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不確実な時代を乗り越える「マーケティング戦略の大転換」― 突破口はゼロパーティデータとロイヤル顧客(AD)

戦略再考の突破口は?5,000人の調査データから紐解くwithコロナ状況下のマーケティング

マーケティング=経営ゴトになっている企業は不況に強い

安成:不安定な市場環境で事業を成長させるには、経営者とマーケターが目線を合わせて戦略を策定することも重要だと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。

加藤:営業や現場のマーケターは目前の数字を追いますが、経営者は会社をどう成長させるかのビジョンをもって数年先を見据えます。そのビジョンがないと、ロイヤル顧客を経営資源と捉えたマーケティングは短期的に刈り取る施策に傾いてしまいがちです。だからこそ、経営者がコミットしていく必要があるんです。

加藤:さらに言えば、マーケティングが経営ゴトになっている企業は、顧客との新しいつながり方を生み出しています。外出自粛の動きの中で、お店を開けなかったり、サービスを顧客へ直接提供できなかったりする状況にある企業にとって顧客とつながる方法は限られています。デジタルシフトは極端に進行するでしょうし、顧客との直接的な接点づくりを経営ゴトとして培ってきたかどうかが今の状況における分岐点でしょう。

 海外を見てみると、顧客に直接やサービス商品を提供できない状況でも、つながりを強化して新たな可能性を見出している事例があります。スポーツクラブは最も難しい状況にあると思いますが、イギリスのプロサッカークラブであるアーセナルは、毎日平日にサッカーに関するクイズを出し、全問正解した人の特典としてクラブのTwitterアカウントからフォローしてあげる取り組みを開始しました。

アーセナルのクイズ画面キャプチャ
アーセナルのクイズ画面キャプチャ

加藤:クイズ回答時には氏名と生年月日のほか、ソーシャルアカウント情報を収集してフォロワーを増やしています。この情報を基に、グッズの販売や過去の試合の動画などを案内しているわけです。この難しい環境下で、ブランドとしてどのような価値を顧客へ提供しなければならないのか、考えさせられる例です。

アーセナルの公式Twitterでのやりとり
アーセナルの公式Twitterでのやりとり

安成:自分たちのブランド価値を理解し、エンゲージメントについて真剣に考えているからこそ考案された施策ですね。そして経営層のコミットメントがあるからこそ、このような施策を迅速に打ち出すことができるのでしょう。エンゲージメントを築く方法として、SNSをはじめとしたデジタル施策は、今後さらに重要性が増すようにも感じています。

加藤:また、当社では日本で800、グローバルで4,000超、あわせて4,921人の消費者に対し、購買に関するインサイトやプライバシーに関する視点、個人情報の扱い方、ロイヤルティ施策などに関する調査を行ったのですが、実はソーシャルメディア経由でのメンションやブランドからのフォローは、企業に求めるロイヤルティ特典として、非常に価値が高いと判明しました。特に日本において高く、20%の消費者が求めているつながり方でした。

安成:興味深い調査結果ですね。リアルでのつながりが難しいこの状況下だからこそ、今取り組むべき施策のヒントがつまっているように思います。

日本にはロイヤルティ戦略のホワイトスペースが存在する

安成:先ほど、ロイヤル顧客に着目したマーケティングは、現在のような不安定な環境にも強い戦略とのお話がありましたが、日本の企業においてはどのように展開されているのでしょうか。

加藤:先ほどお話した調査では、興味深い結果が出ていました。

 まず「何に基づいて購入を決定するか」という問いについて、「リーズナブルな価格」と答えた日本人が24%だった一方、英国では74%、米国では41%でした。また「ブランドに責任を持ってもらいたいか」との質問に「はい」と回答した割合が日本では13%と低かったのに対し、米国17%やスペイン37%と高かったりと、各国における違いがよく見えました。

加藤:中でもショッキングだったのは、ロイヤルティに関する調査結果です。日本では企業へのロイヤルティが購入の決め手となる割合が低いと出ていました。私はその理由を、本当の意味でのロイヤルティプログラムが上手く機能していないから、顧客はそもそも期待していないのだと分析しています。

 日本ではポイントやクーポンのようなその場限りの施策になっており、ブランドの価値観を伝えるホリスティック(社会を含めた価値観を考慮した企業活動)な体験はおろか、自分がブランドのために貢献できるようなプログラムはほとんどありません。この結果から、日本は、“顧客を真に理解したロイヤルティ戦略”におけるホワイトスペースがまだまだあると感じました

安成:ポイントが貯まるプログラム自体は多くの企業で導入されていますが、より本質的な戦略にシフトしていかなければいけないということでしょうか。

加藤:はい。ロイヤルティ戦略を軽視しているというわけではなく、それを通じて価値を提供できているブランドがまだ少なく、ブランドとのつながりを重視する価値観も完全には浸透していないのかもしれません。しかし、だからこそ概念を新たにしたロイヤルティ戦略はホワイトスペースであり、いち早く対応した企業に利があるはずです。

 調査ではその他にも、「なぜブランドのロイヤルティプログラムを利用しなくなったのか」といった質問もしたのですが、それに対し「対価が価値のないものだった」との回答が圧倒的で、他には「プログラムのリワードが不足」といった回答が挙げられました。また、購入の動機としては、「自分のライフスタイルに合った商品やサービスが欲しい」という回答が最も多い傾向が見られました。

 このことから、ライフスタイルを押さえた上で、提供価値や価値交換の部分もお客様と関係の強いものにアップデートしていくことが大切で、パーソナライゼーションとロイヤルティ戦略は合わせて実行していく必要があることも見えてきました。

安成:これまでもパーソナライゼーションは大事だと認識されてきて、多くの企業が取り組んでいるものの、興味関心の近いコンテンツのレコメンドだったり、心理的嗜好やライフスタイルなどのゼロパーティデータを押さえ切れていませんでした。その差が出てきてしまっているように思います。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/04/27 10:00 https://markezine.jp/article/detail/33197

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