人間はとてつもなく非合理な生き物だから
──AIが経営の意思決定までサポートするような時代になりつつありますが、人がリスクをとって経営すること、人が組織を率いることの本質的な面白さや価値はどこにあると思われますか?
経営においては「誰が言うか」が非常に重要だと考えています。リーダーの人間性や「この人のために働きたい」「一緒に働きたい」と思えるストーリーが大切なんです。

以前、僕がしたためた何十万字というテキストをAIに読み込ませて、今まで投げたことのない質問を投げてみたら、僕とまったく同じ回答が出てきたんです。何なら僕より僕らしい思考をしてくれました。全盛期のフレッシュな思考で判断してくれるんです。人間は老化にともない意思決定を誤ることも増えますから、そういう意味ではAIのほうが優秀だと感じる部分もあります。
ただ、人間の指示に従って失敗しても納得できますが、Geminiの指示で失敗してもメンバーは納得しないと思うんですよね。
──「阿部さんが言うなら一緒に失敗しても良い」と思わせる力が必要なんですね。
僕でなくても良いのですが「この人が言ったから失敗しても納得できる」という感覚は誰にでもあると思います。
昔、人気の案件に対して複数人の手が挙がったことがありました。当時はルールが曖昧だったため、希望者が多い場合はじゃんけんで決めることにしたんです。公平性の高い方法だと思ったのですが、じゃんけんに敗れたメンバーから後で「納得がいかない」と言われました。その案件に対して強い情熱を持っていたメンバーからすると、じゃんけんごときでチャンスを失ってしまい、納得がいかないのも当然ですよね。
そのメンバーは「阿部さんに『君には向いていない』と言われたほうがまだ納得できる」と言っていました。非合理に思えますが、それが人間らしさです。この経験を踏まえて、非合理性を前提にルールを設計するようにしました。
──人間はそれほど合理的な生き物ではないんですね。
人間はとてつもなく非合理的です。合理的であれば戦争は起こりませんから。合理性だけで人は動かせません。AIの弱点というわけではありませんが、非合理性は人間が引き受けるべきだと思います。
不可逆を楽しめるリーダーの元に人も仕事も集まる
──最後に、視聴者に向けてメッセージをお願いします。
テクノロジーが急激に進歩すると「自分の仕事がなくなるのではないか」と不安になるかもしれませんが、それは皆同じです。人類は産業革命をはじめ、過去に何度も同様の歴史を経験してきました。
既存の産業にしがみついて後ろ向きになるのではなく「これからどう変わっていくのだろう」と変化を楽しめるようになったほうが絶対に得です。テクノロジーは不可逆であり、過去に戻ることはありません。前進するしかないのであれば、そのことをポジティブに楽しんでいる人の元に仕事も集まります。
──不可逆を楽しむ。そこもまた人間の胆力が試されますね。
気の持ちようだと思いますよ。ネガティブに捉えるかポジティブに捉えるかの違いだけです。どうせやるならポジティブにやったほうがおもしろいんじゃないかなと思います。
──そういう人に周囲もついていきたくなりますしね。
間違いないですね。
──今回のインタビューを通して、人がビジネスを動かしたり、マネジメントをしたりするおもしろさが伝わっていれば幸いです。阿部さん、本日はありがとうございました!
