BPTSで実現する、性格特性に応じたアプローチ
MZ:BPTSで、生活者の関心や動機をより解像度高く捉えられることがわかりました。では、企業はBPTSをどのように活用でき、どういったアプローチが可能となるのでしょうか。
田村:BPTSは、従来の属性や行動データを活用する既存の手法に加えることで「なぜその顧客が行動したのか」という背景への理解を深め、ターゲットや訴求内容に関する仮説の精度を高めて施策の最適化につなげることができます。
アプローチとしては、まず、クライアントが保有する広告データやCV・会員情報などのファーストパーティデータを、データクリーンルーム環境下で10万人調査の心理特性データと掛け合わせ、「CVとどのTraitが関係しているか」を分析できます。
自社データを持たないクライアントも、プラットフォーム事業者が保有する検索・サイト来訪データを起点に分析が可能です。これにより、「優良顧客に共通するTrait」や、「どのメッセージがどのようなTraitに響きそうか」といった仮説を導き、配信設計や訴求軸の検討に落とし込むことができます。
針原:たとえば、CVした顧客群を分析した結果、「勇気特性」が高く「外向性」が低い層でCV効率が高いとわかれば、そのようなTraitを持つ既存会員を抽出し、広告配信の対象にできます。さらに、同じ商品・サービスでも、Traitに合わせて訴求内容を変えることが重要です。「承認特性」が高い層にはプレミアム感のある特別優待を、「獲得特性」が高いメリット重視層にはお得なポイント還元を提示する、といったクリエイティブ設計が考えられます。
このように、BPTSを活用することで、従来の属性データや行動データだけでは捉えにくかったTraitの違いを、配信設計やクリエイティブの出し分けに取り入れることができます。
田村:また、LINEヤフーの検索・興味関心データなどを説明変数とした機械学習モデルを構築することで、調査対象の10万人にとどまらず、LINEヤフーの全ユーザーにTraitの特性値を付与することが可能です。つまり、検索履歴や行動データをもとに、調査未回答者に対してもTraitを予測できるのです。この仕組みにより、自社データをまだ十分に蓄積できていないクライアントにも幅広く活用いただけるソリューションとなっています。
検証フローの精度を高め「PSDCA」実現のカギに
MZ:最後に、今後BPTSをどう展開していくのかお聞かせください。
針原:私たちが目指すのは、従来の「どんな人か」を捉える属性の視点や、「何をしたか」を捉える行動の視点に加えて、「なぜその行動をとるのか」に迫るTraitの視点を組み合わせ、顧客の価値観に寄り添ったコミュニケーションを実現することです。それによって、顧客とのより良い関係を築きながら、マーケティング施策の効果を高めていきたいと考えています。BPTSを現場の仮説設計や意思決定に適切に活用いただけるよう、活用の幅をさらに広げていきたいです。
田村:今後取り組んでいきたいこととして、2点考えています。1点目は、プラットフォームの拡張です。現在LINEヤフーで実現しているTraitの特性値付与を、各プラットフォームのユーザーにも実現していきたいですね。媒体を横断してBPTSを使えるようになれば、クライアントはTraitという軸で、複数の広告戦略を一貫した視点で描けるようになると考えています。
2点目は、経年変化の分析です。機械学習モデルは基本的に、任意の時点における特性値を算出するものです。そこで、たとえばある人物の2年前と現在の8尺度の特性値を比較し、Traitがどのように変化しているかを分析することも可能です。データを時系列で保持していくことができれば、Traitの変化の有無を含めた分析ができるようになり、顧客をより深く理解することにつながると考えています。
大下:現時点では、BPTSは広告分析や配信での活用が中心ですが、今後は活用領域を企画フェーズにも広げていきたいと考えています。具体的には、新商品開発におけるターゲット設計やペルソナ構築、訴求コンセプトの立案などにTraitの視点を取り入れ、施策実行前の仮説作りから活用できるようにしていきます。
こうした企画フェーズへの展開と親和性が高いのが、電通グループが新たなマーケティングフレームワークとして提唱する「PSDCAモデル」です。これは、従来のPDCAサイクルに「S(シミュレーション)」を加え、AIを使って施策実行前に生活者や市場の反応を検証する考え方です。BPTSが提供するTraitの視点を活かし、このシミュレーションの精度を高めていきたいと考えています。
MZ:業界や企業規模問わず、様々な場面での活用が期待できそうですね。本日はありがとうございました。
「BPTS」簡易診断ワークシートの診断方法
8つの性格特性ごとに3問ずつ、直感でA・B・Cを選ぶだけ。各尺度でAが多ければ低い特性(Low)、Bが多ければ高い特性(High)の傾向を示します。
試してみると、尺度ごとに結果はバラバラになるはず。それこそが、人を1つのタイプに収めず特性ごとに解釈する、BPTSの考え方です。
※簡易版のため、特性論のイメージをご理解いただく目的で分かりやすく簡単な構成にしており、実際のBPTSとは設問・算出方法が異なります。
株式会社電通:大下 酬人、針原 千尋、田村 勇人、築地 佑弥、新川 祥史、福田 真大、甘利 早、浦口 果歩、田中 悠祐、野田 凌佑
株式会社電通デジタル:佐藤 雄飛、坂戸 美輝
株式会社電通クリエイティブピクチャーズ:駒本 幾子、藤井 佳代子、佐々木 千穂、夏井 一紗、高橋 伸也
株式会社電通マクロミルインサイト:今泉 直史、阿部 駿、及川 澄香、松本 早弥香

