※本記事は、2025年3月刊行の『MarkeZine』(雑誌)111号に掲載したものです
米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』
─ 2030年、米国広告業界「次の12年」予測
─ マーケティングの雄、P&Gへのファンドの提言
─ 日本の流通企業の衰退のはじまり
─ ライブコマースの本流と本質
─ CM枠を減らす、米テレビ局の覚悟
─ プライベートDMPからCDPへ
─ GDPR起点の近未来、データは共有資源へ
─ 「ジェネレーションα(アルファ)」の輪郭
─ 西友を売却しD2C企業と手を組む、ウォルマートの意図
─ グローバル広告ホールディングスへの提言
─ オプトインの輪を拡大する、「Amazon Go」の真意
─ 巨大テック企業のM&A動向、エージェンシー・ランキングへの影響は?
─ NIKEとAmazon リアルとオンラインの顧客に対する哲学の差
─ サブスクリプション・ビジネスの新形態
─ 「5G」のデータ戦略 米VerizonとAT&Tが示すヒント
─ アンチ・アマゾン効果の追い風か 世界一に返り咲いたMicrosoft
─ サブスクから生まれる顧客接点の入り口 バーガーキングの次の一手
─ 米国で勢いづくDNVBが示唆する日本のD2C事業へのヒント
─ 「テレビ」という言葉が作る機会損失
─ Facebook「リブラ」が見据える「データの価値の再構築」
─ 巨大コンサル企業のシフトチェンジ エージェンシー業界進出の小休止
─ 情報銀行はGAFAに対抗できるのか 「わたし」のデータの預け先
─ 「リアル店舗」ビジネス衰退の原因はAmazonにあらず
─ 「データの利活用」という言葉を無意識で使うリスク
─ CCPAは対岸の火事ではない 「データを扱う理想の姿」へ向けて
─ 米国の先を行く、移動スーパー「とくし丸」の万能方程式
─ インターネット広告費の「伸び率」が示す未来
─ WalmartのD2C(DNVB)売却の裏側
─ COVID-19の向こう側、次の3年
─ Netflixは勝ち組なのか 未来のコスト上昇と新たな勝機
─ 特需後のテレビ業界 テレビCM買い付け経路のOTTシフト
─ 表面的な「ダークストア」 失敗の本質と勝ち筋
─ 個人情報保護法を超える民意の「CPRA」起案の背景
─ Amazon流、マーケティングの新概念とその技法
─ 「ターゲティング広告」に躊躇し始めた米テレビビジネス
─ Alibabaのフィンテック「Ant Group」が示す中国デジタル通貨が世界をリードする足音
─ 巣ごもり特需の「フードデリバリー」が抱えるジレンマ
─ ゼロパーティ・データの定義再考 DSR視点からデータ活用の負債コストを見極める
─ WalmartとAmazonの示唆 米国のD2C(DNVB)は第三フェーズへ
─ ポストCookieの真意は、ターゲティング広告のGoogle/Facebook依存からの脱却
─ ニューヨーク・タイムズが12倍に成長 オンライン投資先とその姿勢
─ D2C事業の真価は「無形資産」の構築
─ 「Amazonネイティブブランド」が変えるマーケティングと収益の概念
─ NetflixのEC事業「Netflix.shop」、真の狙いは目先の売上にあらず
─ 日経電子版から考える 新聞社は配信事業から「双方向会話型」の新事業体へ
─ 日本での準備が急がれる 米テレビ広告市場のトレンド
─ 良い会社の「免罪符」ではない「Bコーポレーション」が打ち出す、ベネフィットの概念
─ D2Cの「本質」と「裏」を読み解く、3つの視点
─ 「Cookie同意ポップアップ」に見える企業姿勢
─ デリバリー業界の自転車操業は、新しい業態への予兆
─ Microsoftの「新ウォールド・ガーデン」7.6兆円のゲーム企業買収にある思惑
─ 「データ越境移転」の制限 Facebook/Instagram欧州撤退の可能性
─ マーチン・ソレル氏のS4 Capitalが開拓していく、デジタルコンテンツの先行市場
─ 水と油のごとく二分する「重い側/軽い側」のデータの価値
─ Twitterの脱・広告へ イーロン・マスク氏が唱えるビジネス側の理由
─ Nielsen視聴率騒動とNetflix/Disneyの広告枠参入
─ 米国の広告出稿ランキング常連に変化、ダントツ1位の広告主は
─ 「テレビのD2C化」は第二章へDisney+/Netflix参入で広がる、CTV広告の出し先
─ Googleが撤退した分野こそ、ビジネスチャンス
─ マクドナルド/スターバックスを凌ぐファストフードチェーン「Chick-fil-A」のブランド資産
─ 米国D2Cユニコーンは、「反動」を乗り越えて
─ 「変化」ではなく「変数」を捉える。次の5年へ向けて『広告ビジネス2028』
─ データに価値をもたらし、事業を発展させる「保険事業」という機能
─ 米国リテールのパーパス経営 Targetが見せるPB展開
─ OpenAI/ChatGPTをBtoB視点で考える Microsoftの事業戦略
─ eスポーツという名の「新・金融」カテゴリー
─ リセール市場の成長を牽引 RaaSがつくる循環型経済
─ GAFAMと広告エージェンシーの企業価値
─ Criteoに制裁金60億円 個人情報保護法改正(GDPR/CCPA)によるアドテク負債
─ サブスク課金の分岐点探し Amazon Primeの年会費増が示唆すること
─ 「クルマの目」が新たなガーデンを構築する Teslaを揺るがすComma.aiの価値
─ 約10兆円のActivision Blizzard買収が完了 Microsoftの新概念事業の始まり
─ 「広告エージェンシー」という概念の終焉
─ Kura Sushi USAが見せる「寿司市場の日米逆転」
─ 「コンサル vs 広告会社」に一解を与えるアクセンチュアと財務の背景
─ OpenAI が掲げた千兆円超の巨額資金調達、天文学的な構想の最重要基盤とは
─ WalmartがCTVメーカー「VIZIO」を買収 リテールメディアが「家庭のリビング」へ拡張
─ AirbnbとUber、WeWorkの決定的な違い シェアリング事業が秘める社会価値とは
─ 米国テレビ局大手も苦戦中のストリーミングに「YouTube TV」が参入
─ 日本での投資が待たれる、ユニファイドコマースという新業態
─ Oracleが広告事業を撤退、市場の変化を示す重要なシグナル
─ スポーツコンテンツの広告市場がビッグテックと比例し成長中
─ 「DE&I」の潮流に、縮小への方向転換が起こる可能性
─ 過去10年、成長乏しい広告エージェンシー 成長の可能性は「広告」の外にある
─ Amazonが自動車販売へ 「ノンエンデミック」に広がるリテール業界の可能性
─ 「多極化」が日本の追い風に トランプ2.0の見えざる恩恵(本記事)
AIよりもっと大きな変化の波
2025年1月に米国新政権が発足し、即日で数十の大統領令が発令された。1ヵ月経っても勢いは変わらず、毎日新たな変化(視点)が起きている。
AIを筆頭としたテクノロジーによる発展は、もはや当然のもの(デフォルト)となった。たとえば「業務内容」「職務体系」「事業倫理」「情報管理」「働き方」などがAIによってアップデートされても、その変化にすら気付かないかもしれない。
今後見極めるべきは、上記のような生活起点の変化ではなく、むしろ「(日本での)日常生活」から遠い分野で起こる変化の波だ。「世界の通商課題」「国際紛争」「国境管理」「移民問題」「巨大なエネルギー」「人的多様性」「国際組織」「軍需と国防」など多岐の分野で起こる変化が、経済に大きな影響をもたらしていく。
メディアでは「トランプ2.0」の一挙手一投足に対し、「摩擦の激化」「強硬政策」などの言葉を使った、心理的な防御を煽る放送や記事が並んでいる。しかし多面的に見ると、トランプ2.0には未来へのヒントも存在する。本稿では対策や警戒の観点ではなく、その先にある成長の可能性を見ていきたい。
多極化は「分散による自立」を促し、真の多様化を図るもの
2025年を起点に「次の5年」で世界に起こる変化を見ていく際、重要になる視点として筆者は「多極化」を挙げる。
「多極化」とは、単に「二極化(右・左)」や、反対の「一極化」、あるいはその中間を指すのではない。権力や依存が多方面に「分散」して、各主体が「自立」していく流れを指す。
「多極化」に近い概念として、数年前に注目されたブロックチェーン(暗号資産)がある。ブロックチェーンは、政府や中央銀行が管理する「中央集権型」から「分散型」への移行を意図するもの。別の似た概念として、トップダウンで統率される組織から各社員や選手が自律的に行動する組織体系「DAO(分散型自律組織)」への移行なども連想される。
企業体の目線で見ると、多極化が進むことで、過去数年間で見られた下記のような偏りや制限に関して肩の荷が下りると考える。
一極化や二極化に近い概念の例
- LGBTQ人権区分の課題、DEI(多様性・公平性・包括性)
- 地球環境への対応(ゼロ・エミッション目標、SDGs、カーボンクレジット市場など)
- SNSやメディアにおける言論統制(検閲)
- 外出自粛規制・中・ロ・EU・対米貿易摩擦(関税合戦)
- 自然エネルギーへの過多投資(政府補助金も含む)
- 国際組織への依存(WHO、パリ協定、ユネスコ、USAID、米軍の国防支援)
これらは「良かれ」と、この数年推進されてきた取り組みだった。今後は「べき論」に基づく極端な方向性から少し離れより柔軟で多様な視点を取り入れるほうに向かっていく。