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IT部門・マーケ部門がうまく協力するカギは「プロトタイピング」 富士通が語る、その理由とは

 デジタル化が進む現在、マーケティング部門とIT部門の連携は切っても切り離せない課題だ。本記事では、両部門が連携するための方法として提案する「プロトタイピング」について、富士通のマーケティング担当の板谷由子氏とエンジニアの藤田壮吉氏に話を聞いた。

求められるマーケターとエンジニアの密な連携

 取材の最初、富士通のマーケティングコミュニケーション本部に所属する板谷氏は、現在のマーケティング部門に求められていることを語った。

 「マーケット・顧客の変化に応じて、マーケティング活動は常に変化し続けなければなりません。昨今は、マーケティングのデジタル化も著しいため、これまでに以上に、マーケターとエンジニアは密に連携していくことが重要となってきていると実感しています」(板谷氏)

富士通株式会社 マーケティングコミュニケーション本部 デマンドセンター統括部 マーケットプレイス推進部 板谷由子氏
富士通株式会社 マーケティングコミュニケーション本部
デマンドセンター統括部 マーケットプレイス推進部 板谷由子氏

 新たにマーケティング施策を行う時、マーケターとエンジニアは、最新のマーケティング手法やテクノロジーを探し、互いに知恵を出し合いながらプランを模索することがカギとなる、と板谷氏は語る。

マーケとITをつなぐ「プロトタイピング」とは

 マーケットの変化に対応するため、日々IT部門のエンジニアとマーケターの密な連携がカギとなることはわかった。では、エンジニア側はその点に関してどのように感じているのだろうか。藤田氏が解説した。

富士通株式会社 藤田壮吉氏
富士通株式会社 クラウドサービス事業本部
クラウドプロモーション統括部 藤田壮吉氏

 「利用者にとって満足度の高いUXを実現するには、サービスの目的を深く把握して、試行錯誤しながら進めなければなりません。プランニングの初期段階からマーケター側とディスカッションしていく必要があると考えています」(藤田氏)

 マーケティング部門とIT部門の連携において、プランニングの初期段階から議論する必要性はわかった。では、どのように議論を進めていくべきなのだろうか。それに対し板谷氏と藤田氏は「やりたいこと、できることをアイデア出ししながら、企画を一緒に詰めることが重要」だと語る。そして、その手法として藤田氏が提案するのが「プロトタイピング」だ。

 プロトタイピングは、実働するプロトタイプを制作して、実際に体験してみる。その中で、UIや機能が十分か、充実したUXが提供で来ているかをフィードバックしながら、軌道修正を加えて完成を目指していく手法だ。

 実際に触ってみることができるため、お互いの意見も出しやすく、改善提案の具体性も増す。そして何より、マーケターとエンジニアが共通言語に近い形でディスカッションを試みることができるため、マーケティングの可能性を大きく広げることができるというのだ。

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プロトタイピングを簡単に始める方法とは

 富士通は現在、このプロトタイピングにも役立つ「K5 Playground」という無料アプリ開発ツールを提供している。豊富なテンプレートやアプリケーションのレシピ集も多数用意することで、Webサイトやアプリ、チャットボットなどを簡単に制作できる。

 「テンプレートの中から必要なものを選んで編集を進め、色々なサービスを呼び出す部品を組み合わせることで、簡単にアプリケーションが作成できます。デザインに関しても選択形式で選ぶことができるので、イメージ通りのデザインに近づけやすいと思います」(藤田氏)

 様々なシステム、サービスとの連携も容易だ。売り上げデータなど企業の基幹システムはもちろん、FacebookやTwitter、InstagramといったSNSと連携し、目的に合わせたデータ収集や分析ができる。

 このように整備されたツールの上であれば、自社に必要なアプリケーションを簡単に用意することが可能になる。

これまでの方法より投資コストと作業時間を削減

 プロトタイピングが簡単に始められることはわかった。では、プロトタイピングによってどういったメリットが得られるのだろうか。

 「プロジェクトの始動時からマーケターとエンジニアがプロトタイピングを取り入れると、プロジェクト後半での複数回の追加開発、スケジュール遅延と予算オーバーを避けることができます」(板谷氏)

 これまで、マーケターとエンジニアはモックアップを作ったり、機能要求書を用意したりすることで円滑なコミュニケーションを図ろうとしたと思うのだが、それだけでは難しいのだろうか。

 「機能要求書・モックアップは、実装すべきものを確定していくには有効です。この手法で知恵の出し合いをするのは、UXという一連の流れを評価しづらく限界があり、また非常に時間がかかります」(板谷氏)

 さらに、プロトタイピングを活用したテストマーケティングをすれば、実際にユーザーの反応を見て効果検証することができるため、予算の有効活用にもつながる。

 「プロトタイピングなら、動作するアプリを実際に触りながら、具体的な改善提案を出し合うことができて建設的です。テストマーケティングを実施してユーザーの声を得ることや、早期リリースして早い段階からA/Bテストなどでユーザーの行動に基づいた改善も可能です。企画から改善までマーケターとエンジニアとが情報を共有しながら開発を進めるプロセスが確立できるのです」(藤田氏)

マーケターとエンジニアとの距離が縮まっていくメリットも

 マーケティング部門とIT部門が、共有言語に近い形で円滑なコミュニケーションを取ることができる可能性を持つプロトタイピング。従来のスタイルではなかなか埋められなかったマーケターとエンジニアとの「立場の違い」や「知識・スキルの違い」の距離が縮まっていくメリットもある。

 「私たちマーケターにとっては収集・解析できるデータの内容やテクノロジーが顧客のニーズや課題解決にどう役立つのかを具体的に学べるメリットがあります。エンジニア側も、テクノロジーの活用で顧客が望む成果が何かを知る・考えるきっかけになると思います」(板谷氏)

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AIも活用できるプロトタイピングの可能性

 「K5 Playground」のプロトタイピング活用は、マーケターとエンジニアのコミュニケーション不足の解消やスピーディーなWebアプリ作成に役立つだけではない。

 富士通が独自開発したAIサービス「Zinraiプラットフォームサービス」(以下、Zinrai)をAPIとして活用できるのも大きなメリットの1つだ。

 「Zinraiは文章・音声・画像などを分析する『基本API/目的別API』と、人気のディープラーニングを柔軟に行える『Zinraiディープラーニング』から構成されています。Zinraiによって、エンドユーザーのきめ細かな感情の変化や話題の移り変わりなども分析できるようになります」(藤田氏)

 K5 PlaygroundとZinraiを組み合わせれば、SNSやLINE、システムの文章や画像の分析ができるため、簡単なソーシャルリスニングなどが可能になる。AIを活用したWebサイトなど様々なアプリケーションを新たにプロトタイピングしていくこともできるだろう。

AI活用、API拡充を進め、すべてのアイデアを実現

 富士通が提供を進める「K5 Playground」。最後に同プラットフォームとプロトタイピングに対する展望を藤田氏に聞いた。

 「今後もUXをより良くしていくとともに、画面やK5 Playgroundとつながるサービスを増やしていきたいと思います。プロトタイピングを通じて、マーケターとエンジニアが楽しみながらアイデアを具現化してもらえるようになってほしいですし、そのプラットフォームとしてK5 Playgroundが介在できると嬉しいです」(藤田氏)

 アプリケーションで使える画面やつながるサービスは今後も増え続けていく。その進化が続く限り応用範囲も無限に広がっていく可能性を秘めている。マーケターとエンジニアが同じ目線でディスカッションしながら、アプリケーションの作成を可能にする「K5 Playground」とプロトタイピングの活用は、今後マーケティング部門とIT部門の距離を縮める大役を担うかもしれない。

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この記事の著者

浦野 孝嗣(ウラノ コウジ)

 2002年からフリーランス。得意分野は経済全般のほかIT、金融、企業の経営戦略、CSRなど。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/01 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28318