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離脱とファン化の分岐点は“顧客応対の質”にある デジタル時代のCXと顧客ロイヤルティ向上の鍵とは

顧客ロイヤルティ向上につながる顧客応対の改善

松原:実際、当社のクライアントで、顧客ロイヤルティを測るネットプロモータースコア(以下NPS)を定点観測している企業がいますが、コンタクトセンターが顧客の要望に応える取り組みを始めたら、NPSが向上した例もあります。私はコンタクトセンターに来る問い合わせについて、企業はいま以上に重視すべきだと思います。

安成:その事例を詳しく教えてください。

松原:先ほども出た、コミュニケーションチャネルの拡充の例です。その企業では、もともと問い合わせチャネルは電話とメールがメインで、チャットの対応はほとんど行っていませんでした。しかし顧客からの要望もあり、Webページからチャットにスムーズにつながる機能を加えたり、われわれも電話応対のなかでチャットの案内をしたりするなど、誘導を強化することで、3年間で約4割の方がチャットを使うようになったのです。単にチャットに切り替わるだけでなく、チャットの方が電話より効率良く対応できるといった効果もありましたし、NPSを測定したところ、電話ユーザーよりチャットユーザーの方がNPSの「推奨者」が多いという結果が出ました。

安成:なぜチャットユーザーの方が、電話ユーザーよりロイヤルティが高いのでしょうか。

松原:電話に比べて待ち時間は少なく、知りたい情報をわかりやすく教えてくれるという点が大きいでしょう。また情報の提示方法が多様なことも特徴の1つです。たとえば電話だと、質問に対して口頭でしか説明できませんが、チャットなら写真画像を共有したり、FAQの該当ページのURLを送ったりするなど、よりわかりやすく情報を伝えることができます。こうした対応1つひとつによって満足度が上がり、ひいてはロイヤルティの向上につながったのだと考えられます。

安成:CXの改善が、NPSの向上という成果に現れてくるのはどれくらいのタイムスパンが必要ですか?

松原:その企業の商品やサービスの特性、顧客との関係性、具体的なCX改善の施策内容によるので、一概には言えません。

 大切なのは、「成果を上げる」ことを考えたCX改善施策の設計と、それを現場で継続的に実行し、改善し続けていくことです。うまくいっていないのであれば、その原因を探らなくてはなりません。私たちは、それぞれの企業の状況を踏まえ、課題に対して一緒に取り組んでいく体制を整えてご支援しています。

顧客応対はファン化と離脱の分かれ目になっている

安成:いまのお話からすると、コンタクトセンターはロイヤルカスタマーを育てる拠点として大きな役割を負っているわけですが、そのコンタクトセンターの役割、価値について詳しく教えていただけますか。

松原:先ほどの『消費者と企業のコミュニケーション実態調査2019』では、ファンを生み出す優良顧客の育成マップをまとめているのですが、「消費者」「見込み客」「顧客」「ファン」になるまでのプロセスを分析したところ、商品を購入した後の「相談段階」がすべてを左右することがわかりました

 商品購入後に不満が生じた場合、57%の方が「企業に不満を伝える」としています。そもそもコンタクトセンターにはなんらかのマイナス状態で問い合わせしてくる方が多くいます。その際の対応やコミュニケーションが良ければ、69%が「リピートする」と回答、逆に悪い体験なら「他社に乗り換える」という人が72%いることがわかりました。

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『消費者と企業のコミュニケーション実態調査2019』(トランスコスモス、2019)より
「ファンを生み出す優良顧客育成地図 全世代版」
タップで拡大

松原:つまりコミュニケーションの良し悪しによって、7割の人がリピーターになるか、それとも離脱するか分かれるわけです。この分析結果を見ると、コンタクトセンターに求められる価値がいかに大きいかがわかると思います。

安成:コンタクトセンターの役割は今後ますます大きくなるわけですね。その一方、コンタクトセンターにおいても技術革新が進んでいますが、ファンを育てるためにはどのようなテクノロジー、イノベーションが期待されているのでしょうか。

松原:一人ひとりに最適な対応をするため、コンタクトセンターのオペレーションはより高度化していきます。音声認識技術や自動化技術を使って効率を高めた上で、人とAIが協調してより高い品質の顧客対応を行うことができるようになります。さらに感情解析やWeb上のリアルタイムな行動データをもとに一人ひとりの顧客理解を深めることで、より満足度の高い適切な対応ができるようになっていきます。

 とはいえ、繰り返しになりますが、テクノロジーはあくまで手段でしかありません。「消費者にとって一番改善しないといけないポイントは何か」を明らかにし、そのために必要なテクノロジーを活用することが重要です。当社は技術の導入が目的ではなく、消費者により良いサービスを提供するためのデジタル技術の活用を検討、試行されている企業を応援しています。

安成:ありがとうございます。では最後に、今後注力したい領域や目標をお聞かせください。

松原:企業の経営課題、マーケティング課題は1つだけではありません。CX強化のための体制が十分整っていない企業も多く、自社内だけで課題を整理し、解決に向けた優先順位を決めて継続的に取り組んでいくのは難しいケースも多いと思います。私たちは数多くの企業の課題解決をお手伝いしてきた経験から、その企業の状況に合った取り組みを提案し実行することができます。「コミュニケーションを通じて自社のファンを増やしたい」ということであれば、当社の知見やサービスがきっとお役に立てると思います。

 デジタルマーケティングやコンタクトセンターのイノベーションなど、さまざまな分野で技術やデータを活用するシーンが増えている現在、企業の悩みや課題に寄り添って一緒に成果を上げられるパートナーとして、これからも期待に応えていきたいと思います。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/03/12 11:00 https://markezine.jp/article/detail/32929

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