手印刷会社にて化学物質管理のシステム開発&管理者。退職後、化学・建設・環境法規制などの知識を活かして大手企業のライティングを行う。現在はリードナーチャリング、セールスライティングをメインとするマーケターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/20 10:11 https://markezine.jp/article/detail/43640

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