新しい活用事例を発掘・表彰する個人賞
──まずはMetaの山中さんにうかがいます。「Meta Agency First Awards」がどのようなアワードなのか、改めて教えていただけますか?
山中(Meta):Meta Agency First Awardsは、主要なビジネス領域において優れた業績を収めた代理店様を表彰するアワードです。大きく「企業賞」「個人賞」「クリエイティブ賞」の3部門に分かれています。
今回お集まりいただいた5名が受賞された「Planner of the Year」は個人賞のことで、プランナー個人の優れたお取り組みにフォーカスしたアワードです。企業賞の枠組みでは埋もれてしまいがちな、Meta広告プロダクトの新しい活用事例を発掘・表彰する目的で設立しました。運用経験豊富なプランナーの方々の発想は、私たちが当初想定していなかった広告効果や事例を生む可能性に満ちており、創造的な取り組みへの期待を込めた賞でもあります。
ただ、創造的な取り組みであることだけに焦点を当てた賞ではありません。Metaが全社的に注力している広告ソリューションをうまく活用いただくことは前提となります。たとえば、インフルエンサーを起用した「パートナーシップ広告」や、分断された広告セットの統合、「Conversions API」の導入・活用などです。
我々として注力いただきたいポイントはある程度お伝えしつつ、その中でも突出したお取り組みをリードされた方が、Planner of the Yearに選出されます。Conversions APIについては、無償かつ管理画面の操作のみで導入可能な機能「Meta-Enabled CAPI」をつい先日リリースしたばかりです。2026年度は特に、事例を作っていただきやすいかもしれません。
受賞者が語るMeta広告ベストプラクティス
──早速、昨年Planner of the Yearを受賞された皆様がMeta広告の効果を最大化させるために取り組んでいることをうかがっていきたいと思います。
1.電通デジタル笹野氏:ブランディング案件でMeta広告の効果を最大化
笹野(電通デジタル):私は普段ブランディング案件を担当しています。従来、ブランディング案件におけるMeta広告の活用は、テレビCM用に制作した横型素材を縦型に変換するか、横型のまま配信するケースが一般的でした。しかし当社では、オーガニックとペイドを組み合わせ、自然で没入感のある広告体験を創出することが重要だと考えています。
今回受賞した取り組みにおいても、電通と電通デジタルが共同で開発したパッケージ「SNSビデオマガジン」を活用し、縦型動画(オーガニック)とパートナーシップ広告(ペイド)を併用しながら、ブランド文脈に沿い、かつInstagramの媒体特性に合った表現開発を目指しました。さらに、アッパーファネルからミドルファネルまでを横断した継続的な接触設計により、単発の認知施策に留まらずブランドリフトと事業成果の両立を図った点が、今回の受賞につながったと考えます。
実際、高齢層に購入されている商品のキャンペーンにおいて、若年層にもアプローチする目的で縦型動画×パートナーシップ広告を配信したところ、完全視聴率や完全視聴数が過去実績の2~3倍にあたる数値となり、好意的な反応が得られました。
2.サイバーエージェント堀内氏:縦型動画の本数拡大とパートナーシップ広告の勝ちパターン確立
堀内(サイバーエージェント):私は主にダイレクト系の獲得案件を担当しているのですが、最近はその領域でも縦型動画やパートナーシップ広告が高い効果を示しています。
静止画中心のクライアントがまだ多い中、動画フォーマットは情報量が圧倒的に多く、AIの進化により高度化しているMetaのアルゴリズムに対して渡せるデータ量を大きく確保できる点が強みです。パートナーシップ広告は、元々は認知拡大の目的で活用しているクライアントも多かったですが、獲得においても想定以上の成果を得られることが判明しました。そこで昨年から獲得目的での活用を本格化し、積極的な事例化に取り組んでいます。
また、通常の動画クリエイティブ制作は工数がかかると思われがちですが、Meta社の制作Tipsである「ヘッド」「ボディ」「レッグ」の構成に沿って冒頭部分のみバリエーションを増やし、中盤以降の素材を流用することで、工数を抑えながら本数を大幅に拡大できているお取り組み事例も増えています。
クリエイティブがターゲティングになる
3.Side Kicks上原氏:クリエイティブで獲得デモグラフィックを意図的にコントロール
上原(Side Kicks):獲得領域では、上位5〜10%のクリエイティブが売上の約8割を構成する傾向があります。そこで、上位クリエイティブの成果を最大化する観点から「クリエイティブによる配信ターゲティングの最適化」に取り組みました。
AI主導のブロード配信(※)が主流となる中、クリエイティブの構成要素をAIへのシグナルと定義し、配信年齢のコントロールにトライしたのです。縦型動画には大きな変更を加えず、静止画と組み合わせて訴求要素を変えるなど、クリエイティブの組み合わせを検証した結果、高年齢層への配信比率が約70%を占めていたキャンペーンで、34歳以下の配信シェアが28%から54%へと大幅に拡大しました。クリエイティブの核となる訴求を維持したまま、獲得デモグラフィックを意図的にコントロールすることで、単一クリエイティブでの売上最大化を実現しています。
※年齢・性別・地域以外の詳細な興味関心や行動ターゲティングを設定せず、AIの機械学習を活用して広範囲のユーザーに広告を配信する手法
4.オプト中村氏:対象外ユーザーのクリックをクリエイティブで適切に制限
中村(オプト):クリエイティブの担当者として私が最も注力したのは、機械学習やAIとの向き合い方です。たとえば金融業界の案件では、申し込み後の「承認率」がCPAに大きく響きます。機能訴求型のクリエイティブは申し込み数を増やせる一方、承認率の低いユーザーを引き寄せてしまう点が課題でした。
そこで「クリエイティブがターゲティングになる」という考え方から、承認率の低いユーザーがクリックしないデザインやメッセージの設計を追求しました。審査通過率の高いユーザーが増えることで、Metaの機械学習を好循環に導き、承認率・最終CPAの改善を実現しています。この考え方はクリエイティブの精度を高めるものであり、金融業界に限らず他業種にも応用できるアプローチです。
ターゲティングの精度を高めるため、制作物に込めた意図がユーザーに正しく届くかどうかをAIで測る取り組みも進めています。文字の大きさやメッセージの明瞭性など多角的な視点からクリエイティブを事前に分析し、人の目では見落としがちな改善点を洗い出す取り組みです。
5.オプト西森氏:データクリーンルームを活用し検索広告偏重を解消
西森(オプト):私が2025年に注力したのはデータクリーンルーム(Advanced Analytics)の活用です。Meta社と共同でユーザー行動の分析を行ったところ、初回接触でコンバージョンに至るユーザーはわずか4%に過ぎず、6回以上接触したユーザーが全体の約8割のコンバージョンを占めているという構造が明らかになりました。
この知見を基に、ユーザーとの接触機会を意図的に増やすキャンペーン設計へとシフトしました。コンバージョン実績だけでは投資対象になりにくい認知・リール広告についても、新規ユーザー獲得への貢献度をデータで示し、クライアントの検索型広告偏重を解消する根拠としました。
組織のデザインも当社の成果を支えた要因です。広告代理店では一般的に運用部門と制作部門が分離していますが、Meta広告においては両者の密接な連動が成果を左右します。そこで「Meta専任」という職務規定を設け、一人の担当者が運用とクリエイティブの双方に関与する体制を構築しました。専門性を担保しつつ両方を担える人材を育成し、クライアントにとって真のパートナーとなる体制を構築しています。
受賞が新規受注の後押しになったケースも
──受賞後は、どのような反響がありましたか?
西森(オプト):新規提案が格段に進めやすくなりました。受賞したことで「Metaに強い代理店」というメッセージがわかりやすく伝わるようになり、提案活動がスムーズになったと感じます。
中村(オプト):私の場合、クリエイティブ部門の担当者として受賞したことが大きな意味を持っていると思います。運用担当やセールス担当が評価されやすい中、クリエイティブの質によって広告効果が大きく変わることをしっかりと示せたことが、今回の受賞における最大のポイントでした。
上原(Side Kicks):受賞によって会社の信頼性が対外的に高まっている実感があります。正しい取り組みをしてきたことが間違いではなかったと証明されました。今までは少人数で選択と集中をしてきましたが、受賞を機に新規案件や新業種へ挑戦し、成長をさらに加速させていきたいです。
堀内(サイバーエージェント):受賞後にプレスリリースを出したところ、クライアントからお祝いの連絡を直接いただくなど、担当者として信頼関係をさらに深める機会になりました。
また、社内で大型の案件やコンペが発生した際に真っ先に声がかかるようになり、提案機会が増えました。受賞という実績が、社内外からの信頼につながっている手応えがあります。
笹野(電通デジタル):ダイレクト領域の取り組みが注目されることも多い中で、ブランディング案件で受賞できたことは、同じくブランディング案件を担当するメンバーのモチベーション向上につながっています。
何より嬉しかったのは、クライアントにも喜んでいただけたことです。今回の受賞が、信頼関係をさらに深めるきっかけにもなりました。Metaカラーを意識したお花までいただき、受賞の喜びを共有できた瞬間でもありました。
新たに追加された3つの評価軸
──今年度の開催に向けて、読者に伝えたい情報やメッセージがあればお聞かせください。
山中(Meta):昨年度のPlanner of the Yearには「定められた期間において、一定金額以上の出稿があること」というエントリー要件がありました。それに対し、今年度は単月に限定した出稿金額要件も別途設定しています。この変更により、配信期間の短い案件でもエントリーしていただきやすくなっています(注:エントリー対象は、Meta社の営業担当がついている代理店のみ)。
エントリー要件の変更で特に意識したのは、ブランド領域を担当されるプランナーの方です。ブランド領域の広告施策は長期間にわたって実施されるとは限らないため、一定期間の継続出稿を求める要件は、エントリーのブロッカーになり得ると考えました。今年度は、ブランド領域におけるMetaの活用事例をより多く発掘したいため、ぜひ積極的にエントリーいただきたいです。

また、今年度から評価軸の定性観点として「新規性」「再現性」「協働性」の3つを明示しています。エントリーを検討される際は、ご自身の担当案件が3つの観点でどう語れるかを意識していただくと良いのではないでしょうか。
──今お話しいただいた3つの評価軸を満たすにあたり、どのような取り組みや準備が必要でしょうか?
山中(Meta):新規性であれば、Meta広告ソリューションの新たな活用事例を語るのも良いですし、「Meta広告の活用が盛んではなかったクライアントに、その活用余地を示す機会を創出した」という内容もあり得ると思います。まずはご自身の案件に関して、どのような切り口で「新規性がある」と言えそうかを考えていただくことが、最初のステップになりそうです。
再現性に関しては「自身の案件から得られた知見を社内で横展開し成果を出した」という事例があると、説明いただきやすいと思います。ここまでの2つは、案件のインパクトを異なる側面から語るための指標、というイメージです。一方の協働性は「案件推進の難易度そのものを語っていただくための指標」と解釈いただきたいです。「社内の複数部門を跨いで協力を得た」「Meta社員を営業メンバーに閉じず広く巻きこんだ」といったプロジェクティブなお取り組みを、より高く評価できるようにしたいと考えています。
──3つの評価軸は“案件プレゼンの軸”と解釈することもできますね。
山中(Meta):おっしゃるとおりです。本日お越しいただいた皆さまの受賞案件は、いずれもここまでお話しした3つの評価軸で説明することができるんです。そうした背景もあり、今年度は定性観点を言語化して明示することにこだわりました。
──5名にうかがったノウハウは、Meta広告に取り組む多くのプランナーにとっての指針となるはずです。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

