商品の特徴を理解して適切なキーワードを生成するawoo AI
2015年に台湾で創業、「ECサイトをもっと探しやすくさせる」にフォーカスしたマーケティングソリューションを提供するawoo Japan(アウージャパン)。同社日本事業開発責任者の吉澤和之氏がMarkeZine Day 2022 Retailに登壇した。
2022年8月に経済産業省が発表した電子商取引に関する市場調査の結果によると、2021年の消費者向けEC市場は前年比7.35%増の約20兆7,000億円に上る。2年におよぶコロナ禍で、消費者のECサイトの利用はすっかり浸透したように見える。
しかし、吉澤氏によると、そんなECサイトにも課題はある。たとえば実店舗では「購入する商品を事前に決めていなくても、店内を歩いて商品を見ているうちにニーズが喚起される」もしくは「以前から欲しいと思っていた商品が偶然見つかる」などのシーンが生まれやすい。一方で、オンライン上では「商品との偶然の出会い」が発生しにくいという。なぜなら、一般的なECサイトでは、膨大な商品がカテゴリーごとに分類されているので偶発的な出会いはあまり期待できない。「かといって、何の一貫性もなく商品を並べていては、ユーザーがかえって必要なものを見つけにくくなる」と吉澤氏は指摘した。
この課題を解決するのが、awoo Japanが開発したソリューション「awoo AI(アウーエーアイ)」だ。awoo AIでは、EC事業者が持つ商品名や説明書き、画像などの商品情報をawoo PDP(Product Discovery Platform)が解析し、商品の特徴を理解して適切なキーワードを自動生成。それらのキーワードを組み合わせたハッシュタグをawoo AMP(AI Marketing Platform)が商品詳細ページなどに自動反映させる。
ユーザーの興味関心に限定しないレコメンドを可能に
商品理解AIエンジンであるawoo PDPでは、商品のタイトルや説明文をベースに、たとえば「この商品はTシャツなのか、それともロングTシャツなのか、パーカーなのか」など、商品の特徴をAIが分類。また、NLP(自然言語処理技術)を用いて、綿や麻、ポリエステルなどの素材やそのアイテムが持つ特徴を判別する。
こうして商品の特徴をすべてグルーピングして整理し「#クルーネック 吸水速乾」「#Tシャツ ロゴ」「#イージーケア 快適」など効果的なキーワードを組み合わせてハッシュタグを生成。またユーザーからのクリック率や商品の在庫状況などを鑑み、CVやサイト回遊につながるハッシュタグの最適化を支援する。
awoo AIには、ハッシュタグの遷移先である商品一覧ページの自動生成機能も搭載。また、ユーザーが最初にクリックしたのが「#Tシャツ ロゴ」だとすると、遷移先のページには「#Tシャツ コットン」「#Tシャツ プリント」「#ロゴ プリント」など、別のハッシュタグも追加の上表示する仕様になっている。
では、どのようにしてハッシュタグをECサイト上の体験価値向上につなげられるのだろうか。あるユーザーがランニング目的でウェアを探しており、Tシャツの商品ページを見ているとする。「通常のECサイトであれば、Tシャツを閲覧しているユーザーには他のTシャツをレコメンドするだろう」と吉澤氏。しかし、awoo AIを活用することで、吸水速乾から派生した「スポーツ」のキーワードを軸にスポーツ用のメガネや同じく吸水速乾の靴下をピックアップし、紹介する。つまり、1つの商品カテゴリーやユーザーの興味関心に限定しない訴求を実現するのだ。
サイト回遊率が4倍に向上したコメ兵のECサイト
様々な商品のレコメンドを可能にするawoo AIの特徴を具体的に示すため、吉澤氏はコメ兵のECサイトを例に挙げ、導線を詳しく説明した。
「コメ兵のECサイトの検索タブの下に『関連キーワードで探す』という表示があり、複数のハッシュタグが並んでいます。この表示こそawoo AIによるものです。たとえば、とあるユーザーが『#ショルダーバッグ レディース』をクリックしたとしましょう。関連商品に目を通すも、惹かれるものがないユーザーは、新たに表示された『#ルイ・ヴィトン ショルダーバッグ』のハッシュタグをクリックします。すると、ルイ・ヴィトン商品のみに表示を絞ることができます。ここでルイ・ヴィトンの財布を偶然見つけ『財布も良いかもしれない』と思い始めたユーザーは『モノグラムがより際立った商品はないか』と考えるかもしれません。最終的にユーザーは『#ルイ・ヴィトン』をクリックし、財布や時計も含めたルイ・ヴィトン商品から欲しいものを探し始めます」(吉澤氏)
このように、ECサイトを回遊しているうちに、ユーザーは自身が本当に欲しい商品に気づくわけだ。吉澤氏は「最初はショルダーバッグを探していたユーザーに対して、興味・関心を喚起し様々なジャンルの商品をレコメンドする。awoo AIを使えば、まさにウィンドウショッピングに近い買い物体験をECサイト上で提供できる」と強調する。
コメ兵はawoo AIの導入後、サイト回遊率が4倍以上向上したそうだ。ユーザーの体験向上だけでなく、サイトの「回遊率」「離脱率」「直帰率」「滞在時間」「CVR」などの改善も見込めるという。
「商品理解」に基づく機能で個人情報の問題も解決
ここまでで吉澤氏が再三強調したのは、awoo AIの機能の大きな特徴が「顧客理解」ではなく「商品理解」に基づく点だ。
「一般的に『パーソナライゼーション』とは、Cookieなどを活用して顧客のWeb行動を解析することで顧客理解を深め、その人に最適な製品をレコメンドすることをいいます。当社では、顧客ではなくその商品の特徴を踏まえて商品を理解し、それをハッシュタグという形でECサイトに表示させて、商品の探しやすさや購入の体験価値向上を実現しています」(吉澤氏)
そのため、awoo AIを活用することでCookieに依存せずともECサイト上の顧客体験の向上につなげられるという。また、ユーザー行動に依存していないため、初回訪問時のユーザーに対するコールドスタートも解消できるというのだ。
また、AIが自動生成したキーワードをハッシュタグとしてのみならず、サイト内検索のサジェストとして利用したり、トップページの人気タグとして表示させたり、ハッシュタグをサムネイル化して画像レコメンドに利用したりすることも可能だという。「顧客体験に資する様々なレコメンド機能にキーワードを応用できるのもawoo AIの強み」と吉澤氏は説明した。
差別化が難しい商品もハッシュタグで解決
吉澤氏はコメ兵に続き、これまで支援してきた企業の事例を複数紹介した。その1つがEC専門ジュエリーブランド「ARTIDA OUD(アルティーダ ウード)」の事例だ。回遊率がなかなか伸びないことが同社の課題だったが、awoo AI導入後は3.6倍にアップ。直帰率も改善しCVRも3倍に伸びたという。
2つ目はバッグやスーツケースなどを展開する「ACE(エース)」の事例。同社では、どうしても似たような色合いやデザインになってしまうビジネスバッグの画像の差別化に悩んでいたという。そこでawoo AIを導入。生成されたハッシュタグを基に機能性を訴求する画像レコメンドを行ったところ、サイト内回遊率が3.3倍、CVRも2.1倍に改善した。「画像レコメンドでは一見した違いがわかりにくい」というケースでも、ハッシュタグを基軸にしたレコメンドにより、ユーザーが自分のニーズに合った商品を探しやすくなったそうだ。
「awoo AIエンジンと特に親和性が高い業種はアパレル」と語る吉澤氏。3つ目の事例であるキッズ向けアパレルの「F.O.Online Store(エフオーオンラインストア)」では、回遊率とCVRの改善に向けてawoo AIを導入し、回遊率3倍、CVR2.9倍を達成した。「アパレルの商材は服のデザインやロゴなど様々な特徴が出てくるのでハッシュタグと相性が良く、ユーザーニーズが非常に細かいので幅広いキーワードが生まれる」と吉澤氏は説明した。
富澤商店はオプション機能の活用でCVRを11.5倍に
回遊率を上げることで新規ユーザーの囲い込みに成功しているのが、4つ目の事例であるランジュリーブランドの「tutuanna(チュチュアンナ)」だ。最適なハッシュタグ表示でサイトの回遊率を4.4倍に上げ、新規訪問者の離脱防止を実現。サイト内回遊でエンゲージメント向上にもつなげるなど、高い成果を出しているという。
5つ目の事例は富澤商店。同社ではキッチン雑貨や製菓材料を取り扱っているが、awoo AIを導入後にはサイト回遊率8.3倍、CVR11.5倍になったという。ポップアップ機能やトップページへの人気タグ表示など「様々なオプション機能を活用している点が成果の要因」と吉澤氏は分析した。
「awoo AI導入企業の実績を平均すると、サイト内回遊率は4倍、滞在時間は6倍、離脱率は-75%、直帰率は-81%、CVRは3倍になる」と語る吉澤氏。最後は次のように述べ、講演を終えた。
「導入にあたっては、大手のデジタルマーケティングエージェンシーやSI企業とパートナーシップを組み、EC事業者様の課題解決に取り組んでいきます。今後も、顧客理解ではなく商品理解にフォーカスすることで、EC体験価値を向上できるということを多くの事業者の方に知っていただきたいです」(吉澤氏)
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