「初めてのBtoBマーケティング」で直面する課題
――現在手掛けられている業務についてお聞かせください。
堀本:私は2021年4月にオープンワークに入社し、マーケティングユニットという部署を統括しています。それ以前は社内にマーケティングの部署がなく、事業成長していくために新たに部署を作るということで、社長の大澤から声がかかってジョインしました。
大内田:メディックスは、Webの広告代理店です。主にBtoBの企業を支援する部門とBtoCの企業を支援する部門があり、我々は前者です。15年以上前からBtoBに特化したマーケティング支援を行ってきたところが特長です。私がマネジャーで福田、矢嶋、上間の3人はアカウントプランナーです。
――オープンワークの事業はどのようなものになりますか。
堀本:2007年の創業当時から社員・元社員による企業のクチコミプラットフォーム事業を行ってきました。加えて5年ほど前から、「OpenWorkリクルーティング」というリクルーティングサービスも展開しています。
競合では転職を考えている顕在層のユーザーがほとんどですが、クチコミサービスはいつか転職をしたいと思っている、機会があれば転職しても良いと考えているといった潜在層にも利用されているため、そういった方々と出会えるユニークなリクルーティングサービスです。
――マーケティングに力を入れることになった背景を教えてください。
堀本:クチコミプラットフォームは、クチコミによってユーザーを獲得してきました。そのため、以前は広告などへの投資よりSEO施策に注力していました。
しかし、リクルーティングサービスの市場は競争が激しく、SEO施策以外のマーケティング施策にも投資を行う必要がありました。ただ、社内にマーケティングの知見がなく、我々は何の施策や媒体と相性が良いのか、何から着手すべきなのか、わからなかったため、外部の専門家にお手伝いいただくことにしました。
「数を集める」ではなく、「成果につながりやすいリード」を獲得
――支援を受ける企業は、複数社から選んだのでしょうか。
堀本:はい。その中でも、メディックスさんのご提案が一番我々のビジネスに貢献していただけるのではないかと期待しました。
決断したポイントは3つあります。1つ目は、目先の効果だけでなく、マーケティングの全体を見てビジネス貢献する方法を考えてくださったこと。2つ目は、広告運用だけではなく、導入していたSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)やMA(Marketing Automation)の活用法までご提案してくださったこと。私たちが出したオリエンの要件には入っていないところまで考えていただきました。そして3つ目は、獲得型の広告運用だけではなく、認知系のメディアもご提案いただいたことです。
――メディックスの提案は、どういう考えから形になったのでしょうか。
矢嶋:オープンワークさんの目的として、ただリードを獲得するだけではなく、商談や成約につながる可能性の高い見込み顧客を獲得したいというのがありました。そのため見込み顧客となる、適切な媒体やターゲティングを複数ご提案しました。また、ブランドセーフティも気にされていたので、それを守れる媒体を選びました。
さらに、オープンワークさんで導入されているSFAやMAツールと広告をつなぎ、獲得したリードの商談率や成約率を把握することで、PDCAを回してさらに精度を上げていくことをご提案しました。
――他のBtoB企業からは、どのような課題で相談されることが多いのでしょうか。
矢嶋:以前のBtoBマーケティングは、Webサイトからの問い合わせや資料請求をゴールとして、広告などの投資に対してどれだけリードが取れたかで評価するという時代が長く続いていました。
しかし最近は、商談につながりやすいリードを明確に定義し、確度の高いリードを獲得したいという課題をお持ちの企業が多いです。そのためにSFAやMAと連携させて、獲得したリードがその先どんなアクションを起こしたかまで深掘りして見ていきたいという企業は増えています。
BtoBだからこそ必要な認知系施策
――オープンワークに認知系メディアの活用もご提案されていましたが、BtoBマーケティングでも認知系の施策が増えているのでしょうか。
上間:BtoBは潜在層が実際に購買に至るまでの時間が長いため成果がわかりづらく、認知系の施策はあまり行われてきませんでした。
なぜなら経営層から「あの施策は意味があったの?」と聞かれても、マーケティング担当者もうまく答えられず理解が得られないため、道半ばで終わってしまうことが多いからです。
上間:また、BtoBマーケティングはBtoCマーケティングに比べて予算が少ないことが多く、できる施策が限られています。そのため、リードが取りやすい獲得型の広告施策に予算を割いてきた背景がありました。
しかし、BtoBは対象となる顧客が少なく、1件あたりの受注金額が高いものがほとんどなので、多少獲得単価が上がってでも、潜在層向けに認知目的の広告を出稿すべきだと考えています。獲得型の広告だけを配信していても、すぐに効果が頭打ちになってしまうので。
――オープンワークでは、認知目的の施策に対しどのような理解だったのでしょうか。
堀本:うちの経営陣は、たとえ効果の可視化が難しかったとしても、潜在層に向けた投資をしていくべきだという考えでした。経営層が短期的な成果だけでなく、中長期の成長戦略にまで思考が及んでいるということも、認知目的の施策を行う上では大事になってくるのかなと思います。
――そこの理解を得る方法はあるのでしょうか。
上間:認知目的の施策の効果を見える化できれば、経営層の理解も得やすくなると思います。そのためには、主に次のような方法があります。
まずは、問い合わせや資料請求に至った直前の広告だけを評価するのではなく、認知のきっかけになった広告など、直前以外の接触も評価する方法です。
次に、獲得したリードの商談率や成約率まで見る方法です。弊社ではそのどちらもサポートすることができます。
“勝ち筋”を見つけ、訴求の精度を高めていく
――実際にオープンワークで行った施策について、詳しくお聞かせください。
堀本:まず、“訴求筋”を見つけていきました。そのために、何十パターンもバナーを作ってもらい、様々な側面の媒体特長をアピールしていきました。さらに、いろいろな切り口でホワイトペーパーを制作し、その成果も検証しました。
そうしたPDCAを 2ヵ月から3ヵ月回すと、どの媒体のメニューでこういう訴求をするとリード獲得につながるという“勝ち筋”がある程度見えてきました。勝ち筋が見えてきたら、バナーなどのクリエイティブをさらに研ぎ澄ませて、より精度を高めていきました。
福田:価格訴求はもちろん、オープンワークさんでは社員クチコミで企業のリアルな評判がわかることにより、転職後にギャップを感じる人が少ないという特長などを訴求軸としました。サイクルの早いA/Bテストなどを行い、顧客獲得単価が安い媒体を見極めたり、より刺さりやすい訴求を研ぎ澄ませていったりしました。
福田:ホワイトペーパーもSFAやMAで効果を追いました。ダウンロード数が一番多いテーマとは別のテーマのほうが、実はダウンロード後の商談化率が高く、商談単価も低いことが分かり、そちらをより露出していくよう舵取りをしていきました。もし、きちんと成果を見ていなければ単純にダウンロード数が多いテーマに予算を割いていたと思います。
加えて、ホワイトペーパーのテーマとしても、サイトを見てもらえばわかる特長だけでなく、競合研究を行った上で「こういう訴求をした方が良いのではないか」というご提案もいたしました。
堀本:自社では気づかなかった訴求ポイントや今足りていないところ、チャンスがありそうなところなども提案いただき、新たな気づきを与えてもらいました。
成果が2倍になり、持続可能なリード獲得にも貢献
――今回取り組んだデジタルマーケティングによる成果はいかがでしたか。
堀本:直接的な効果として、コスト約2倍に対し商談数が5倍強、受注数が6倍強と、施策実施前よりも効率的に受注につなげられました。また、リクルーティングサービスへ自然検索から流入してきて、商談にまで至る件数が2倍に増えました。
2021年の7月から年末までの半年ほど行ったのですが、後半どんどん数字が上がっていきました。Twitterで認知目的の広告を実施した頃から自然流入経由の商談件数が増えたように思います。
自然検索から見込み顧客が流入してくる流れができたので、メディックスさんには継続的な事業成長の土台作りにも貢献いただいたと思っています。
――最後に、マーケティングにおける今後の展望についてお聞かせください。
堀本:今後は、検討度合いの低いリードに対して、たとえばセミナーの開催やメールマガジンの運用などによってナーチャリングできるような体制も作れたらと考えています。そういう複合的なコミュニケーション戦略を組むことで、効果がさらに改善できるのではないかと思います。
大内田:我々はプロダクトありきではなく、ソリューションニュートラルで考え、売上を最大化するための方法を実施していけたらと考えています。
コロナ禍で対面営業が難しいという社会的な事情もあり、近年はBtoB企業によるデジタルマーケティングの盛り上がりが、より一層加速しています。今後さらに、単なるリード獲得に終わらず、その先の商談や受注までを施策の評価とすることが増え、また、認知目的の施策への理解なども深まっていくのではないかと思っています。そうした中で、真にビジネスに貢献する支援を続けていきたいです。