接触タイムスタンプを活用したアトリビューション分析
小岡氏が最後に紹介したのが、求人マッチングサイトを展開するAtraeだ。同社では、通常のCPAやアトリビューション分析に際し、次のような課題を抱えていたという。
「CPAの評価で運用すると、競争が激化している健在層向け施策(リスティング、リターゲティングなど)に偏ってしまい、アトリビューション分析をすると、評価したくないものまで評価してしまう……、そんな悩みを抱えていました。たとえばアトリビューションの場合、ユーザーが3ヵ月前にクリックしたものや、必要以上にビュースルーも効果にカウントされてしまうケースがあります。こうしたものを排除し、効果があったとされるものを洗い出すために、ユーザーごとに接触タイムスタンプがあるローデータを使いたいという要望をいただきました」(小岡氏)
そもそもアトリビューション分析とは、間接効果を含めた広告効果の指標だが、通常のやり方だと、その間接効果自体がいつ発生したのかがわからない。Atraeではそこに着目し、接触した時間がわかるローデータをアドエビスから抽出して分析を行った。
考え方としては、次のようなものだ。まず1年間蓄積したアドエビスのデータのうち、一定期間より以前のクリックについては無視。そしてビュースルーについては、コンバージョンパスにあるものについては「効果あり」とカウントし、最終コンバージョンに寄与した広告の接触回数を集計していく。小岡氏によると、これはあくまで考え方の例で、実際に同社が利用したロジックとは若干異なるが、「時間軸を含めて効果を検証することで、評価対象でない広告の評価を行わないことにより、正確な成果判断ができる」という。
正確な成果判断のため、今やるべきこと
これらの事例を紹介し、小岡氏は、今マーケターが実践すべきことを次のようにまとめた。
「できるところからで構わないので、Webの接触データやオーディエンスデータを蓄積・管理することから始めましょう。これまではコンバージョンデータだけでアトリビューションや間接効果を見ていましたが、今はユーザーごとのWeb上ですべての接触履歴が紐付いたデータが残っているので、できるならこれを活用すべきです。そしてコンバージョンしていないユーザーについては、むしろアンケートなどを取って『なぜ購入しなかったのか』を単刀直入にヒアリングし、その意見を踏まえて改善すること。この両方が整うと、より売れる仕組みが作れるようになります」(小岡氏)
デジタルマーケティングは、データが把握しやすく、アナログの施策に比べて成果判断がしやすいといわれている。だがデータが多く、広告のメディアも役割も多様になると、むしろ多すぎるデータにおぼれて本質を見失いかねない。そうした事態を防ぐためにも、精度の高いデータをしっかり把握し、分析できるマーケティングプラットフォームを導入しておくことが必要になるだろう。
また最後に、アドエビスはただのデータトラッキングツールから脱却する宣言もされた。
「これからは、ユーザーごとの接触データを蓄積するだけで、取得したデータを分析・評価・クラスタリングまで簡単に行い、獲得可能性の高いアトリビューションを持ったユーザー群に絞ったターゲティング配信を行うまで、一気通貫してチェックからアクションまでつなげることが可能となります」(小岡氏)
10月よりDSP(Logicad)との連携を果たし、アドエビスは更なるデータドリブンマーケティングの加速を狙う。