YouTube広告をビジネス成果につなげた作品がノミネート
YouTubeで高い効果を獲得した動画広告を表彰する「YouTube Works Awards」。日本での開催は今年で6回目だ。審査員⻑に博報堂の顧問を務める松井美樹氏、ポップクリエイターのあさぎーにょ⽒を迎え、合計12名の審査員がファイナリスト50作品を審査。全8部門の受賞作品と、その中から全8部門の頂点となる「Grand Prix」が選出された。
各部門賞の中で最もインパクトが大きく、イノベーティブかつクリエイティビティに富んだ表現でYouTube広告を最大限に活用し、ビジネスの効果へとつなげることに成功した作品としてGrand Prixに選ばれたのは、花王の『しずかなおそうじ』だ。
オリジナルホラーゲームを開発し若年層にリーチした花王
本作品がノミネートした「YouTube Creator Collaboration部門」は、ブランドとクリエイターの共創だからこそ実現した企画の独自性と、それによるマーケティング成果を評価する部門だ。同作品はその部門賞(Gold)に輝いただけでなく、全8部門の頂点となるGrand Prixも獲得している。
花王のホームケア事業では、若年層(20代・30代)を中心とした潜在層の認知と購買に課題を抱えていた。SNSではユーザーの嗜好に応じて情報が最適化されるため、元々関心の低い掃除カテゴリの情報は届きにくく、一方的な広告を押し付けるだけでは課題をクリアできない状況にあった。
そこで、若年層に親しまれているホラーゲームとゲーム実況に着目。掃除をクリア条件としたオリジナルホラーゲーム『しずかなおそうじ』を開発した。実況者がゲームを進行する過程で、掃除アイテムは単なる商品ではなく、難局を乗り越えるために欠かせないキーアイテムとして登場する。ホラーゲームの緊迫感の中、アイテムを発見するワクワク感や、汚れを見事に落としてクリアに近づく達成感。実用的な掃除のTIPSをそのままゲームの攻略法として機能させることで、視聴者と実況者が一体となって盛り上がりながら、製品の魅力を自然に体感できるエンターテインメントへと昇華させた。
コミュニケーション戦略の核となったのが、ホラーゲーム実況で人気を集めるYouTubeクリエイターのガッチマン氏によるライブ配信だ。ゲーム本体を無料配布して配信をフリー化することにより、他のクリエイターや視聴者による自発的な実況プレイを誘発。コミュニティの熱量を高める導線を設計した。
ガッチマン氏の実況動画は、想定を上回る45.1万回再生を突破した。公開直後にXやLINE NEWSでトレンド1位を獲得し、ゲームの公開から30日でダウンロード数は目標比の5倍を記録。PCゲーム・ソフトウェア配信プラットフォーム「Steam」の無料ランキングではトップに掲載された。その結果、数百万人のフォロワーを持つゲーム配信者たちにもオーガニックで取り上げられ、一人のホラーゲーム実況者への配信依頼のみで、大きな広がりを生むことができた。
さらに、配信者たちがゲームを進めるための鍵として、製品名や掃除のTIPSをあたかも生活者目線のレビューのように視聴者に解説。視聴者にブランドのポジティブな印象を与えたことから、若年層(20代・30代)のしずかなおそうじ認知者の中で「おそうじといえば」で思い浮かぶ企業として1位にランクインした(2025年花王調べ)。アプローチが困難だった世代との溝を埋め「花王製品を使用して掃除をしてみたい」と思うユーザーを増やすことに成功。広告出稿に頼らず、実況・コメント・自発的配信というYouTube固有の文化と機能を最大限活用することで、深い製品理解と広範な認知拡大を同時に実現した。
「ドリエル」のプロモーションでeスポーツの大会を開催したワケ
YouTubeでブランドの公式チャンネルを運用し、消費者との継続的なコミュニケーションと相互作用を通じてブランドとの関係を強化、ブランドファンダムを構築したキャンペーンを表彰する「Best Brand Fandom部門」。同部門の部門賞に選ばれたのは、エスエス製薬の「睡眠計量e-SPORTS CUP『SLEEP FIGHTER II』」だ。
本作品は、睡眠改善薬「ドリエル」のブランドイメージ向上を目的に設計された。ボクシングの試合における計量のように、睡眠の計量を行うeスポーツの大会を開催。大会前の睡眠時間をスマートウォッチで可視化し、不足者に減点を課すルールを設定した。これにより、睡眠を「休息」ではなく「勝利のための戦略」へとリポジショニング。睡眠を軽視しがちなゲーマー層の意識を変え、質の良い睡眠で豊かな毎日と人生を実現するブランドイメージを浸透させる狙いがあった。
配信の最大同時接続数は約11.8万人に上り、関連配信の総再生回数は約709万回を記録。施策認知者の購入率は15.2%で、非認知者の約46.9倍という高い数値を示した。また、ドリエルについて検索した人の割合は16.3%(非認知者の約53.8倍)、公式サイト来訪は26.8%(非認知者の約36.5倍)と、施策が態度変容を促していることがわかる。
