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成功への近道はなかった!? フィジタルのグローバルレベルでの定着

 NRF(全米小売業協会)が開催する世界最大規模の小売の祭典「NRF Retail's Big Show APAC 2024」がシンガポールで2024年6月11日~13日の3日間にわたり開催された。世界約52カ国8,000人以上が参加し、238社を超えるテック企業や小売企業によって様々なセッションや製品・サービス展示が繰り広げられた。参加者の日本人割合はシンガポールに次ぐ第2位(約10%)で日本企業も大注目のイベントであった。本連載では本イベントの主要セッションや展示の様子と、複数のブランド旗艦店舗を実際に筆者が訪れた体験から、小売業界へのヒントをお伝えする。

イベントテーマは「成功への近道!」

 2024年1月、今年もNRF Retail's Big Show2024がニューヨークで開催された。イベントテーマである「Make it Matter」(企業にとって、顧客にとって重要な価値とは)は、民主化されたテクノロジーによるサービスのコモディティ化に対する課題提起とも解釈できる。そのような中、同年6月シンガポールでNRF APAC2024が初めて開催された。

 東南アジアの小売市場は年平均成長率6%で成長しており、2025年には約160兆円にものぼるだろうと予測されている。その成長の大半はeコマースが牽引しており、小売のオンライン市場は年率23%の高成長市場である。実店舗とeコマースのシェアが大きく変わろうとしている今、あらゆる規模の小売業でデジタル化が進んでいる。生活者へのテクノロジーの浸透と、リテールテックプロパイダーへの需要が同時におこっている東南アジアはリテールの最先端を語るべき第2の場所として最もふさわしいと言えるだろう。

 NRF APAC2024のテーマは「Fast Track Your Success!」(成功への近道)、流動的かつ成長市場のど真ん中のシンガポールだからこそ、様々な知識やテクノロジー、そして人が交わり、まさしく小売のエコシステムを体現するイベントの開催となった。

 セッションでは、AEONグループ、Amazon、Coca-Cola、Domino's Pizza、Fast Retailing(UNIQLO)、Hermès、Mastercard、Moët Hennessy、Nike、Puma、Pan Pacific International Holdings Corporation(DON DON DONKI)、7-Elevenなど、名だたる企業が登壇。業界リーダーたちが、オムニチャネル、持続可能な活動(エコシステム)、AI活用、データ活用やリテールメディア、理想の体験設計に至るまで、多岐にわたるトピックについて知見を披露した。

 本稿ではNRF APAC2024のセッションおよびエキスポ(ブース展示)から見えてきたポイントを次の5つに絞ってお伝えする。

  1. ローカル・イノベーションによる価値の最大化
  2. 最新テクノロジーはPoCから実用フェーズへ
  3. 企業を横断した顧客データ統合の動きが活況
  4. 成長を加速させる組織文化と人材育成の在り方
  5. フリクションレスは前提に、ブランドの世界観を表現する体験設計

ポイント①:ローカル・イノベーションによる価値の最大化

 サービスがより生活者に支持されるためには、地域の文化や特性に合わせたトランスフォーメーションが必要だ。たとえば日本でおなじみのセブン-イレブンやドン・キホーテは、アジアの外食文化に合わせて店舗の在り方を工夫している。Moët Hennessyも同様に現地の文化を尊重した空間設計やイベントを各国で開催している。

 また同国内のスーパーマーケットであったとしても、エリアに合わせたデザインや商品展開、体験のための工夫をすることでまったく違う趣となり、地元に密着したものとなる。

 AEONのセッションでは「エリア(地方)」という意味の“ローカル”だけでなく、「小規模マーケット」という意味での“ローカル”についての可能性についても言及されており、地方かつ小規模であるからこそ、よりユニークでAEONらしい価値を提供できる、というものだ。

ポイント②最新テクノロジーはPoCから実用フェーズへ

 2024年1月のNRF2024と比較し、テクノロジーに焦点を当てたコンテンツは減少傾向にあった。NRF APAC2024で取り扱われたテクノロジーは機能の進化はあるものの、従来からあるものの「導入による成果お披露目」「新たな課題提示」という意味合いを強く感じた。(テクノロジーの例:AI、RFID、セルフレジ、XRなど)これはテクノロジーを活用したサービス群が市場として普及期に入り、サービスの洗練化とともに提供価格の低廉化が進んだからと言えよう。

 またインストアのリテールメディア(サイネージや電子棚札など)については店舗の基本機能として実装されるケースが増えたため、ただあるだけではなく、そこでの表現や企画でコンテンツのユニークネスを発揮する必要がある。

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この記事の著者

岡本 静華(オカモト シズカ)

電通デジタル トランスフォーメーション部門トランスフォーメーション事業部 マネージャー
コマース会社の設立・経営後、2017年に電通デジタルに入社。顧客体験設計のプランニングを中心としたDXコンサルティング業務に従事。リアル店舗を保有する企業のDX戦略策定から、顧客視点・従業員視点に立脚した体験価値の構築まで幅広く実行。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/02 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46255

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