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マーケティングの近未来

反トラスト法訴訟を乗り越え、復活を果たしたMicrosoftから学ぶこと

Microsoftの成功の源泉は「ネットワーク効果」にあった

 1998年当時のシリコンバレーで我々がMicrosoftの成功から学んだことはなんだったのか? それは、「ネットワーク効果」だった。ネットワーク効果については、有名な言葉がある。1900年当時のAT&T社長のセオドア・ベイルが語ったとされる言葉だ。

「つながっていない電話は科学機器でもおもちゃでもない。世界で最も役に立たないものだ。電話の価値は他の電話とのつながりにあり、接続数が多いほどその価値は増す」(引用:『ネットワーク・エフェクト 事業とプロダクトに欠かせない強力で重要なフレームワーク』アンドリュー・チェン著

 1990年代からIT業界で仕事をしていた私が、なぜ、WindowsマシンとAppleのPowerBookの両方を使っていたのか? それは、互換性の問題があったからだ。たとえば、WindowsマシンのPowerPointで資料を作成し、それをMacユーザーに送ると、フォントの違いやフォーマットの違いなどから、図形やグラフが崩れてしまう。意図は伝わるし使えないことはない。だが、それでも、相手がWindowsユーザーの場合にはWindowsマシンで作成し、Macユーザーの場合にMacで再度微調整をして、取引先などの相手に資料を展開していた。つまり、Microsoftユーザー同士での互換性がネットワーク効果をもたらし、同様にAppleユーザー同士での互換性がそのネットワーク効果をもたらすことで、それぞれの経済圏が構築されていた。ただ、Microsoftのほうが当時は、圧倒的に優れていたのだ。

「マイクロソフトの強力な競争力は単に機能の量によるものではない。開発者、顧客、 PCメーカーなど、エコシステム全体を巻き込むことで競争力を増幅していた。そしてこのエコシステムで最も重要だったのが、開発者である」

(引用:『ネットワーク・エフェクト 事業とプロダクトに欠かせない強力で重要なフレームワーク』アンドリュー・チェン著

 この時代のMicrosoftは、ネット企業ではなかった。だが、それでもネットワーク効果を理解しており、開発者を取り込んでWindowsのエコシステムに開発者を惹きつけ、そして、その結果、Windowsのシェアを拡大していった。

「VBを使えば、プログラミング経験がそれほどなくても自分たちでプログラムを用意できる。またプログラムを販売する会社や顧客のためにプログラムを書く小さなコンサルティング企業も誕生した。この包括的なエコシステムがウィンドウズの成長を促進したのだ。そしてこのエコシステムはウィンドウズ特有のものでOS/2やMacには存在しない。エコシステムのメリットを享受するにはここに参加するほかないのだ。また、VBはプログラムの経験が少ない人も開発者に変えたのである」

(引用:『ネットワーク・エフェクト 事業とプロダクトに欠かせない強力で重要なフレームワーク』アンドリュー・チェン著

 このMicrosoftの成功から学び、その後の、Google快進撃とApple復活劇が始まる。GoogleのAdWords/AdSenseや広告ネットワーク、YouTubeなどが、ネットワーク効果を企図しているのはあきらかだ。そして、AppleのiPhone(携帯電話事業)参入、Apple Music(音楽事業)参入とその成功が、ネットワーク効果のレバレッジのお陰であることは、説明するまでもない。特に、ソニーのウォークマンがAppleに敗れ去っていった大きな理由は、ネットワーク効果に気づいていなかったからだ。よく比較されるが、ソニーのウォークマンが製品として劣っていたわけではない。いや、どちらかといえば、優れていた。だが、勝負はそこではなく「つながり」だったのだ。

「アップルもアプリストアのアプリや開発者を所有しているわけではない。ユーチューブもクリエイターや投稿動画を所有しているわけではない。ネットワーク製品は、流通する資産を所有こそしていないが、資産との『つながり』を提供しているのだ」

(引用:『ネットワーク・エフェクト 事業とプロダクトに欠かせない強力で重要なフレームワーク』アンドリュー・チェン著)。

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Microsoftは、どうやって反トラスト法訴訟を乗り越えて復活したのか?

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2024/02/02 09:00 https://markezine.jp/article/detail/44645

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