BtoBマーケティングリサーチの基礎を学ぶ!
─ BtoBマーケティングのリサーチはBtoCと何が違う?ハマりやすい2つの落とし穴
─ 「成果を出しても評価されない」のはなぜ?リサーチ調査から見る経営層とマーケ現場のギャップ
─ マーケの打ち手はどこで効く?決裁者849人に聞いた、 検討プロセスから導入決定までの本音
─ BtoBマーケで調査結果が施策に繋がらない原因はデータの量・質にあらず!データ分析の基本作法を学ぶ
─ プロも陥る「確証バイアス」を回避して「顧客の本音」を引き出すには?インタビュー4つのコツ (本記事)
Whyを知りたいなら定性調査を
「何が起きているか(What)」を把握するのには強い定量調査ですが、「なぜそうなのか(Why)」を掘り下げるのは定性調査の役割です。第4回では定量調査のポイントをお伝えし、「自由回答やローデータで顧客の言葉に触れる大切さ」にも触れました。その先にあるのが「自分で顧客に聞く」ステップです。
BtoB企業では、営業やCS(カスタマーサクセス、カスタマーサポート)部門を介して顧客の声VoCが間接的に入ってくることが多いと思います。しかし、マーケターや事業開発の担当者は自ら直接声を取りに行くべきです。なぜなら、間接的な情報は要約され、温度感が削ぎ落とされてしまうからです。
特に価値が高いのは、「自社の顧客以外」の声です。他社ユーザー、未取引の潜在顧客、他社を選んだ失注先——。これらは自社のネットワークだけでは接点を持ちにくいため、対象者ネットワークを持つリサーチ会社を活用するのも一つです(図表1)。
また、自社顧客以外にインタビューを行いたい場合は、対象者選定からインタビュー実施までを支援する「セルフ型のインタビューサービス」を活用すれば、低予算・短納期で顧客の声を聞くこともできます。たとえば私が所属するマクロミルの場合は「Interview Zero」があります。
いきなりサービスを使用することに対して抵抗を感じる方もいるかもしれません。構えずに、まずは身近な顧客数人に聞いてみることから始めましょう。何を聞くか? は図表1を参考にしてみてください。数字の裏側に広がる景色が見えてくるはずです。
今日から意識したい、インタビューの4つの“コツ”
インタビューに対してハードルを感じるかもしれませんが、難しい専門知識は要りません。次の4つのコツを押さえるだけで、得られる情報の質は大きく変わります。
コツ1:徹底して相手の話を聞く「アクティブリスニング」
最も大切なのは、テクニックではなく姿勢です。当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、貴重な時間を割いてくれた相手に最大限の敬意を払い、関心を持つ。これが出発点です。
ありがちな失敗は、話の途中で「つまりこういうことですよね」と遮ったり、自社への否定的な意見に反論したりすることです。最後まで話を聞かないと相手が「この人に本音を話しても無駄だ」と感じてしまい、口を閉ざしてしまいます。とはいえ黙って聞く「傾聴」をすれば良いわけではありません。真剣に聞いて疑問が湧いたら率直に質問を重ねることがポイントです。きちんと話を聞いていれば自然と気になるポイントは出てきますし、素直に尋ねることで、相手も「わかってくれている」と感じて話し続けてくれます。
「知りませんでした」「参考になります」といったあいづちで、こちらの真剣さを伝えるのも効果的です。なお、つい自分が話しすぎてしまうのもよくある失敗です(後ほど筆者の失敗談として触れます)。自分の話す時間はできるだけ短く、を意識しましょう。
コツ2:要望という「手段」の裏にある「目的」を探る
「もし顧客に何が欲しいか聞いていたら、彼らは『もっと速い馬』と答えただろう」
これはヘンリー・フォードの有名な一節です。馬が移動手段として定着している中で、顧客の要望を鵜呑みにしていたら自動車という未知の解決策は導き出せなかったというエピソードです。つまり、顧客は自分が欲しい「手段」は語ってくれますが、その裏にある本当の「目的」までは語ってくれないことが多いのです。
たとえば、「管理画面のデータ全件をCSV形式で出力するボタンが欲しい」という要望をそのまま実装しても、あまり使われないことがあります。なぜなら、要望の背景にあるのが「定例会議用データのまとめ」か「経理システムへの転記」か「バックアップ」かによって、最適な打ち手は「レポート自動送付」「API連携」「自動バックアップ」とまるで変わるからです(図表2)。
要望を聞いたら、それを結論にせず「なぜそれが必要なのですか?」と一つ問いを足す。これだけで、表面的な要望の奥にある本質的な課題に辿り着けます。
コツ3:曖昧な言葉は、必ず定義を確認する
BtoB企業では、業界が違えば同じ言葉でもまるで意味が異なります。「長期プロジェクト」がIT業界では1年でも、建設業界なら10年を指すことが多いです。一般的には軽いトラブルを指す「アクシデント」が、医療・建設現場では重大事故を意味します。IT業界では「アカウント」といえば「ログイン用のユーザーID」を指すのに対し、広告代理店では「顧客企業」そのものを指すこともあります。
自分の前提で言葉を解釈すると、意図を丸ごと見誤りかねません。少しでも引っかかったら、「それは具体的にどういう意味で使われていますか」と聞き返すことです。曖昧なまま進めないことが、正確な理解の基本です。
コツ4:仮説に縛られず、先入観を脇に置く
事前に仮説を持ってインタビューに臨むのは良いことです。しかし、インタビューが始まった瞬間からは、仮説を一旦忘れる勇気が必要です。仮説を「持つ」ことと、仮説に「縛られる」ことは違います。仮説に縛られると、この後に述べる「確証バイアス」という最大の落とし穴に足を取られます。
