ステップ(2)成長機会としてのミッションを設計する
では、成長機会の創出はどのように行えばよいのでしょうか。
それは、組織が担うKPIを達成するための課題を捉えることから始まります。事業に課題があるということは、裏を返せば、誰かが成長する余地があるということでもあります。私は、課題を単なる「解決すべき問題」として捉えるのではなく、「課題解決を通じて人が成長するための機会」として捉えることが重要だと考えています。
だからこそ、マネージャーはその課題を、誰に成長機会として渡すのかまで考える必要があります。事業の課題をメンバーの成長機会として渡し、その成果をメンバーの評価に変え、成長と報酬につなげていくのです。
課題を捉えるときには、1年後、3年後、10年後というように、短期と中長期の両方で考えなければなりません。短期の課題は比較的わかりやすいものです。既に売上が落ちている、顧客数が伸びない、業務が滞っているといった問題が目の前に現れているからです。難しいのは、中長期の課題です。中長期の課題は、まだ目に見える問題として発生していないことが多いため、将来の環境変化を想定し、今後発生し得る課題を炙り出す必要があります。
たとえば、私の実家の会社では、小中学校向けの教育事業を営んでいます。足元の業績はありがたいことに好調ですが、マーケット構造を見れば、少子化によって市場が縮小していくことは避けられません。
つまり、短期的には大きな課題がないように見えても、中長期的には課題しかないのです。今は発生していなくても、将来のマーケット構造の変化によって必ず発生する課題があります。その課題をより早く捉え、そのために今から着手すべきことを提起する。これがマネジメントの仕事です。
では、中長期の課題をどのように捉えればよいのでしょうか。ここでは、これまで本連載でお伝えしてきたマーケティング戦略の考え方である「5ステップ」が型として使えるはずです(関連記事)。
改めて要点をお伝えすると、まず現状分析によってマーケットの構造とルールを把握します。次に、3〜5年後にこの構造とルールがどのように変化するのかを想定し、課題の初期仮説を立てます。その初期仮説の検証を繰り返し、将来的に課題化することを捉え、必要な対策を提起していくという手順です。このフローを改めて確認したい方は、過去の連載を読み返していただけると、より理解しやすいと思います。
このように、マネジメントを担う人は、メンバーよりも長い時間軸でマーケットの変化や組織の課題にアンテナを張り続ける必要があります。機会創出と成長促進をセットで行う役割を担うからこそ、日々の実務はメンバーにお任せしなければならないのです。それによって初めて、組織として役割分担が成立するのだと私は考えています。
個のキャリアから誰に任せるべきかを見立てる
ここまで機会創出の話をしてきました。では、その機会をメンバーにどのようにお渡しすればよいのでしょうか。実は、ここがマネジメントの腕の見せ所です。
なぜなら、課題という機会を仕事としてお渡しする際には、組織としての成果と人財育成を両立させる必要があるからです。これが、人を通じて成果を出さなければならないマネジメントの本丸です。
結論から言うと、「誰に任せれば、その機会を事業成果に変えられるのか」を見立てることが重要です。
その人の強みと機会が合っていなければ、本人にとって経験にはなるかもしれませんが、事業成果にはつながらない可能性が高くなります。それでは、マネジメントにとって最も重要な役割であるKPI達成を果たせません。
したがって、マネジメントはメンバーの強みを把握し、そのメンバーにどのような機会があれば成長できるのかを考え、事業の課題とひもづけて機会を創る必要があります。
私自身の事例をお話しすると、着任したメンバーには必ずヒアリングを行い、過去のキャリア年表を一緒に作っていました。そして、その年表から、仕事を通じて身につけてきたことや強みを言語化するようにしていました。
このキャリア年表を作る目的は、単にその人の経歴を知ることではありません。「その人は、どのような仕事をしているときに最も力を発揮してきたのか」を見つけることです。
多くの場合、本人は自分の強みを明確に言語化できていません。本人にとっては自然にできることなので、それが強みだと認識していないからです。だからこそ、過去の経験を一緒に振り返りながら、マネジメントがその人の強みを言語化する支援をすることが重要なのです。
その上で、その人のキャリアプランをともに考え、それを目指すための機会を事業課題とひもづけて設計し、仕事としてお渡ししていました。
これは、個のキャリアから考えるという発想です。私は、個の強みを活かすことが事業成果を最大化すると考え、人財マネジメントの方針としていました。人は、自分の強みが活かされている状態でこそ、モチベーション高く、より高いパフォーマンスを発揮できるからです。
とはいえ、「本人の強みや希望と、事業の課題がうまくひもづかない場合はどうするのか」という疑問もあると思います。
