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MarkeZine Day 2026 Autumn

BEST OF MARKETING AWARD 2027

「社会的課題の解決」と「市場開拓」は表裏一体。渋谷未来デザイン長田氏に聞く、変革を起こすための視点

 MarkeZineでは、第2回となるマーケティングアワード「BEST OF MARKETING AWARD 2027」を開催します。本記事では、アワード審査員の一人である渋谷未来デザインの理事・事務局長を務める長田新子氏にインタビューを実施。「ソーシャルインパクト部門」で募集している「社会課題の解決」をテーマに話をうかがいます。ビジネスにおける利益創出が求められる中で、自社の社会的な価値・意義の創造に、マーケターはどう向き合うべきなのでしょうか。

誰もが作り手になれる、共創時代へ

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日は「BEST OF MARKETING AWARD 2027」の審査員を務める長田さんに、部門の1つ「ソーシャルインパクト」をテーマにお話をうかがいます。まずは直近の生活者や企業の意識変化について教えてください。「SDGs疲れ」といった言葉もささやかれる中、コロナ禍を経て、生活者の目線はどう変わっているのでしょうか。

長田:渋谷という街にいると、2つの異なる視点が見えてきます。1つは渋谷に住む住民の目線、もう1つは渋谷を訪れる来街者の目線です。来街者にも、遊びや買い物、インバウンドの観光客、学生、そしてビジネスパーソンなど、様々な立場があります。渋谷は、そういった人々が混ざり合うユニークな土地です。

 多様な人が交錯する街だからこそ、課題も浮き彫りになります。ゴミ問題や路上喫煙、路上飲酒、安全・安心の確保といった街の課題に加え、現在は「100年に一度」といわれる再開発によって街の風景自体も大きく様変わりしています。こうした中で、生活者の目線にも明確な変化が生まれています。具体的には、単に消費するだけでなく、街に来ることの心地よさや楽しさを求める傾向を感じます。

 同時に、企業側の目線も大きく変化しています。以前のように「この街で商品を売りたい」「Z世代向けに何かしたい」といった一方通行なアプローチではなく、「地域や街と一緒にどう社会課題を解決できるか」という目線を持つ企業が、ここ数年で急激に増えました。自社だけで閉じるのではなく、地域住民、行政、教育機関、若者などを巻き込み、ともに価値を創り出していく。持続可能な共創のサイクルを作る動きが加速しています。

 生活者側も、ただ与えられたものを受け取る「受け手」から、自ら参加して提案する「作り手」へとシフトしています。SNSでの発信で課題解決に参加したり、ボランティアでゴミ拾いをしたりと、誰もがアクションの作り手になれる時代です。一方的に与えられる情報や商品に接触するだけでは、既に満足できない状況が生まれているのだと思います。

一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長 長田 新子氏
一般社団法人渋谷未来デザイン 理事・事務局長 長田 新子氏

MZ:その背景には、何があるのでしょうか。

長田:大量生産・大量消費という従来のビジネスモデル自体が限界を迎えているのだと思います。様々なプラットフォームの普及を背景に、誰もが個人で情報発信やアクションを起こせるようになり、個人の行動が社会を変えるきっかけとなり得る時代になりました。

 昔は企業しか「作り手」になれませんでしたが、今は誰もがちょっとしたアクションで社会的な活動に参加できる。この流れに企業や行政が乗っていかなければ、これからの時代は淘汰されてしまうのではないかと感じます。

「社会的意義」と「ビジネス成長」の両立は可能か

MZ:マーケターにとっても、「社会価値の創造」と「売上・市場開拓」の両立は非常に大きなテーマです。事業会社のマーケターを経験されてきた長田さんは、企業のビジネス視点と共創の視点の双方をお持ちですが、社会的意義を果たすことが企業成長にどうつながるのでしょうか。

長田:例として、アサヒビール社・スマドリ社とともに推進している「渋谷スマートドリンキングプロジェクト」を紹介します。生活スタイルが変化し、飲み会文化のあり方も変わってきました。「お酒を飲める人も飲めない人も共に楽しめる」という分断をつなぐ考え方は、本質的にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)と同じ視点です。

 渋谷の街でも、過度な飲酒による急性アルコール中毒や路上でのトラブルなど、ネガティブなカルチャーが課題になりました。その一方で、「お酒を飲めない人」は飲み会の場に行きづらかったり、注文時に気を遣ったりという状況もあります。だからこそ、適正飲酒を啓発しながら、飲める人も飲めない人も互いを尊重し、自分らしい飲み方を選べる環境作りが重要だと考えています。

 実は、日本人の約4割はお酒を飲めない体質といわれています。しかし、ほぼ半数の人が飲まない市場に対して、従来のビールメーカーは十分なアプローチができていませんでした。そこで新市場を作るために、「お酒を飲める人と飲めない人が一緒にいられる環境を作り、コミュニケーション本来の楽しさに立ち返ろう」というプロジェクトを立ち上げたのです。

 既存の顧客層だけに依存していては、市場は縮小していきます。光が当たっていなかった領域に目を向け、社会的な価値と共に新しい市場を切り開くことこそ、企業成長に不可欠な視点です。

 もう1つの例が、ネスレ日本社と最近立ち上げた「SHIBUYA Refresh TO GO」です。若い世代のコーヒー離れや使い捨て容器の課題、また忙しい都市生活の中でリフレッシュすることの大切さに対し、単に商品を売るのではなく、「マイボトルに水を入れてスティックコーヒーを持ち歩き、自分のタイミングでリフレッシュする」というサステナブルなライフスタイルの定着を目指しています。ウォーターサーバーのようなリフレッシュスポットを街の中に整備し、若い人が環境に配慮しながら新しい楽しみ方を見つけられる環境も整えています。

 新市場というのは、自社単体では作れません。私がいたレッドブルでも、アスリートや学生、店舗など様々なステークホルダーを巻き込んで市場を形成してきました。自分たちが見ていなかった領域へ視野を広げ、社会的課題の解決と新しい体験の提供を一体化させる。これによって初めて、売上とユーザーがついてくる仕組みが生まれるのです。

 重要なのは期間の捉え方です。こうした取り組みを半年や1年で判断していては、単発のキャンペーンで終わってしまいます。アサヒビール社もネスレ日本社も、3〜5年という長期的かつ経営的な目線でコミットされています。試行錯誤を繰り返しながら市場を育てる姿勢が欠かせません。

MZ:企業の社会的課題の解決と新たな市場の開拓は表裏一体なのですね。「コストがかかる」と二の足を踏む企業にとっても、非常に示唆に富むお話です。

長田:企業は既存の広告費の一部を、こうした長期的な共創活動に投資するべきだと考えています。この投資は、数年後に大きな差となって表れてくるはずです。

挑戦を恐れない、すべてのマーケターへ。

MarkeZineでは、現在マーケティングアワード「BEST OF MARKETING AWARD 2027」への応募を受け付けています。
書類応募のみで参加可能、締め切りは2026年11月9日まで。皆さんの日々の取り組みや挑戦、先進事例などをぜひご応募ください!

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/08/25 08:00 https://markezine.jp/article/detail/77075

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