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データ活用は戦略策定から。インキュデータが気づいた「想定外なDXの課題」と6社のDX事例

業種業界が異なる6社のDX事例

 講演の後半では、インキュデータが支援しているDXの事例が紹介された。小売、メーカー、生命保険、飲食業など業種も業界もバラバラな6社の事例は、「データ活用の目的設定の重要性」を示唆するものだった。

【1】ドラッグストアは、データ統合によりデジタル施策の自動化を実現

 関口氏が1つ目に紹介したのは、「ドラッグストアの販促施策のデジタル化」を支援した事例だ。

 ドラッグストアの業界は、全体的にOMO施策を積極的に推進している傾向があり、SNSや自社アプリなどデジタル上の顧客接点を持っている企業が多い。また、扱う商品の点数も多いため、商品データや店舗での購買データは膨大な量になる。こうした背景があり、事例企業は、リアルとデジタルで大量に蓄積されたデータの分散と活用に悩んでいたそうだ。さらに、販促施策としてチラシを制作したり、外部のポイントサービスを使用したりもしており、販促施策のコストやSNS運用工数の課題もあったという。

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 そこで、インキュデータでは「データの統合」と「デジタル販促メニュー」の推進をサポート。最終的には、MAとの連携による販促施策の自動化と効率化を目指している。

 「この事例のポイントは、販促施策の自動化による工数削減にあります。人件費の削減はもちろん、詳細なレポーティングが降りてくることで、社内での情報収集もかなりスピーディーに行えるようになってくる。最終的には大規模な量販店においても、一瞬で顧客の状況や売り上げの状況を可視化できるようになってくるのではないかと考えています」(関口氏)

 実際に、統合したデータからロイヤリティを分析し、離反防止・クロスセルを促進することを目的にカスタマージャーニーを設計。これにより、ビジネスの拡大およびマネタイズというデータ活用のゴールにつながるという成果もひとつあったそうだ。

【2】カシオは「購入プロセスの可視化」を実現

 また、顧客データの統合に関連した事例として、カシオ計算機(以下、カシオ)の事例も紹介された。

 カシオのデータ活用の目的は、「顧客の購入プロセスの可視化」と「マーケティング、サービス開発への反映」。購買データ、流通データ、顧客データと様々な情報が散乱しているために「顧客が見えづらい」という課題を抱えていたという。これに対し、インキュデータがまず行ったのは、データを統合できる基盤の構築だった。そして現在は、顧客のホット度合いやロイヤリティをスコア化、MAを導入してone to oneマーケティングを行うなど、ユーザデータを起点とした施策を展開するまでに至っている。

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【3】世界文化社は、デジタル会員基盤を構築し新たなビジネスを創出

 続いて紹介されたのは、DX待ったなしの出版業界にある世界文化社の事例だ。紙媒体を中心としたビジネスから、デジタル会員基盤を活かした新しい広告のビジネスモデルを創造する――その変革をインキュデータがサポートしている。

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 「ポイントとなったのは、顧客データを活用できる状態にすることでした。顧客の状況に応じてセグメント別の配信をする、精度の高い広告配信を行えるようにすることで、新たな広告商品、新しいビジネスに繋がります。我々は、DX支援においては、データを活用してビジネスのマネタイズを実現するところまでが重要だと考えています」(関口氏)

【4】東急不動産は、データ統合により事業間連携を強化

 もう1つ、データ活用によるマネタイズの事例として、東急不動産との取り組みも紹介された。

 ショッピングモール、マンション、オフィスビルなど様々な商業施設を保有している東急不動産は、その事業も多岐にわたる。このため、それぞれの施設や事業でデータが散在してしまっている状態だった。そこで、それらのデータを統合する基盤を構築。データ連携を起点に事業間の協業を促進することで、競合との優位性を高めていくことを目指している。

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 「データ統合により事業間連携も実現できる、というのがこの事例のポイントです。多数の事業を展開する大企業にとって、事業間連携の促進は、非常に重要なテーマであると思います。我々も様々な事業を展開している企業のコンサルティングでは、それぞれの事業で保有しているデータを統合していく過程で、新たなニーズを発見したり新規ビジネスを開発したりできないか探るように意識しています」(関口氏)

【5】生命保険会社は、営業・個客コミュニケーションをDX

 5つ目に紹介されたのは、ある生命保険会社の事例だ。

 生命保険業界は、この数年、DXのスピードが加速化している。これは、コロナ禍で対面での営業活動が難しくなっている中で、いかにデジタル上でリードを獲得・育成していくかが強く問われるようになっているからだ。

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 インキュデータの支援する事例企業は、まずはデジタルの世界で契約金額の小さい商材でリードを獲得。そこからアップセルを図る形で、対人によるone to oneの個客コミュニケーションを行っていく流れで、一連の顧客接点を創出している。デジタルとリアルの両方を有効に活用して、個客コミュニケーションを最適化している点がポイントだ。

【6】日本ケンタッキー・フライド・チキンのCDP構築

 最後に紹介されたのは、大手外食チェーンである日本ケンタッキー・フライド・チキンの事例。外食業界は、特にコロナ禍以降、店舗、テイクアウト、デリバリーなどチャネルが非常に多様化し、データもサイロ化しがちだ。顧客の定期的な利用を促すためのマーケティング施策が重要性を増す中、それぞれの顧客に最適なCRM施策を行うため、インキュデータがCDP構築をサポートし、様々なチャネルで得た顧客データを分析・施策に活かせる基盤を構築した。顧客の嗜好や利用頻度に合わせて配信チャネルやメッセージをパーソナライズし、クリスマスなどイベント時の利用だけでなく、日常的な利用を促進しロイヤリティを高めているという。

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DXの先に「CXの向上」を見据えて

 インキュデータのコンサルティングサービスは、“伴走型”であるところに特徴がある。企業の課題や希望によっては、クライアントの社内に入り込みDXのチームを構成。戦略策定から施策の実行までを一貫してサポートし、最終的にはクライアント企業が自走できるまで組織や人材の育成も目指す。

 また、プロジェクトの円滑な進行をサポートする目的で、ワークショップを行うこともある。たとえば、リアル店舗を持つ企業の場合は現場(店舗)にDXの課題があるケースが多いが、アンケートで課題を抽出するのはなかなか難しい。そこで、DXに関わる社員とインキュデータのプロジェクトメンバーが集まり、課題の認識からDXでの目的までをプロジェクトに関わる全員で共有できるよう、ワークショップの機会を設けるそうだ。

 インキュデータが、クライアント企業のDXの先に見据えるのは「CXの向上」。多様なデータから「個客」を識別し、一人ひとりに合った顧客体験を提供していくことが最終的には重要となる。関口氏は、最後に次のように話し、講演を締めくくった。

 「DXも最終的にはCXの向上を実現すべきと考えていますが、そのために重要なのは、やはりカスタマージャーニーです。インキュデータでは、顧客体験を“点”ではなく“線”で捉え、どのようなアプローチが顧客の購買行動に作用しているかを見極めてユーザストーリーを描いた上で、マーケティングの戦略設計を行います。顧客体験の向上や戦略設計に課題があれば、ぜひ我々にご相談いただければと思います」(関口氏)

データ活用による企業の変革を支援

インキュデータはソフトバンク・博報堂・トレジャーデータの3社により設立され、顧客データを起点にデジタルトランスフォーメーションを支援しているプロフェッショナル集団です。インキュデータが手がけたDX事例や顧客データ基盤の構築事例、業界別最新マーケティング事例などを資料で公開しています。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/40096

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