※本記事は、2020年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』58号に掲載したものです。
データを武器に憧れの業界へ
ユニバーサルミュージック合同会社 Marketing Hub 渋谷真理子(しぶや・まりこ)氏
新卒でBtoBの大手デジタルマーケティング会社へ入社後、新設のデータコンサルチームに配属。Web解析ツールの営業やECサイトのディレクター、コンサルタントなどを経て、大手音楽会社へ。当時サービスを開始したばかりの動画配信サービスのデータ分析担当の後、アーティストのプロモーション支援など、データを用いた様々な業務に携わる。その後ファッションWeb通販会社に転職、ユーザー分析業務を担当。2019年よりユニバーサルミュージックのMarketing Hubへ。趣味はヨガ。
――これまでのキャリアを教えてください。
大学卒業後、新卒でBtoBのデジタルマーケティング会社へ入社しました。ちょうどデータドリブンマーケティングが注目され始めていた頃で、その立ち上げの部署に配属され、初めての仕事はSite Catalyst(現:Adobe Analytics)の営業でした。その後、ECサイトのディレクションや、データコンサルタントとして外部の企業へ常駐も経験しました。6年ほど在籍しましたが、データ分析手法や資料作成などの基礎はもちろん、お客様とのコミュニケーションや仕事への向き合い方に至るまで、多くの尊敬する方々に囲まれてビジネスの基盤をしっかりと学ばせていただきました。その一方で、大学では表現や芸術を学んでいたことから、エンタテインメントビジネスへの憧れが強く、いつかはそこで仕事をしたいとチャンスをうかがっていました。
そんなとき、動画配信サービスが流行り始め、「データに向き合ってきたキャリアが活かせるのではないか」と、動画配信サービスを立ち上げたばかりの音楽会社に転職し、そのサービスのデータ分析を担当。その後は全社横断のデータ分析チームの立ち上げや、アーティストの活動をデータ面から支援する業務を担当しました。そのうちに、もっとデータ活用の根幹に関わりたいと考えるようになり、ファッション関連のWeb通販会社へ転職しました。お客様の体型データを基に、一人ひとりに合ったサイズの洋服を提供するサービスに携わり、本格的なビッグデータ分析を経験しました。その後ユニバーサルミュージックで、再び音楽に関わる仕事をしています。
ユーザーとアーティストをつなげるハブとして
――現在のお仕事の内容を教えてください。
2019年1月に新設されたMarketing Hubというチームで、洋楽に関する各データを分析し、アーティストのプロモーションやSNS、デジタル配信の施策を決定するためのデータなどを提供しています。ミッションは、大きく2つです。1つ目は、BIツールを使い、作品やアーティストのデータや目標に対する達成率、音楽ストリーミングサービス各社でのシェアなどKPIを可視化し、担当者が常に確認できる状態を整えています。2つ目は、プロモーション施策のデータ検証です。たとえばストリーミングの場合、音楽を聞いているユーザーのデモグラフィックがわかります。また、聞いている時間帯や、アルバムのどの曲が人気なのかも見えてきます。これらは、CDの販売データでは取れなかったデータです。
データがあると、事象の要因の掘り下げをより細かく分解できたり、市場を客観的に見たり、広告の検証ができたりと、「次にこれをやろう」とアクションの意思決定につなげられます。現状、ほぼすべてのプロモーション施策がデータ主導で立案されており、エンタメ業界でもデータドリブン思考が定着してきたように思います。また、音楽業界は、業界内での転職が多い業界でもありますが、Marketing Hubはゲームや広告など他業界の経験者が多く集まり、ユーザーとアーティストをつなげる「ハブ」として、それぞれのキャリアを活かしています。