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ECインフラ覇権争いに日本郵便、参戦か 「EC-CUBE」とつながり、中小ECサイトを支援

 EC市場活況の裏で、運営者が頭を悩ませる「会員ID」の問題。大規模モールがオープン化でモール出店者以外も囲い込もうとしている中、ネット業界以外から日本郵便の「ゆうびんID」も参入する。そのEC連携パートナーに選んだのは、EC構築オープンソースとして知られる「EC-CUBE」。今回の日本郵便のユニークな取り組みと、今後の可能性を探る。

盛り上がりを見せるオープンID市場に日本郵便が参入

 自社ECサイト運営者の課題の1つに、「会員ID」がある。より高度なWebマーケティングを行うにはユーザーの個人情報は取得しておきたいところ。しかし、クレジットカード含む個人情報は常にセキュリティの脅威にさらされている。一方ユーザー視点から見れば、住所入力やパスワードの管理に手間がかかることから、すでに登録済みの楽天やAmazonでショッピングをしたほうが楽でもある。

 こうした状況を受けてか、2013年10月に米アマゾンは「Login and Pay with Amazon」を、日本では楽天が「楽天あんしん支払いサービスかんたん登録オプション」を開始。Facebook等のソーシャルログインも多くのWebサービスで活用されている。盛り上がりを見せるオープンID市場に、いわゆるネット企業ではない、日本郵便の「ゆうびんID」が参入してきた。

 これまで集荷や再配達、年賀状や切手のオンライン購入に使われていたが、ECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」に組み込まれるという。

 その背景と目的、今後の展望について、日本郵便・坂井秀行氏とEC-CUBEを運営する株式会社ロックオン・金陽信(きむやんしん)氏に対談してもらった。

EC-CUBEに「ゆうびんID」と「ゆうパック印字システム」を組み込む

日本郵便株式会社
事業開発推進本部 課長
坂井秀行氏

(EC-CUBE 金)「2012年の話になりますが、EC-CUBEの郵便プラグインのようなものを作りませんか、と我々から営業しにいったのが、出会いのきっかけです。その際に、オープンソースであり、中小規模の独自ECを多く抱えているEC-CUBEにポテンシャルを感じていただき、今回のような取り組みに発展しました。独自ECの永遠の課題である物流と、集客に関するサービス拡充の可能性が大きく広がる取り組みだと思っていますので、今、とてもワクワクしています」

(日本郵便 坂井)「ゆうびんIDは、年賀状ではさまざまな外部サービスとつながっていますが、ECサービスとの連携ではEC-CUBEがはじめてとなります。当社ではこれまで、大手EC事業者様に注力していましたが、これからは中小の事業者様にもお使いいただきたいと考えています。

 モール事業者様とも常にお話はさせていただいていますが、すでに会員化されていますから。そうではないところで、EC-CUBEとタッグを組ませていただければと考えました。現在、つながる仕組みを構築している段階ですが、ある程度EC-CUBEにあわせた形でつくっていこうと考えています。

 ゆうびんIDとは別に、ゆうパックの送り状の印字が簡単にできるシステムを構想していました。そこで今回、EC-CUBEにはゆうびんIDと一緒にこちらも組み込みたいと考えています。ゆうびんIDをお持ちのユーザー様は入力の手間が省ける、EC事業者様はゆうパックを気軽に利用できる、また、ゆうびんポータルからECサイトに送客もできる、そしてEC-CUBEには、利用者を増やすための便利なツールの1つとなり、三者にメリットがあります」

(金)「独自ECサイトにとって、物流や集客は常に課題です。今回の取り組みは、EC事業者様にとってもメリットがあると感じています」

(坂井)「ゆうびんIDと送り状システムは、第一弾です。送り状、つまり発送に関するサービスはこれからいろいろと作っていこうと考えています。また、ゆうびんポータルは誰でも登録できて誰でも使えるサービスですが、認証が入るようなクローズドなサービスも開発する可能性もあるでしょう。現在、社内でもさまざまなプロジェクトが立ち上がっています」

ゆうびんポータル
https://portal.post.japanpost.jp/aew/page/menu.do
郵便物の料金や、荷物の追跡、再配達の申し込みなどのサービス、
年賀や暑中見舞などのキャンペーン情報を案内している。

ネット、リアル、インフラが連携しないといい商売ができない

株式会社ロックオン
EC-CUBEユニット ユニット長
金陽信(きむやんしん)氏

(金)「日本のEC市場は拡大が続いており、海外と比較してもまだまだ伸びしろがあります。これをさらに加速させるためには、日本郵便さんのような、リアルに強い大手事業者の参入は欠かせない。特に物流というインフラは、ネットとリアルをつなぐための要です」

(坂井)「ネット、リアル、そしてインフラ、この3つが連携しないと、あまりいい商売はできないと思っています。当社でも、もともとは郵便局がやっていた『ふるさと小包』をもとにECサイトを運営してますし、年賀状ならネットで葉書や切手を販売して、リアルに投函していただいて、我々がインフラで配達するというのをやっています。この3つをぐるぐると回していくと、そこにデータも生まれてきますし」

(金)「リアルも強いですが、データの質も素晴らしいですよね。ECではカタログ通販も行っている事業者さんがありますが、住所が変わって届かないといったトラブルも少なくないんです。でも、引っ越ししたら必ず、郵便局に転居届を出しますからね」

(坂井)「公開はしていませんが、住所データの質と量には自信があります」

(金)「全国の家庭につながるインフラは非常に魅力的です。ゆうびんIDをお持ちの方がすでにECを利用しているとは限らない。新たな層がECを利用してくれるのではと、期待が高まります」

中小のECサイトが活躍できる場を作りたい

(金)「EC-CUBEは技術者や制作会社さんを多数囲い込んでいますから、IDを組込む際の技術サポートができるのも強みですね。技術者がゆうびんIDを使って新たなサービスを開発したり、そういったこともできるかもしれない」

日本郵便・坂井氏とEC-CUBE・金氏

(坂井)「そうですね。これから一緒にビジネスを進めていくにつれ、そういった可能性もあるでしょう。まずは、ゆうびんIDと送り状印字システム導入の実績を作っておきたいですね。そして2015年度内には、発送に関わるサービスをトータルで提供したいと思っています」

(金)「2006年にEC-CUBEを始めたコンセプトは、『ECに色を』ということでした。限られた大手のECサイトだけではなくて、中小のECサイトが自分たちの色を出して活躍できる場を作っていきたい。大きなインフラとユニークな顧客層をお持ちの日本郵便さんとタッグを組むことで、それが加速していくのではないかと、非常に楽しみにしています」(了)

本件に関するお問い合わせは、EC-CUBEの「お問い合わせフォーム」からお願いします。また、ゆうびんIDとEC-CUBEの連携について、導入を支援できるパートナー様を募集しています。詳しくはこちらをご参照ください。 

 

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この記事の著者

倭田 須美恵(ワダ スミエ)

2013年11月11日、ECzine立ち上げ。ならではの視点でECに関する情報をお届けしたいと思います。

●外部メディアに登場!
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[動画]ECみらい会議vol.2「プラットフォーム乱立時代!EC事業者の選択と集中を考えよう」
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[執筆]NP通信

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MarkeZine(マーケジン)
2017/12/11 18:17 https://markezine.jp/article/detail/19472