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MarkeZine Day 2026 Autumn

SNS起点で生まれるマーケティングトレンド

Xから予測する2026年秋冬の美容トレンド 「使い分け美容」が加速、部位別・状態別の提案が鍵に

 美容市場で当たり前となった「パーソナライズ」や「成分買い」は今、新たなフェーズへと突入しています。本稿では、スパイスボックス「Social Insight Lab.」がXの投稿データを分析。2026年上期に起きた生活者の行動変化を紐解きながら、コスメ・スキンケア・ヘアケア各領域の具体的なトレンド予測を行うとともに、商品開発やコミュニケーションを考える上での視点もあわせてご紹介します。

2026年上期で発話が増加したキーワードを振り返る

 こんにちは。スパイスボックス Social Insight Lab.アナリストの奥村咲香です。Social Insight Lab.では、SNSの投稿データやプロファイリング情報を抽出し、生活者のインサイトや動向を分析しています。

 本稿では、X上の美容関連投稿に含まれる単語の出現割合を半期ごとに比較しました。2025年下期から2026年上期に増加したキーワードと高反応投稿から直近の変化を読み解くとともに、前年との比較から秋冬に繰り返されやすい需要を捉え、2026年秋冬を予測します。

2026年上期に出現割合が増加した美容関連キーワードをコスメ・スキンケア・ヘアケアの3カテゴリー別に一覧化した表。コスメは「似合う」「プライマー」「ソフエレ」「プロンプト」「引き算」など、スキンケアは「皮脂」「導入」「角質」「脂性」「構造」「浸透」など、ヘアケアは「前髪」「洗う」「毛先」「スクラブ」「クレンジング」「ドライシャンプー」などが並ぶ
2025年下期から2026年上期にかけて出現割合が増加した美容関連キーワード
※クリックすると拡大します

 パーソナルカラー、成分買い、頭皮ケア、複数アイテムを組み合わせるルーティンは、ここ数年続いてきた潮流です。

 そういった中でも2026年上期に特徴的だったのは、それらが「似合う人/似合わない人」「鼻/頬」「根元/毛先」「毎日/週1回」と細かく分岐し、商品を選ぶだけでなく、使用部位・頻度・順番、さらには“使わない条件”まで設計され始めたことでした。

2026年上期は、パーソナライズは「診断」から「条件別設計」へ

【コスメ】“いつもの2割減”がちょうどいい、顔タイプ別の引き算メイク

 コスメでは、「眉」「カラコン」「薄い」「濃い」「似合う」といったキーワードが増加しました。盛るほどよいという価値観が後退し、低彩度・ミュートな色や“やりすぎない盛れ”が支持される流れ自体は、以前から続いています。

 今期ならではの変化は、その引き算が「ソフエレ(ファッションや美容の『顔タイプ診断』における『ソフトエレガント』の略)」などの顔タイプや失敗経験と結びつき、具体的な調整ルールになったことです。

 Xでは、「メイクに時間をかけるほど盛れない」「黒いアイラインを引いた瞬間に違和感が出る」「全工程を2割減らすくらいがよい」といった投稿が見られました。要するに、薄くすること自体が目的ではなく、自分の顔立ちに対して“いつもの2割減”がちょうどよい、という感覚です。

 同時に共有されていたのが、チークを涙袋に近い位置へ置いて中顔面を短く見せる、眉を細く長くして黒さを抑える、小さめのカラコンで白目の余白を残す、といった“顔の重心と余白”の調整です。

 このように、「眉を薄くするだけで垢抜ける」「チークと涙袋を同じ色にする」など、一つの動作で変化が想像できる表現へ落とし込まれていました。

 「プロンプト」の増加も象徴的です。生成AIへ顔写真を送り、似合うメイクや髪型を提案させるだけでなく、そのままコピーできる質問文や出力フォーマット自体が共有されました。既存の顔タイプ診断が、専門家から結果を受け取るものから、ユーザー自身が条件を変えながら複数の仕上がりを試作するものへ広がり始めています

 色設計の面では、「YSL Beauty」が2026年春に「水彩ヌードカラー」「ツヤでもマットでもない」と、低彩度を単なる薄さではなく、新しい発色・質感として提案しました。

 商品開発では発色の強さだけでなく、濃淡や塗布位置を調整しやすい設計が、コミュニケーションでは顔タイプ別の完成像やNG/OKの提示が、より重要になっていると考えられます。

 ベースメイクでは、「プライマー」「ミスト」が増加しました。工程間にミストを挟む使い方自体は既に定着していますが、2026年上期は、持続力を一律に高めるよりも、皮脂が出る部分、乾燥する部分、毛穴をぼかしたい部分で、下地やミストの役割を変える使い方が目立ちました。

 鼻には皮脂・毛穴対策、頬には保湿・密着、顔の外側は塗りすぎないなど、ベースメイクにもスキンケアと同様のゾーン発想が入り始めています。求められているのは「絶対に崩れない鉄壁肌」だけではなく、必要な場所だけ補正し、素肌感を残したまま崩れ方まできれいにすることだと考えられます。

【スキンケア】“鼻だけ油田”から見える、毛穴ケアの原因・部位別化

 スキンケアでは、「皮脂」「脂性」「角質」「鼻」といったキーワードが増加しました。しかし、毛穴や皮脂悩みは一時的な流行ではありません。スキンケア市場では長年にわたり高い熱量が続く、極めて悩み多き領域です。今期の変化は、毛穴ケアが再浮上したことではなく、その悩みの捉え方が一段と細かくなったことにあります。

 Xでは、「鼻だけ油田」「鼻だけファンデが消える」「皮脂ドバ」「角栓崩壊」といった、症状の場所と状態を一言で伝える表現が見られました。

 鼻は皮脂が多い一方で頬は乾燥する、角栓と黒ずみは異なる、皮脂型と乾燥型ではケアを変えるなど、顔全体へ同じ商品を使う発想から、原因・部位別のケアへ移っています。

 成分買いと、アゼライン酸やレチノールなどの“攻めの成分”をバリアケアと併用する考え方は、既に定着した潮流です。2026年上期に進んだのは、皮脂の多い鼻にはアゼライン酸、乾燥しやすい頬にはバリアケアと、同じ顔の中でも部位ごとに成分や剤形を変えることです。

 さらに、刺激や赤みが出た時には“攻めの成分”を休むなど、使用条件と休止条件までルール化され始めました。

 毛穴・皮脂・ニキビの投稿では、ホームケア、処方薬、美容施術を“初級/中級/上級”や“肌管理/肌治療”として並べ、自分の悩みがどこまで化粧品で対応できるのかを判断する投稿も見られました。生活者の関心が商品比較だけでなく、化粧品・医薬品・施術の役割分担へ広がっています。

 成分買いに加え、処方や浸透、塗膜など、メーカー独自の技術まで比較する「技術買い」も定着しています。2026年上期は、その技術情報が、「どの部位に、どの順番で、どの程度使うか」という実践的な使用ルールへ翻訳され始めました。

 「導入」「浸透」といったキーワードが増加する中、生活者はセラミドがどのような構造で配合されているか、角栓を“削る”のか“溶かす”のか、UVフィルターをどのような塗膜技術で保つのか、医薬部外品なのか化粧品なのかまで比較し始めました。

 「BA(ビューティーアドバイザー)さんに聞いた」「研究員によると」といった専門情報も、何回重ねるか、どの順番で使うかという実践ルールへ変換されています。

 美容誌でも、2026年春はPDRN(ハリや弾力不足などに効果的な美容成分)アイテムとバリア美容液・UVケアが同時に提案されるなど、注目成分と守りのケアが並行して扱われました。一方、生活者側ではPDRN美容液をファンデーションへ数滴混ぜる、ミストをスポンジへ含ませるといった、商品を工程へ組み込む使い方まで見られます。

 今後は、成分名や研究実績だけでなく、「どの毛穴タイプに」「どの部位へ」「何と組み合わせ」「どの状態なら休むのか」まで設計された商品・情報が求められるでしょう。

【ヘアケア】“高補修一辺倒”の次は“細毛はオイルを休む”という引き算設計へ

 ヘアケアでは、「頭皮」「皮脂」「洗う」「毛先」「ミスト」「前髪」といったキーワードが増加しました。頭皮ケア、アウトバスの重ね使い、ツヤ・まとまりへの関心自体は、以前から続くトレンドです。

 2026年上期に特徴的だったのは、頭皮や髪の違和感を“商品不足”ではなく“やりすぎ”のサインとして捉える投稿です。「何を足しても変わらない時は、まず落とす」「シャンプーが泡立たない時は蓄積」「3日に1回リセット」といった表現で、毎日の通常洗浄と、数日・週単位のクレンジングを分ける考え方が共有されました。

 高ダメージ毛向けのミルク・オイル・マスクを細毛や地毛の人がそのまま取り入れ、「重い」「乾きにくい」「根元がつぶれる」と感じた失敗から、「細毛はオイルを休む」「地毛は高補修を毎日使わない」「根元には塗らない」といった引き算ケアが生まれています。

 高補修かどうかだけでなく、自分の髪質に対して補修量が適切かを見極める段階へ進みました。工程も細かくなっています。「頭皮を生乾きにしない」「ミルクを塗って、8割乾いたらオイル」「最後まで冷風」と、商品名より使用タイミングが支持されました。さらに、根元は重くしない、前髪はドライシャンプーで部分リセットする、あほ毛はスティックで表面だけ整える、毛先は補修するといった“ゾーンヘアケア”へ進んでいます。

 市場側でもこの動きは連動しています。花王は2026年、頭皮と髪を解析し、一人ひとりに合ったケアプランを継続提案する「THE ANSWER PROGRAM」を開始。MTGは、落ち切らないスタイリング剤の蓄積に着目し、「3日に1回、髪と頭皮をリブートする」と掲げた炭酸シャンプーを投入しました。

 生活者が求めているのは「診断」「高補修」といった大きな概念だけではなく、「前髪だけ」「根元にはつけない」「オイルを休む日」といった、日常で実行できる細かな使い分けです。商品開発では補修力と軽さの両立、根元・毛先など部位別の使用設計が、コミュニケーションでは向いている髪質だけでなく、重く感じた時の調整方法まで示すことが差別化につながるでしょう。

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2025年下期の傾向は?新トレンドより、既存トレンドが秋冬の行動へ変換された

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この記事の著者

奥村 咲香(オクムラ サキカ)

スパイスボックス Social Insight Lab.アナリスト
 プロデューサーを経て、スパイスボックス独自のSNSデータを活用した、SNSアカウント運用・オフライン統合施策・新規事業立案などを目的としたプロジェクトにおけるデータ活用・戦略立案に参画。現在はナショナルクライアントを中心に、各SNSプラットフォームを...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/08/28 08:30 https://markezine.jp/article/detail/77124

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