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「一番高く売れるのはどこか」を貪欲に追求する、CCIの広告在庫資産運用サービス「IPM」の挑戦

「自社・他社問わず、可能性のあるプラットフォームはなんでも使う」。CCIが立ち上げた、中立的な立場で広告在庫を運用する新サービス「IPM」は、意識改革を伴う大きなチャレンジでもある。2人の中心人物に、媒体をめぐる状況、その運用モデルについて聞いた。

中立的な立場で媒体社の広告在庫資産を運用する「IPM」

― 今日は、CCIが10月6日に発表した広告在庫資産運用サービス「Inventory Portfolio Management(IPM)」についてうかがいたいと思います。日本では、アドテクノロジーの導入に関して、媒体社側がやや出遅れている印象があるのですが、国内の状況をどのように見ていますか。

安藤 RTBなどのアドテクノロジーの新しい動きは、日本ではどちらかというと、広告枠を買うデマンドサイドから流れが来たというのは実態としてあると思います。我々はメディアレップとして、主に「予約型広告」と呼ばれる純広告の領域で、媒体社の広告枠を取り扱うというのがそもそもの成り立ちです。しかし、次第にマーケットがRTB化されていき、運用型広告の領域が増えていくなかで、クライアントのパフォーマンスを追求していくことが、結果的に媒体社の収益を下げていくことにもなりかねないという懸念はずっと持っていました。

とはいえ、広告予算も純広告から運用型広告のほうにシフトしている流れがあり、何とか我々が運用型広告領域においても媒体社向けにマネタイズのお手伝いができないものかということで、今回のIPMの構想が生まれました。

株式会社サイバー・コミュニケーションズメディア・ディビジョン、ディビジョン・マネージャー安藤茂宏氏

株式会社サイバー・コミュニケーションズ
メディア・ディビジョン ディビジョン・マネージャー 安藤茂宏氏

「Inventory Portfolio Management(IPM)」は、CCIがこれまで行ってきた純広告の販売、自社で運営しているADJUST、OpenXなどのプラットフォームだけではなく、他社プラットフォーム(アドネットワーク、アドエクスチェンジ、SSPなど)にも中立的な立場で媒体社の持つ広告在庫資産を最適に分配し、広告収益の最大化を目指すサービスです。また、収益最大化のひとつの手段として、プライベート・マーケットプレイス(PMP)領域での広告会社と媒体社の仲介も行ないます。

― 米国では、プレミアムな広告についてもシステムを使って効率的に運用したいということで、「プライベート・マーケットプレイス」が出てきました。こうした取り組みを日本でも実践していくのでしょうか。

小山 米国とまったく同じ状況になるかはまだわかりませんが、米国ではRTB市場においてもブランディング広告が増えているんですね。日本はまだRTB市場の中にブランディング広告がほとんどない状況で、それが単価の下落につながることもあると思います。

― IPMのメリットというのはどういったところにあるのでしょうか。

小山 IPMのメリットは以下の2点に集約できます。これがそのまま媒体社の課題にも直結しています。

手が回らないため、純広告販売以外はひとつのプラットフォームしか運用していないという媒体社には、我々がいろいろなプラットフォームを使って運用することで販売機会が増やせる。販売機会が増えれば、収益の安定化や単価の向上につながります。また、タイアップや企画ものなど、純広告の販売をしながら運用型広告も兼務している場合には、オペレーション負荷の軽減にもなります。

安藤 もともと広告というのは、媒体社が独自に優れたコンテンツを作って、そこに広告を入れることに価値を感じるクライアントが広告枠を買っていました。それがいま、運用型広告の台頭によってどういう状況になっているか。オーディエンスとサイトがマッチしていれば高い単価で売買されますが、それは媒体価値としてマネタイズされているのではなく、オーディエンスの価値、もしくはパフォーマンスが高いであろうというところの価値でしか売買されなくなりつつあるのです。

ただ、プライベート・マーケットプレイスは、媒体を指定して買うことができます。まず媒体価値があり、オーディエンス価値があって、パフォーマンスがついてくる。そうした媒体の広告枠の運用戦略を、我々がお手伝いできる領域と考えたのです。

― いつの間にか自分たちの媒体価値ではなく、オーディエンスのデータのほうが重要なのかと気づいたときには愕然とすると思うのですが、媒体社の危機感というのは高まっているのでしょうか。

安藤 運用型市場が拡大するなかでそういった焦りもあり、これまで純広告を中心に売ってきた媒体社は、純広告で売れなかった在庫をどこかのアドネットワークやSSPに全部渡してしまう、というのがいまの実態ではないかと思います。いろんなプラットフォーマーやアドネットワークとの交渉や契約、タグの設定……といった作業はやはりかなりの手間がかかる。そこまで手が回らないという媒体社が多いですね。

― 日本の媒体社でもアドテクに精通した人材が必要になると思うのですが、人材や体制面でも課題は多そうですね。

安藤 アドテクに強い人材、それも媒体社側のトレーディングデスク的な機能をになえる人材獲得は、日本のマーケットの中ではかなり大変だと思います。媒体社が自らSSPを使ってマネタイズしていくという方法もあるかと思いますが、どこかひとつのSSPに全在庫を預けるかたちで取引しているところはまだ少ないのではないかと思います。ひとつのSSPだけに在庫をすべて入れるとマネタイズのチャンスが狭まることもありうるので。

「自社か他社か」ではなく「一番高く売れるところはどこか」

― IPMは、Inventory Portfolio Managementということで、CCI独自の自社プラットフォームだけでなく、他社のプラットフォームも運用することになりますね。

小山 IPMでは本当に中立的な立場で、可能性のあるプラットフォームはすべて使うというスタンスです。国内外問わず。

株式会社サイバー・コミュニケーションズメディア・ディビジョン、メディアビジネスエキスパート小山卓利氏

株式会社サイバー・コミュニケーションズ
メディア・ディビジョン メディアビジネスエキスパート 小山卓利氏

安藤 我々はいま、経営ビジョンとして「メディアグロースパートナー」を掲げています。ニュートラルな立ち位置で、本当にその時期に一番高く売れる、もしくは多く売れるプラットフォームがどこなのかという目利きをしてコントロールしていく。そうなると、当然自社プラットフォームと他社プラットフォームで競合してくるわけです。社内のそれぞれの担当者は、他社のプラットフォーマーに勝つ運用をやっていかなければいけない。そこはフェアに戦って、小山のチームで差配、見比べて、本当に高いところを採用していくというやり方です。

― それは非常にプレッシャーのかかる立場ですね。社内からもう少し手心を加えてほしい、みたいな声が聞こえてきそうですが……。

安藤 それをやってしまうと、いままでと変わらなくなってしまう。媒体社の視点に立つ哲学みたいなものがないと、このサービスの媒体社への導入は絶対進まないと思ってるんですよ。

小山 CCIの自社プラットフォーム担当者に対しては、なぜ在庫を減らすかをちゃんと明確に話したうえで、どうしたら売上を上げられるかを考えてもらう。フィードバックもするので、IPMでやる相乗効果は絶対出てくると思うんです。

― 取り扱うプラットフォーマーは、プレスリリースでは発表されていませんでしたが。

安藤 現段階では、他社のプラットフォームということでひとくくりにしていますが、実態としては、大手のアドネットワークやプラットフォーマーが多数入っています。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2014/11/17 10:00 https://markezine.jp/article/detail/21285

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