※本記事は、2025年1月刊行の『MarkeZine』(雑誌)109号に掲載したものです
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広告エージェンシーに求められる「営業」の再構築
2025年、広告エージェンシーにとって最大のテーマは「営業」となるでしょう。広告エージェンシーに求められる役割が変化していく中で、「広告会社の営業とは何か?」を改めて考え直さなければならない時が来ています。つまり、広告枠を売るだけでは生き残れなくなってきた時代に、何をどのように扱うのかが問われているのです。
電通は以前からフロント営業のことを「ビジネスプロデューサー」と呼んでいて、これには先見の明があったと言えます。私は、これからの広告会社の営業パーソンには、提案の中身ではなく「ビジネスをどう作るか」で勝負していくことが求められると考えています。
2025年以降、広告会社とコンサルティング会社の領域はますますオーバーラップしていくはずです。営業パーソンはアカウントコンサルタントの概念を導入し、自分たちの利益をコーディネートする必要があります。「うちは〇〇専門の代理店だから」と線を引かずに、何を売るかまで営業が提案してよいのです。そこには、平場での情報収集や顧客との関係構築も必要になってくるでしょう。
たとえば、大きな提案をする際に顧客のオリエンどおりに作るのは愚の骨頂。誰が決裁者で、競合他社はどこで、何番目にプレゼンテーションするのか……といった提案内容の「周辺」を固めておくことが大事です。顧客に交渉して望ましいプレゼンの順番を引いてくることも、営業の一つの役割。そのために、日ごろからお客様と対話し、情報の引き出しを持っておくのです。
フロントである営業パーソンが「新しいビジネス」を開拓できるか
今後の広告エージェンシーにおいて、こうしたフロントの動きが鍵となる背景には、生成AIの台頭があります。バックエンド側のクリエイティブは生成AIでいくらでも生み出せるようになる。その一方で、お客様とインターフェイスするフロント業務というのは、AIに簡単に取って代わられることはないでしょう。逆に言えば、フロントの強さこそが勝負の決め手となり得るわけです。
営業が提案を振り返るレビューをする際には、提案内容の振り返りに充てる時間は2割だと考えてください。そこに向けて顧客の誰と接触したか、どういう情報を得たかといった「提案の周辺」の振り返りに8割を割くべきです。
提案の中身はなんでもアリの時代です。広告だけでなく、ITシステムや「仕組み」を売ることも考えられます。売りもの自体が広がっていくからこそ、それを採用してもらうための営業の知恵や素質が、今後はより一層問われるのです。
フロントである営業パーソンが新しいビジネスを開拓できるか、提案の方向性をリードできるかが、これからの広告エージェンシーの勝ち筋になるでしょう。