国内小売営業収益No.1 イオンの「オムニチャネル時代のeマーケティング戦略」
「ネット&スマートフォン・コマース 2013 【東京】」の基調講演は、イオン株式会社Eコマース事業最高経営責任者 小玉毅氏による「オムニチャネル時代のeマーケティング戦略」。「あくまでリアルの世界から見た、eマーケティング」と前置きし、講演を始めた。
27年前に入社し、マレーシアではショッピングモールの店長も務め、「リアルひと筋」で生きてきたという小玉氏。その経験から、ショッピングモールの特徴は「場を作ること」とし、同社のeコマース事業のミッションは、同グループ運営店舗のレジを通過する、「のべ25億人のお客さまとつながり、ネットワーキングしていくこと」だとする。
「場を作ることができる小売業は、ショッピングモールだけではないでしょうか。この社会的意義や価値を、どうやってWebで表現していくのか、長期的には非常に重要な戦略だと考えています」
これらを踏まえた上で、小玉氏がまず取り組んだのは基盤づくりだ。3,000万人を超える電子マネー「WAON」を活用した「ネットWAONポイント」の作成や、ポータルサイト「イオンスクエア」や「AEON MALL」をはじめとする各種ECサイトの立ち上げなどである。
「基盤ができあがり、迎えた第一ステージは『集客』でした。イオンスクエアは、イオンのデジタルシフトの根幹となるものですが、リアル小売業の強みを活かし、イオンカードなどとも連携しながら、会員数700万人でスタートすることができました。現在、950万人を超える会員数となっています。1,000万人に達したならば、次の第二ステージである『eコマースの売上拡大』へ移行していこうと思っています」
イオンのeコマース事業が持つ基盤と会員属性を理解したところで、小玉氏がこの1年半取り組んできた10の仮説検証を見ていこう。
仮説1「店があることは競争優位の源泉だ」
これに小玉氏は「まだクエスチョン」と回答する。
「当社は、北海道から沖縄、中国やASEAN諸国まで、莫大な店舗ネットワークを持っています。このネットワークは、我々にとって非常に競争優位でありますし、Web専業の方からみると絶対に真似のできない領域でしょう。
しかし、リアルの小売業者は、圧倒的に優先順位はリアル店舗を作ることに置いているわけです。無意識のうちに、お店を優先するような施策をとってしまうし、資源配分においても、圧倒的に店に有利に配分される。
今、デジタルシフトで真剣にやっていこうと、経営幹部が念仏のように唱えているわけですけれども、なかなか念仏の域を出ない。こうしたカルチャーをどうやって変えていくのか。私自身が、お店とeコマースのシナジーをどんどん実証していく必要があるなと実感しています」
仮説2「来店が難しいお客さまがネットで購入する?」
この答えとして小玉氏が示したのは、近畿、中国、四国地方の地図だった。
「黄色がイオンの大型ショッピングモールがあるところ、赤がイオンモールオンラインのお客さまのデータをとったものなんですが、ご覧のとおり、ほとんどのお客さまがショッピングモールの近くなんです。この地域に限らずどの地域でも、この傾向が見られました。これはある意味驚き、ある意味感動しました。
オムニチャネルの究極の目的は、お客さまのお財布シェアを上げること。店舗でお買い物をしていただいているお客さまに、オンラインでもお買い物をしていただいている。これは、非常にうれしい誤算でした」