「暑いほど売れる」が崩れた市場──清涼飲料に見る複合的要因
4つの市場を横断して見たとき、最も印象的だったのは、猛暑にもかかわらず一部の市場では販売が伸び悩んだことだ。
清涼飲料市場では、6月には週次で前年の1.2倍まで急伸した一方、7〜9月にかけては主要品目の勢いが続かなかった(図5)。また、ミネラルウォーター、液体茶、スポーツドリンクの3品目を見ると、いずれも6月は前年を上回ったものの、夏本番には前年割れとなった(図6)。
出典:インテージ SRI+(全国小売店パネル調査)
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背景には複数の要因があり、一つは、継続的な値上げによる買い控えである。清涼飲料全体で容量単価の上昇が続き、2025年(1~12月計)は前年比104%となっている。
もう一つの要因は、熱中症警戒アラートの増加による外出・運動機会の減少だ。特にスポーツドリンクでは、子どもがいる世帯を中心に購入容量が減少している。さらに、マイボトル(水筒)を持ち歩く行動が広がっており、ペットボトル飲料を買う機会そのものが減っている影響も大きい。
ここで重要なのは、「猛暑なのに売れない」という現象を単なる“例外”として片づけないことである。むしろこの現象は、生活者が暑さだけでなく、家計、外出制約、代替手段まで含めて行動を選択していることの表れではないだろうか。
言い換えれば、猛暑は「需要を自動的に押し上げる単純な要因」ではなく、「生活者の優先順位を変える環境要因」であるということだ。だからこそ、生活者への提案において「暑いから必要」という訴求だけでは、十分に届きにくくなっている。特定の品目だけでなく、他の代替手段までを見据えた上で、「なぜこの商品を選ぶべきなのか」という固有の価値を示し続けることが求められている。
【まとめ】猛暑時代の夏商戦で押さえるべき「3つの視点」
これまで見てきたポイントをまとめると、今後の夏商戦に向けて押さえておきたい視点は大きく3つある。
第一に、「いつ売るか」。需要の立ち上がりは確実に前倒ししており、夏本番(7月)前から顧客との接点を設計する必要がある。
第二に、「誰に広げるか」。市場を拡大していくには既存ユーザーのリピート購買だけでなく、これまで非購入だった層の参入を促すアプローチが肝になろう。
第三に、「どのような価値で選ばれるか」。生活者が求めているのは「冷感」だけではなく、時短、快適、安心、節約意識まで含めた「複合的な価値の束」である。
重要なことは、猛暑の年ほど売れる商品を探すのではなく、「猛暑の年に生活者がどう暮らし方を変えているのか」という行動の本質を捉えることである。その視点から商品、売場、販促、コミュニケーションを見直すことがより重要になっていく。
これからの差は、暑さへの単なる「反応速度」だけでは生まれにくい。「生活者の変化をどこまで先回りして捉えられるか」であろう。
■本レポートで使用したデータ
【SRI+(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo.1(※1)のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データ。
※1 一部業態
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません【SCI(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女70,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データ。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品(一部バーコードなしも捕捉)について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができる。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません【SLI(全国女性消費者パネル調査)】
全国の15~79歳の女性約4万人の消費者から継続的に化粧品やヘアケア用品、下着といった美と健康に関連した買い物情報を収集し、蓄積したデータベース。「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができる。
※バーコードがない商品に関して仮コードをセットすることで、ネットや通信販売系の商品も集計可能
※SLIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
