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マッシュがアプリ刷新で導いた“最適解”。TENCOで実現した多様なユーザーに寄り添う“発見体験”

 機能や価格だけでは差別化が困難な時代、企業がユーザーに選ばれ続けるためには、ブランドが持つ思想や独自性を「体験」としてどう表現するかが重要になっている。「SNIDEL」「gelato pique」「Cosme Kitchen」など、多様なブランドを展開するマッシュグループでは、世界観もカテゴリ構造も、顧客による商品の“探し方”もブランドごとに異なり、従来型アプリ開発ではその表現や導線設計が課題に。ユーザーの目的や文脈に寄り添いながら、ブランドの独自性を損なわずに“発見体験”を提供することを目指し、企業の思想をUI/UXへ翻訳する思想駆動型SaaS「TENCO」を導入。アプリ体験を次のステージへと進めている。本稿では、先行した「USAGI ONLINE」での成功を経て、基幹アプリ「MASH STORE」のリプレイスに踏み切った背景と共創プロセスを紐解く。

世界観と体験を両立するための「MASH STORE」刷新

──マッシュグループは多くのブランドを展開しています。それらの世界観に対する考え方を教えてください。

今井:マッシュグループでは「SNIDEL」「gelato pique」「FRAY I.D」「Cosme Kitchen」など、ファッション・ビューティー・ライフスタイルを横断して50ブランドを展開しており、「MASH STORE」ではファッション・ビューティーを中心とした36ブランドを展開しています。特徴は、各ブランドがコンセプトに基づいて完全に独立した世界観と物語性を持っていることです。フォント1つ、色味1つ、写真の温度感まで“そのブランドらしさ”が宿っており、世界観を壊さないことを非常に大切にしています

 さらに、ブランドごとに世界観が異なるだけでなく、カテゴリ構造やユーザーの“探し方”もまったく違います。たとえば「SNIDEL」と「Cosme Kitchen」ではカテゴリの階層も目的も異なり、個別の企画や特集、横断コンテンツが存在する。そこに「WOMEN/MEN/BEAUTY/LIFE STYLE/FOOD」といったタイプ軸も重なり、多層構造の複雑性が生じているのです。

 ブランドの世界観を好むファンの方ほど、余計な情報が混ざると“ノイズ”を感じやすく、ブランド単体の文脈で商品を見たいというニーズも強くなる。一方で、複数ブランドを横断して新しい出会いを楽しむユーザーもいます。この相反するニーズをユーザーに押し付けず、 世界観を壊さずに、自然な“発見”につなげることが、マッシュのアプリ体験における最重要テーマでした。

株式会社マッシュスタイルラボ EC事業本部 MASHストア運営部 兼 DX・システム部 部長 今井 貴大氏

2011年に株式会社マッシュスタイルラボに入社。「gelato pique」などの営業部長を務めた後、2021年よりEC部門へ異動し、ファッションブランドのオフィシャルサイト運用責任者として従事。現在はシステム開発、マーケティング全般を統括しており、公式アプリ「MASH STORE」の刷新プロジェクトにおいて指揮を執る。

──今回、公式アプリの「MASH STORE」をリプレイスした背景には、どのような課題があったのでしょうか。

今井:「MASH STORE」はコロナ禍の2022年にパッケージ開発でスモールスタートしたのですが、当時の環境では求めていることに対して十分に対応し切れませんでした。フォントやグラフィックをブランドに合わせて調整できない、カテゴリ構造を柔軟に変えられないなど、どうしても“画一的なアパレルECのUI/UX”に寄ってしまい、ブランドごとの個性を十分に表現しきれない部分があったのです。

 また当時のアプリはブランドトップから商品一覧、詳細ページまで多くがWebビューで構成されており、画面遷移のたびに読み込みが発生していました。そのため、ブランドの世界観に浸っているお客様の体験が途切れやすく、アプリとしての“触り心地”を十分に表現できない状態だったのです。

 ブランドの世界観を壊さず、ユーザーが自分の文脈に合った形で自然に“探しやすくなる”アプリへ進化させたいという思いから、リプレイスを決断しました。

──なぜ「TENCO」は、これらの複雑な要件に対応できるのでしょうか。

中村:マッシュグループ様のブランドは、それぞれが主役であり、ターゲットも、好まれるグラフィックも、ニュアンスも全く異なります。

 この多様性を1つのアプリの中で自然に共存させるには、ブランドの思想や顧客体験の前提を理解し、設計やデザインに翻訳することが不可欠でした。

 TENCOは、従来の「テンプレに事業を合わせる」発想ではなく、企業の思想・CX・収益構造を理解し、プロダクトを“事業に合わせて進化させる”思想駆動型のアプローチを採用しています。同じ基盤を使っていても、見た目も導線も機能も企業ごとにまったく違うアプリになるのはそのためです。

 今回のプロジェクトでは特に、“マッシュ様のその先にいるお客様”がどんな気持ちでアプリを開き、どんな発見があれば「また開きたい」と思っていただけるのか、PMもデザイナーもエンジニアも、そこを最も大切にしながら進めました。その視点があったからこそ、ブランド横断の複雑な構造やシステム連携の難しさを紐解き、多様な要件にも柔軟に対応できたと感じています。

株式会社CORIN 代表取締役 中村 聖子氏

3ヵ月の要件定義が導いたマッシュにとっての“最適解”

──開発にあたり、要件定義を非常に重視されたそうですね。

「MASH STORE」のトップ画面イメージ(クリックすると拡大します)

今井:まさにそのとおりで、毎週3時間、約3ヵ月にわたって綿密に打ち合わせました。私たちが届けたい顧客体験についてビジョンをお伝えし、CORINさんには具体的な機能やデザインに落とし込んでいただく往復を何度も繰り返しました。

 要望間の整合性やブランド間の距離感、世界観の温度まで細かく検証しながら、実現が難しい機能でも「こうすれば実現できます」と、必ず代替案を提示してくれたのが印象的でした。

中村:対話の中で「ブランド間を回遊してほしいが、各ブランドのファンにとって、他ブランドのアイテムやカテゴリはノイズになる」という課題もいただきましたね。

今井:そうなんです。たとえば、「gelato pique」の世界観に浸りたい方にとっては、他のファッションブランドの情報が混ざると“温度が変わってしまう”んですよね。同様に、「gelato pique」の子ども服やペット用品が、「Cosme Kitchen」などのビューティー系を検索中の方に表示されると違和感になります。

中村:そこで7つのユーザータイプにあわせて、マッシュ様と一緒にそれぞれにとって自然な“発見導線”を設計しました。

  1. ブランドの世界観に浸りたいファン:ブランド軸の発見
  2. 目的買いの方:最短距離で辿り着けるカテゴリ軸
  3. 複数カテゴリを横断する方:生活文脈でのタイプ軸
  4. 新規ユーザー:世界観の入口となる企画・特集軸
  5. ブランド横断の新しい出会いを求める方:距離感を設計した横断導線
  6. セレンディピティを楽しむ方:AIが文脈×行動×世界観で提示する“偶然のような必然”
  7. 日常的に回遊するファン:天気やリズムに寄り添う“毎日の新しい発見”

 この7つを1つのアプリの中で自然に共存させるために、「ブランド単独ページ」と「発見サーチ」という2つの入り口を設計しました。

今井:ブランド単独ページは、ファーストビューのロゴから遷移し、ランキング・ニュース・カテゴリなどを“そのブランドの温度”で統一しています。「gelato pique」だけを見たい方は、最初からそこに飛べる。ノイズがなく、世界観に浸ったまま買い物ができるんです。

“揺らぎのない世界観”と“揺らぎのある発見”を両立

──もう1つの入り口であるサーチ機能では、どのような体験を重視されたのでしょうか。

今井:お客様のセレンディピティ(偶然の発見体験)にこだわりました。たとえばデニムジャケットが欲しい方がアプリを開いた際、目当ての服が品切れだと、通常は離脱してしまいます。

 そこでAIが行動履歴や閲覧履歴から「肌寒いときに羽織る上着が欲しい」という潜在ニーズを分析し、パーカーやブルゾンをパーソナライズして提案する。「このアイテムも良いかもしれない」と気づける仕組みを実装しました。

 実はこのAIレコメンドは、ブランド専用ページでも新たな体験を生みます。検索しなくてもパーソナライズされたアイテムが提案されることで「なんとなく滞在する」空間を目指しました。

AIレコメンドの表示画面イメージ(クリックすると拡大します)

今井:これは、マッシュグループの長期的なファンを増やすことにもつながります。というのも、マッシュグループのブランドは、ライフステージの変化と密接に関わっているのです。10代~20代前半に「SNIDEL」や「LILY BROWN」を着ていた方が、社会人になって「FRAY I.D」を手に取り、ママになるとカジュアルで実用的な「Mila Owen」を選ぶ、といった具合です。

 今すぐには響かなくても、アプリに滞在する中で別のブランドを発見し、将来的に想起してもらう。それもサーチ機能の狙いです。

 ほかにも、毎日ログインしたくなる「ガチャ」、実店舗の回遊を図る「スタンプ機能」など、我々が目指す「毎日アプリを開きたくなる顧客体験」を具体的なUI/UXに落とし込んでいただきました

「ガチャ」「スタンプ機能」の表示イメージ(クリックすると拡大します)

中村:商品詳細ページや天気に合わせたコーディネートを提案する「MASH WEATHER」もフルネイティブ化し、お客様がストレスを感じない触り心地を追求しました。画像を押した瞬間に詳細が出るスピード感や、一覧に戻るアニメーションの滑らかさなど、世界観を意識して細部まで作り込みました。

今井:アイコンの配置などの微調整にも真摯で、デザイナーの方がその場で即座にビジュアル化してくれるスピード感には驚きました。

中村:ご要望の鮮度を重視しているので、リアルタイムな対話を意識しています。言葉では伝わりきらないニュアンスも多いため、すぐにデザインへ落とし込んで、視覚的な共通言語を作るよう心掛けました。

今井:3ヵ月の要件定義を経て見えてきた“最適解”は、「多ブランド・多カテゴリ・多文脈を、ユーザーの文脈に合わせて自然に切り替わる体験として共存させること」でした。ブランドの世界観を壊さず、でもブランドの壁を越えた新しい出会いも生まれる。目的買いの方には最短距離で、世界観を楽しみたい方にはその温度のままで。その“揺らぎのない世界観”と“揺らぎのある発見”を両立させたことが、今回のリプレイスで導いた最適解だと思っています。

DL数43万超。「USAGI ONLINE」開発の手応え

──「MASH STORE」のリプレイスより前、すでに「USAGI ONLINE」のアプリ開発においてCORINのアプリ開発パッケージ「TENCO」を採用していたとうかがいました。

渡辺:「USAGI ONLINE」は他社のブランドやビューティーブランドも扱うため、ブランドの世界観とモールならではの買いやすさの両立に難しさがありました。そこへマッシュ公式アプリ「MASH STORE」がリリースされ、ブランドファンがそちらへ移行したことも重なり、新規顧客との接点創出と、「USAGI ONLINE」そのもののファンづくりが課題となったのです。

株式会社ウサギオンライン USAGI ONLINE事業本部 部長 渡辺 健太郎氏

2011年に株式会社マッシュスタイルラボに入社し、EC部門に配属。2013年のオンラインデパート「USAGI ONLINE」の立ち上げから一貫してECの企画・運営に携わる。デジタル顧客接点の設計やアプリを活用した新規獲得に取り組み、現在はウサギオンライン全体の現場責任者として事業を統括する。

渡辺:その打ち手としてアプリ開発を決め、スクラッチとパッケージのハイブリッド開発ができるCORINさんにお願いしました。

「USAGI ONLINE」アプリのイメージ(クリックすると拡大します)

──「USAGI ONLINE」のアプリではどういった点にこだわったのでしょうか?

渡辺:お客様アンケートで「商品の探しやすさ」を求める声が多かったため、検索のしやすさと購入動線を短縮した設計にこだわりました。

購入導線のイメージ(クリックすると拡大します)

中村:導線設計に加えてデザイン面では、ターゲット層が広いため、特定の好みや年代に偏らないデザインを意識しました。同じピンクでも「これはUSAGIのイメージと違う」といった議論を重ね、細部まで調整したのです。

──こちらのアプリ開発も柔軟性が必要だったように感じますが、特に苦労された点はありますか?

渡辺:そもそもマッシュグループはサイトごとに開発ベンダーが異なり、会員ID基盤は共通、というあまり他社にはない環境で、アプリ開発では各所を取りまとめなければなりません。そこを理解し、ハブとして連携・開発を進めてくれたCORINさんは本当に頼もしかったですね。

──アプリ開発により、どのような成果がうまれましたか?

渡辺:アプリは現在43万DLを超え、直近のキャンペーンでは購入者の48%がアプリ経由でした。アプリを使用した購買体験の増加やまだファンではない新規のお客様を引き込む、最適な入り口になっていることを実感しています。

また、リリース前はマッシュグループのブランドへの依存度が高かったのですが、現在はUSAGI独自の横断施策が増え、サイトとアプリの役割分担や多様な体験の提供が進んでいるのも良い傾向です。

チャネルを超えてファンを作る。次世代の顧客体験を紡ぐ共創

──店舗×EC×アプリを通した顧客体験について今後の展望をお聞かせください。

今井:3つのチャネル間の回遊を促進したいですが、「店舗が何%」という比率にはこだわりません。お客様が買いやすいことが一番ですから、「どのチャネルでも快適にマッシュグループのブランドの服を買える」状態を目指したいと思います。

 各ブランドの個性が際立つ一方で、グループ全体の共通する「トンマナ」のファンになってもらえれば、長く愛していただける。「MASH STORE」をそのきっかけにしたいですね。

──今後、ブランドの世界観をアプリ体験へとアップデートしていくうえで、CORINとどのような共創を目指されますか。

今井:今回の「MASH STORE」のリプレイスがゴールだとは考えていません。時代やニーズに合わせて、永遠に改修を重ねていくものだと思っています。

 今後、AI技術が積極的にUXへ取り入れられる中で、お客様のニーズを深掘りし、最適な技術でスピーディーな改善を繰り返したい。引き続き、CORINさんの力を借りながら進めていきたいですね。

渡辺:私たちが独自に提供できる購買体験や価値を突き詰めたいですね。変化するニーズを捉えてサービスに反映する過程で、CORINさんのテクノロジーの力を借りながら、二人三脚で新しいアプリ体験を模索していきたいです。

──CORINとしては、マッシュグループが描く未来のビジョンに対し、今後どのように伴走し、提供価値を進化させていきますか。

中村:マッシュグループ様は、いち早くテクノロジー導入が進むアパレルEC領域でその進化を牽引しており、日本のデジタルマーケティングやOMOのリーディングカンパニーだと認識しています。単に今ある機能を届けるのではなく、“次の当たり前になる体験”を一緒に育てていくことが、これからの伴走だと考えています。

 お客様の利便性や楽しさは、時代とともに変わっていきます。その変化を先回りしながら、マッシュ様らしい新しさを、TENCOのパッケージとして形にしていく。それは、機能やデザインを足していくだけではなく、「次はどんな体験が喜ばれるのか」「どんな世界観がマッシュ様らしいのか」といった“未来の問い”に、一緒に向き合い続けることだと思っています。

 これからも、マッシュ様の“次の一歩”をともにデザインし、お客様に新しい発見と楽しさを届け続けられる存在でありたいと考えています。マッシュ様の未来の意図を“翻訳”しながら、 次の当たり前を一緒に作っていく。それがCORINが目指す伴走の形です。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社CORIN

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/07/15 12:00 https://markezine.jp/article/detail/50839