ビジネスリーダーから日本を元気にする「覚悟108」
現在、株式会社コミュニカを立ち上げ、経営者・リーダー向けの講演や研修、人材育成に尽力している山元氏。その原点となるエッセンスは、ティム・クック氏へ退任を伝えた帰りの飛行機で既に洗い出されていた。
「厳しい環境のなか、簡単とは言えない挑戦に臨んだ5年半、意外にも私は一度もプレッシャーで潰れることがありませんでした。なぜ、“笑顔で元気に”、結果を残すことができたのだろう。自分がやってきたことを書き連ねてみたら100項目以上ありました」(山元氏)
ITテクノロジーやAIなどの技術論でもなく、単なる根性論でもない。人前に立つリーダーに必要な素質を山元氏は「覚悟108」と題し、独自の108項目にまとめた。同名の書籍のなかには、以下6要素×各18項目で、山元氏が考える「覚悟」が分類されている。
- Mission(なりたい自分)
- Wisdom(知恵・工夫)
- Competency(知識・スキル)
- Vision(企業理念)
- People(組織・人)
- Communication(コミュニケーション)
この「覚悟108」をベースに、山元氏は日本全国で何百もの講演を実施している。開催した場所は、商工会議所、大学、高校、中学、小学校まで。講演を聞いた人数は50万人以上。また、「覚悟108」のすべてを教える私塾も開校した。全項目を学びきった受講生は延べ5,000人以上に上るという。
本セッションでは、「覚悟108」から厳選して1項目が紹介された。「The only constant is change.(変化こそが唯一不変のもの)」、常に変化していく世の中を恐れず受け入れていこうという英語のことわざだ。
「欧米に追いつけ追い越せ」のマインドで急成長を続けた昭和を振り返り、現状を嘆いても状況は変わらない。「変化を受け入れ、発想を転換していくことが必要だ」と山元氏は強調する。
「実は、ハーバード大学が調査している『経済の複雑性ランキング』で、日本は1位常連。半導体や化学製品などの複雑な製品を多様に作れるかにおいて、日本に勝る国はないのです」(山元氏)
経済構造の変化、年齢層の変化、外国人比率の変化……。私たちは日本を取り巻くあらゆる環境の変化を俯瞰して受け入れ、数十年後までも見据え、適応していく必要がある。立ち止まって「日本はもうダメだ」と嘆いている場合ではないだろう。

AI時代でも変わらないグローバルリーダーの本質
世界が大きく変化するなか、「覚悟108」も次の段階を迎えようとしている。山元氏は現在、AI時代に人間が担うべきリーダーシップをあらためて問い直し、108項目を新たな内容へとブラッシュアップしているという。
AIが多くの業務を代替するようになっても、人間の役割がなくなるわけではない。「人間にしか担えない価値」がますます問われるようになっていくなか、山元氏が強調したのが「体力」の重要性だ。
「もし、私がほんの少し成功できたのであれば、それは学歴でも、地頭がいいからでもありません。ひとえに、“鬼のような体力”のおかげです。体力があったからこそ、どの会社でも一番大変な仕事をアサインされ、一番たくさんの失敗をして、一番早く学ぶことができました。自分の身体をつくるのは、運動と食べ物、そして睡眠。変えられるのは自分だけですよ。毎日トレーニングして、7時間は寝ましょう」(山元氏)
Appleが社会を一変させる瞬間に何度も立ち会ってきた山元氏。その経験の先にたどり着いたのはテクノロジーの追求ではなく、それを扱う「人間」に向き合うことだった。AIがどれだけ発展しても、世界で戦えるビジネスリーダーの本質は変わらない。山元氏がアプリ業界の未来を担うリーダーに自身の哲学を伝え、「Adjust Ignite Tokyo 2026」の基調講演は幕を閉じた。

