「検索順位」だけでなく「AIに推薦されたか」を測る
効果測定も変わり始めている。
Microsoftはアクセス解析サービス「Clarity」で、AI時代を意識した「AI Visibility」の分析機能を提供している。自社コンテンツがAIに引用されているか、どのようなクエリやトピックと関連付けられているか、競合と比べてどの程度露出しているかを分析する。さらにAIからサイトへ流入したユーザーだけを切り出し、ヒートマップやセッション記録を確認することもできる。
これまでマーケティング会議で「このキーワードではGoogleで何位か」「広告のCTRやROASはいくつか」を確認していたように、今後は「この質問をChatGPTやCopilotにしたとき、なぜ競合商品は推薦されるのに自社商品は出ないのか」を調べることが日常業務になるかもしれない。
Microsoft自身、商品フィードの整備からAIネイティブ広告、Brand Agents、Copilot Checkout、AI Visibilityの分析までを「90-day activation roadmap」としてまとめている。これは数年先を予想した未来レポートではなく、企業に90日単位で準備を始めるよう促す実践的なプレイブックなのである。
「AIに仕事を奪われる」とは別の視点で起こる変化
生成AIとマーケティングを巡っては、「広告コピーをAIが作る」「マーケターの仕事がAIに代替される」といった議論が続いてきた。エージェントコマースが示しているのは、それとは少し違う変化である。AIがマーケターの代わりになるだけではなく、消費者の代理人にもなるのだ。
そうなればマーケターは、広告を作り、SEOを改善し、ECサイトへ人を集めるだけでは足りない。AIが理解できる商品データを整え、AI上で自社商品がどう評価・推薦されているかを把握し、AI販売員の会話から顧客インサイトを得る。そしてChatGPTやCopilotのようなAIを、新しい販売チャネルとして管理する仕事も生まれる。
もちろんHuman Webが明日なくなるわけではない。Microsoft自身も、Human Web、LLM Web、Agentic Webの3つは現在同時に存在するとしている。
だからこそ難しい。これからのマーケターには、「人間に魅力を伝えるマーケティング」と「AIに商品を正確に理解させるマーケティング」を同時に設計することが求められる。
AIショッピング時代に変わるのは、消費者の買い方だけではない。マーケターの職務記述書そのものが、書き換わり始めているのである。
