ステップ(3)2つのチャレンジを設計する
では、成長機会としてのミッションは、具体的にどのように設計すべきなのでしょうか。結論から言うと、私はミッションを大きく2つに分けて設計していました。
1つは、「強みを活かし、事業成果につなげるためのミッション」。もう1つは、「強みの発揮を阻害する課題を、必要十分な水準まで克服するためのミッション」です。
ただし、この2つを同じ比重で扱うわけではありません。あくまで主役は、強みを活かすミッションです。課題克服のミッションは、強みをより大きな成果につなげるために必要な範囲で設定します。
「強みにばかりフォーカスして、その人の課題は放っておいてよいのか」という疑問も生まれると思います。もちろん、放っておいてよいわけではありません。ただし、何を「課題」として捉えるのかについては、前提をすり合わせる必要があります。
その人の課題とは、何でしょうか。たとえば、数学が得意な人が古文を苦手としている場合、それを必ず課題として捉えるべきでしょうか。
学生時代のように、全科目の合計点を上げることが求められるのであれば、まんべんなく点数を取ることも必要です。しかし、ビジネスにおいては100点が上限ではありません。強みによって獲得できる成果に、上限はないのです。したがって、数学が得意な人には、数学で突き抜けてもらえばよい。古文が苦手であっても、それが仕事上の成果を阻害しないのであれば、無理に克服する必要はありません。
ただし、数学が得意な人が、掛け算は得意でも割り算が苦手で、その弱みが数学という強みを活かす際の障害になっているのであれば、放っておいてはいけません。なぜなら、その課題が強みの発揮を阻害しているからです。マーケティングの仕事に置き換えるなら、広告運用が強みの人に、営業企画まで平均的にできるよう求めることが、本当にその人の成長につながるのかは立ち止まって考える必要があります。
一方で、広告運用は得意であるものの、データ分析が苦手なために成果が頭打ちになっているのであれば、その分析力は強みをさらに伸ばすために克服すべき課題になります。
つまり、マネジメントにおいては、「強みを阻害するもの」を課題として捉えることが重要です。強みと関係のない課題を挙げれば、きりがありません。平均的にすべてをできる人を育てても、その人が今後のキャリアで優位性を築きにくくなってしまう可能性があります。
そして組織の観点でも、全員を平均化するより、それぞれの強みを持ち寄り、組織としてアウトプットを最大化するほうが成果は高まります。それを実現するのがマネジメントの仕事です。
したがって、「強みを活かして事業成果につなげるミッション」と、「強みの発揮を阻害する課題を必要十分な水準まで克服するミッション」に分けて、成長機会を設計することが重要です。
そのように設計することで、本人は強みを活かした仕事の仕方を軸に成長しながら、より大きな成果を出すために必要な課題にも向き合えるのではないでしょうか。
まとめ:課題から個の強みに見合う成長機会を創る
マネジメントの本質は、「機会創出」と「成長促進」です。事業課題を成長の機会として設計し、個の強みと結び付けることで、人は最も成長し、組織成果も最大化されます。強みにフォーカスして機会を創ること。それが、私が考えるマーケティング・マネジメントの出発点です。
次回は、個の強みを活かした自律自走型の組織マネジメントモデルの(4)「1on1によるフィードバック」と(5)「チャレンジからの学び抽出」について説明していきます。
