課題はデバイスを横断したユーザーデータの統一
9月18・19日の2日間にわたり、東京国際フォーラムにおいて日本での開催が5回目となる「アドテック東京2013」が開催された。初日は10,700人を超える来場者(前年初日比105%)でにぎわった。そして同イベントのイノベーションゾーンで、先日スケールアウトを買収したmedibaの新戦略発表会が開催された。
アドテクノロジー戦略の立案・実施責任者として、medibaのCTOに就任した山崎大輔氏は、最近気になっているテーマとして、デバイスを横断したユーザーデータの統一について触れた。
通勤中にはスマートフォンを見て、会社ではPCからアクセス、そして帰宅してからはタブレットを見るといったように、ユーザーは状況やニーズによってデバイスを使い分けている。これは読者の方々も自ら実感していることだろう。しかしながら、mediba CMOの菅原健一氏は、「広告の観点からみると、現状ではデバイス間のデータをうまくつなげてトラッキングできない」と課題を指摘した。
「それが実現すれば、1人のユーザーに対する接触面を増やすことができる。例えば、夜に電車でスマートフォンから検索したワードに対して、朝にインターネットテレビを見ている時に広告を出すといったことが可能になる。モバイルと様々なデバイスをまたいで、1人のユーザーとして接することができれば、広告を介した密なコミュニケーションをユーザーと行うことができる」と山崎氏。
SSPとDMPを融合した新世代広告配信プラットフォーム
そして、先日スケールアウトを買収したmedibaは、アドテクノロジー分野の新事業に乗り出す。同社が今秋にリリースする新サービス「Ad Generation」についてmediba 広告事業本部 プロダクト企画部 ADPF企画グループ 兼 システム部の大野祐輔氏から発表された。
「Ad Generation」とは、ビックデータを活用し、SSPとDMPを融合した新世代広告配信プラットフォームである。仕組みとしては、SSPが広告リクエストをする時に、メディア側から付加価値のある情報(性別/年代/行動履歴/掲載サイト情報等)を広告主側に提供する。それをもとに広告主側はオーディエンスターゲティング配信を行い、広告効果を上げる。そしてメディア側はその広告収益を還元され、広告価値を最大化する。
ここで大野氏は、「すでにPCではRTB市場で収益化ができるようになっている。しかしスマートフォンでは、RTBでのオークション成約率がPCと比べて低く、まだアドネットワークが強い。まずはしっかりとアドネットワークでの収益基盤をつくり、プラスアルファでRTBでの収益化をはかっていく取り組みが必要だ」と現状のスマートフォンメディアにおける収益化の課題を指摘した。
従来のアドネットワークに加えて、SSPの登場により、メディアの収益化の手法は増えた。しかしながら、スマートフォンのトラフィックはかなり増えているにもかかわらず、ウェブ広告(PC)に比べるとスマートフォン広告の単価は低い。
「その理由としては、コンバージョンに直接結びつかない、短期間のキャンペーンで効果をあげるといったダイレクトレスポンス系の案件が多いといった要因が考えられる。スマートフォン広告の平均的なクリック単価は15~20円。一方でウェブ広告(PC)は100~150円程度。この差を狭めていくために、弊社としては、広告リクエストに付加情報を付け加えて、インプレッションの価値を最大化することで、広告収益を上げていく方法を提示する」と大野氏。
従来のターゲティング配信データは、基本的にデマンドサイドのDSPが貯めたデータによりターゲットのセグメントをつくる。あくまでデータの母体はDSP側がもっているセグメントデータであり、そこに依存していたとも言える。
それが「Ad Generation」では、RTBのオークションが行われる際に、サプライサイドの持っているオーディエンスデータを活用する。すると、従来型のDSPが持っているデータに、サプライサイドから提供するデータを加えて活用することで、ターゲティング配信できる量を増やす。これによって、広告単価の高いターゲティングの配信量が増えて、結果的にそれがメディアの収益アップにつながるという仕組みだ。
ただ先にも触れたように、スマートフォン広告におけるRTB市場はまだそれほど規模が大きくない。もしそこで取引が成立しなかった場合、「Ad Generation」ではメディエーション(アドネットワークの最適化配信)を行うことで、アドネットワーク配信における収益最大化も行うことができるという。
「Ad Generation」のベータ版は10月28日、正式版は12月2日にリリースする予定。今後、スマートフォン広告市場にどのような影響を及ぼすのか、引き続き追っていきたい。