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マーケター必読!論文のすすめ

スマート製品、ユーザーとの共創、AI活用……デジタル社会の新製品開発を考える【論文紹介】

 日本マーケティング学会が刊行する『マーケティングジャーナル』の内容を噛み砕いて、第一線で活躍中のマーケターに向けて紹介する本連載。今回のテーマは「デジタル社会の新製品開発」です。デジタル社会が新製品の開発に与える影響について、スマート製品、クラウドファンディングといった外部との共創、AI活用など、様々な論文から見ていきます。

 この記事は、日本マーケティング学会発行の『マーケティングジャーナル』Vol.43, No.3の巻頭言を、加筆・修正したものです。

デジタル社会が変える、新製品開発

 デジタル社会は、周知の通りプロモーションではSNS、チャネルではEC、価格ではダイナミックプライシングなどマーケティングのあり方に大きな影響を与えています(『1からのデジタル・マーケティング』)。では、新製品開発にはどんな影響を与えているのでしょうか。今回は、この点について最新研究をもとに紐解いていきます。

 以前の本連載(「デジタル・マーケティングを俯瞰する」)で説明したように、2000年頃よりインターネットやパソコンといったデバイスなどデジタル技術の発展や普及にともない、プラットフォームやデジタルデザインツール、消費者行動などのデジタル環境が変わってきました。より本格的には、iPhone登場の2007年頃よりデジタル社会といえる状況となり、冒頭で見たようにマーケティング全体はもちろん、新製品開発に大きな変化を与えているのです。

 こうしたデジタル社会の新製品開発に関わる変化は、「製品そのものの変化」と「製品開発手法の変化」に、大きくは整理できます(図1参照)。

図1:デジタル社会の新製品開発の枠組み(Kannan and Li(2017)の図1を参考に著者作成)
図1:デジタル社会の新製品開発の枠組み(Kannan and Li(2017)の図1を参考に著者作成)

製品そのものの変化

 「製品そのものの変化」としては、「デジタル財」「スマート製品」の2つがあげられます。「デジタル財」とは、物理的なカタチのある有形財としての製品ではなく、アプリケーションやゲームなどのソフトウェアをはじめ、音楽や映画などのコンテンツ、天気予報やニュースといったデジタル情報で提供される無形財である製品のことです。

 「スマート製品」とは、スマートフォンやスマートスピーカーといったネットにつながる小型パソコンが内蔵された製品といえるものです。技術の国際的展示会であるCESでは、ここ数年このスマート製品が基盤となった提案が多く見られます。多くのメーカーが、製品カテゴリーの垣根を超えて連携するスマート製品を提案することがトレンドになっています。

製品開発手法の変化

 一方「製品開発手法の変化」としては、「デジタル設計」「外部との共創」「AI・生成AIとの共創」の3つが挙げられます。まず「デジタル設計」とは、CAD(コンピュータ支援設計)や解析パッケージなどのデジタルデザインツールを使った開発手法のことです。

 次に「外部との共創」とは、外部企業と共創するオープン・イノベーションをはじめ、多数のユーザーと共創するクラウドソーシングなどの手法のことです。最後に「AI・生成AIとの共創」とは、ChatGPTやStable Diffusionなどの生成AIなどと共創する手法のことです。

 こうした大きな変化は、デジタル社会以前は見られなかった現象で、いかに新製品開発に対してデジタル社会の影響が大きいかを物語っています。

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この記事の著者

西川 英彦(日本マーケティング学会 会長)(ニシカワ ヒデヒコ)

法政大学経営学部・大学院経営学研究科 教授 博士(商学)
1985年ワールド入社、2001年ムジ・ネット取締役、2004年神戸大学大学院経営学研究科 博士課程後期課程修了、2005年立命館大学経営学部准(助)教授、2008年同教授を経て、2010年4月より法政大学経営学部・大学院経営学研究科 教授(現職)。2006年よりブランド・ジャパン企画委員(現職)、2012年より日本マーケティング学会常任理事、2015年より法政大学大学院経営学研究科長、株式会社ユナイテッドアローズ社外取締役、株式会社碩学舍 代表取締役(現職)、マーケティ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/03/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/44998

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