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アシックスが挑むDX ランニングエコシステムを起点に、プロダクトとサービスの両軸で提供価値の向上へ

 創業70年以上の歴史を持つアシックス。近年は経営の中心にデジタルを据え、全社を挙げてDXに取り組んでいる。改革をリードするCDO/CIOの富永満之氏が「SAP CX DAY 2021」に登壇し、デジタル化の歩みを語った。本稿ではセッションの詳細と、個別取材の内容を紹介する。

アシックスが挑んだ経営のDX

 創業70年以上の歴史を持つアシックスは、2018年から全社を挙げてデジタル化に取り組んでいる。その舵取り役を担うのが、同社のCDO/CIOを務める富永満之氏だ。

アシックス 常務執行役員 富永満之氏
アシックス 常務執行役員 富永満之氏

 富永氏は日米のIT企業でキャリアを積んだのち、2018年にCIOとしてアシックスへ入社。2019年からCDOを兼任し、現在はボストンにある同社のデジタル拠点・ASICS DigitalのCEOも務めている。

 アシックスが展開するビジネスドメインは、競技者向けのシューズやアパレルを開発する「アスレチックスポーツ」、一般コンシューマー向けのカジュアルラインを扱う「スポーツライフスタイル」、スポーツ施設などを運営する「健康快適」の3つ。カバー領域は多岐に亘る。

 同社は「中期経営計画2023」において「デジタルを軸にした経営への転換」を目標に設定。また2020年に発表した「VISION2030」では、売上の90%を支えるプロダクトだけでなく、ファシリティやコミュニティ、そして多くのデータを活用しながら選手のパフォーマンス向上をサポートする考えを示した。

 では、ここ数年で同社のビジネスはどう推移しているのだろうか。富永氏は「2015年以降、チャネルシフトが大きく進んでいる」と語る。それまでは全体の9割近くを卸経由の売上が占め、長らく5%を下回っていたECサイトの売上比率が2020年には15.7%にまで伸長。リテールの売上を合わせると、全体の3割を占めるまでになったという。

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ランニングエコシステムを構築しマーケティングをデジタル化

 チャネルシフトの動きを加速させているのがデジタル戦略だ。同社のデジタル戦略は3つの柱で成り立っている。

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 1つ目の「デジタルビジネス」では、最も注力しているランナー向けのビジネスをデジタル化。デバイスを活用した走行距離・スピードの測定機能や、レースのレジストレーションプラットフォームなどを提供している。

 2つ目の柱が「デジタルマーケティング」だ。同社の会員プログラム「OneASICS」を活用し、パーソナライゼーションを促進してマーケティングの投資対効果向上を狙うという。

 3つ目の「デジタルサプライチェーン」においては、SAPのアパレルフットウェアソリューション「SAP Fashion Management System(FMS)」を活用。グローバルでビジネスを展開するアシックスでは、ホールセール・Eコマース・リテールを統合するシステムによって、オペレーションの効率化とコストの削減を目指している。

 デジタルビジネスとデジタルマーケティングの第一歩として、同社ではランナーとの接点に沿ったカスタマージャーニーを作成。どのような顧客がトレーニングからレース出場、リカバリーを経て再びレースにチャレンジするのかを把握し、最適なタイミングでランナーに必要なサービスやプロダクトを紹介していくという流れだ。

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 これら一連のコミュニケーションを実現するために、同社は「ランニングエコシステム」を確立した。ランニングエコシステムを構成するのはOneASICSと、同社が買収した2つのランナー向けサービス。2016年に買収した「ASICS Runkeeper(以下、Runkeeper)」はサブスクリプションモデルのアプリで、月間360万人のアクティブユーザーがスマートデバイスを通じ走行距離を測定・記録している。同じく買収した「Race Roster」は180万人のユーザーを抱え、4,000ものマラソン大会に参加登録が行えるデジタルプラットフォームだ。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/01/13 08:00 https://markezine.jp/article/detail/37940

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