※本記事は、2024年9月刊行の『MarkeZine』(雑誌)105号に掲載したものです
Oracle、4,000億円超の投資を償却へ
米国Oracleは、2024年9月30日をもってグローバルでの広告事業を終了することを発表した。日本国内のメディアではあまり取り上げられていないので、ここで初めて本件を知ったという読者もいるだろう。
Oracleは、自社のマーケティング・プラットフォームに付加価値をつける目的で、10年以上にわたり合計4,000億円以上(約30億ドル、当時の為替レート換算)を広告事業のM&Aに投下してきた。その事業領域を終了するという決意に敬意を表し、その背後にある文脈を紐解きたい。
Oracleの基幹ビジネス(本業)であるエンタープライズ・クラウドは、健全かつ好調を維持しており、企業価値は約60兆円(約4,000億ドル/1ドル150円換算)に伸長、過去10年で約3倍に成長させている。
つまり、撤退する広告事業はOracleにとっては、すずめの涙程度の規模。BtoBの基幹システムを担うOracleからすると、プログラマティック広告は「あやふやなデータ」としての価値しか持たない小さなエコシステムであり、本業の足を引っ張ると見切りをつけた形だ。
一方、アドテク界隈では、Oracleが手放す可能性のある現・広告事業の「(割安での)引継ぎ」を巡る競争や、「ポストCookieに備えた代替の必要性」を訴えるベンダー側のアナウンスがしばらく続くだろう。Oracleの撤退にタイミングを合わせたかのように、Googleによる「Cookie廃止の撤廃」がアナウンスされた。