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アドエビス×BIで実現!年商100億円のD2C企業が推進するデータマネジメント戦略

 D2C業界に注目が集まる一方で、加熱する市場競争により近年新規顧客の獲得効率(CPA)が落ちていることから、施策判断や意思決定に課題を感じる企業も少なくない。広告効果測定プラットフォーム「アドエビス」を提供するイルグルムは、D2C向けの新機能として「LTVForecast」の提供を開始。独自の開発技術により「利益重視の広告評価」を可能にする。その重要性について、すでにLTVを指標に広告投資判断を行っているビタブリッドジャパン 執行役員の西守穣氏と、イルグルムの笹井俊宏氏から話を聞いた。

大手からD2C事業へ、データを駆使して年商100億円事業にまで成長拡大

――お二人の経歴と、現在の活動におけるミッションを聞かせてください。

西守:ビタブリッドジャパン執行役員の西守です。大学在学中からベンチャー企業で働き、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、hontoを経て、当社の親会社である総合PR会社のベクトルへ入社しました。

 入社後は社長室事業開発グループで新規事業の立ち上げを担当しまして、ビタブリッドジャパンもその新事業の一つです。そこで創設メンバーとして化粧品通販ビジネスの始動に尽力し、今に至ります。現在は組織のナンバー2のポジションにて、CRM施策統括・CS・物流・システム・Webチームと幅広く担当しています。

笹井:イルグルムで製品戦略課のマネージャーを務めている笹井です。2016年に新卒で入社して以降、様々な企業のアドエビス導入・活用支援に携わってきました。

 「LTVForecast」に関しては、製品責任者としてプロダクトマネジメントからセールス、活用支援もさせていただいています。

急成長のポイントは「当たり」を繰り返す、「再現性」の追求にあり

――ビタブリッドジャパン様は、創業7年で年商100億円を突破されたとうかがっていますが、そこにはどんな要因があったのでしょうか。

西守:初期の3~4人ほどのメンバーしかいなかった頃は、代表の大塚が新規販促などの攻めを、私が物流・CS・システムなどの守りを担い、バランス良く猛烈に働いてきたことが功を奏していたと思います。

 ですが振り返ってみて、我々の成長に欠かせない要素だと確信しているのは「再現性」を重視していることです。新規の広告施策が上手くいった時、もう1回同じことをしたら上手くいくのか。再現性のカギとなった要素、いわゆる「根拠」がどの部分にあったのか細かく追求する文化が社内に根付いています。

株式会社ビタブリッドジャパン 執行役員 西守 穣氏

西守:時には再現性のあるものを自分たちで作り、業界に先駆けてこっそり実現させたこともあります。とは言え、なかなか「当たり」を引くことができずに、創業から最初の当たりを見つけるまでの1年弱は、「事業の撤退」と常に背中合わせだったように思います。

笹井:「当たり」を引くというのはどういう意味ですか?

西守:一言で言えば、自分たちが設定するCPA(顧客獲得単価)の範囲内で目標件数を取れることが「当たり」です。予算通りのCPAで一定件数を取れるって、実はその時点で成功しているんですよ。

 当社の場合、2014年の当時ではあまり認識されていなかった「記事LPの価値」に気が付き、その有効性を色々な組み合わせを試しながら検証していきました。その甲斐あって「当たり」の法則が見つけられたんです。横展開して、複数のケースで再現可能になりました。それが創業から9ヵ月目ぐらいのことでした。

笹井:CPAが想定ラインに収まると、アクセルを踏めるようになりますよね。そのタイミングを初期に作れたのが大きかったと。そのためには、しっかりデータマネジメントをしながら、スピーディーに施策を回していくことが重要ですよね。(北の達人コーポレーション木下氏×アドエビス対談

「根拠」の徹底追及を実現するために新たなアクションが必要に

――「再現性」と「根拠」を重視した経営がポイントだったということですね。アドエビスの導入は、それを実現する目的だったのでしょうか?

西守:はい、そうです。創業後すぐにアドエビスを導入しました。データを元に再現性を担保することが重要だと思ったので、初期からツールに投資していました。

 導入してから、管理画面に毎日アクセスして、昨日の獲得件数を確認するようなベーシックな活用をしていたのですが、2年ほど経った頃、「この広告施策で本当に儲かっているのか」を突き詰める必要性に直面するようになったんです。

広告別のLTVを把握することでROIを最大化する

――広告施策で利益を出せているかを突き詰めるということですが、なぜそれが必要なのでしょうか。

西守:単品通販(D2C)において、何が利益に貢献しているかを判断することは容易ではないんです。最近は対応するシステムも出てきましたが、我々が問題に直面していた頃は、世の中のカートシステムがリピートを想定して作られていないため、既存顧客と購入経路を紐づけることも難しかった。

 売上が上がっている理由が特定できないのでは、D2Cビジネスでの未来はありません。アドエビスでは、どこの経路で獲得したかという点の情報がわかりますので、獲得経路別にその後のお客様の状態を手動で分析していました。しかしデータ量が増えるに連れ、そのやり方では立ち行かなくなりました。

 ならばいっそのこと、自分たちで獲得顧客のLTVを算出できるシステムを作ろうと考えました。企画構想から人材の採用、データ構築まで2年ほど費やし、2018年にBIダッシュボードを完成させました。

――BIダッシュボードを自社開発されたんですね。システム構築時には何を大切にされましたか。

西守:一番は、獲得したお客様がこの先どれぐらい利益貢献してくれるのかを可視化することです。LTVというのは顧客生涯価値なので、本来生涯を観察しないとわからないものですが、そんなことをしていたらPDCAが回らずに会社が潰れてしまう。

 そこで当社開発のダッシュボードでは、アドエビスから取得するデータを蓄積し、30日、60日、90日……365日というように、区切りを設定して、そのお客様のLTVと継続率を可視化できる仕組みを構築しました。

 このBIダッシュボードとアドエビスを連携したことで、自社専用のアドエビス管理画面が出来上がり、そこからはどんどんカスタマイズしていきました。更新は現在も続いていますが、今では広告施策ごとの購入者のLTVや継続率などが、クリックするだけで見られるようになり、社内で議論する内容も1段高いフェーズへと変化しました。

株式会社イルグルム 製品戦略部 製品戦略課 課長 笹井 俊宏氏

笹井:実際、広告ごとにLTVというのは変わるものですが、ツールベンダーとして様々な企業とお話しするなかで、ビタブリッドジャパン様のように広告別のLTVをシビアにウォッチしている企業はまだまだ多くないと感じています。

 また広告ごとにLTVを見ようとしても、データ環境を整備するハードルが高く、取り組みが出来ない企業様も多くいらっしゃいます。

 そこで、今年6月に実装したアドエビスのオプション機能である「LTVForecast」は、簡単な設定をしていただくだけで広告別のLTVを可視化し「儲かる広告投資」を可能にする新機能として提供を開始しました。

――「LTVForecast」について、もう少し教えてください。

笹井:「LTVForecast」は共同開発パートナーであり、JIMOSを始めとした数々のD2C企業のマーケティングを舵取りされた田岡敬氏独自のノウハウとアドエビスの技術を融合することで、これまで実現が困難だった「LTVの予測」も可能にしました。それにより、直近実施した広告施策から生み出される利益の着地が分かるので、止血すべき「赤字広告」、もっと獲得を伸ばすべき「機会損失中の広告」の迅速な把握が可能になりました。

 また、LTVだけでなく「F2/F3転換率」「F1/F2/F3以降の平均売上」「投資回収期間の着地予測」「LTVから逆算した上限CPA」なども算出できます。

 実は、既に「LTVForecast」の活用によって、広告予算配分や特定媒体からのリピート売上改善の検討を行っている企業様もいらっしゃいます。これまでもLTVを可視化する環境はお持ちでしたが、「細かな収益計算」や「LTVの着地予測」は行えなかったため、毎月の広告運用や施策検討に自社データを活かしきれない状況にありました。そこで、現在は「儲かる広告投資」を実現するために「LTVForecast」でご支援させていただいております。

西守:2017年時点にこの機能があったなら、当社もBIダッシュボードを開発していなかったかもしれません(笑)。実際、広告ごとに収益計算までできる仕組みは、「LTVForecast」のほうが優秀なので、我々もぜひ真似ていきたいです。

黒字化までの角度は「30日LTV」と「F2継続率」を活用し予測

――ビタブリッドジャパン様は、広告別のLTVを実際にどう使っているのか詳しくお教えください。

西守:一般的に単品リピート通販は、新規顧客獲得時にかけた広告投資費用をリピート売上によって回収することが前提のビジネスモデルです。そのモデルで重要になるのは、「黒字化までの角度」。損益分岐点のことですが、この角度の見極めが重要です。

 それを判断する材料として、今我々が重視しているのが「30日LTV」と「F2継続率(2回目購入となるリピーター率)」の指標です。この指標に基づき、年間数百件のA/Bテストを実施しています。ただ、その際に誤ったアクションを取りがちなので注意が必要です。ポイントは、数字の悪いものから改善するのではなく、獲得件数が多いものを改善すること。そして、数字が悪い理由を分析する時はその先にいる購買者の詳細データまで見ることです。

 たとえば、InstagramでインスタグラマーにPRを依頼した際に、低いCPAで獲得できて喜んだもののLTVが低かったみたいなケースはよくあります。それで「InstagramはLTVが低い媒体だ」と決めつけてしまっては、マーケターとしてまだまだです。実は、起用したインスタグラマーさんのフォロワー層とブランドのターゲット層に乖離があった…といった問題が潜んでいることもよくあります。

笹井:より改善インパクトの大きな箇所に手を入れる、悪かったとしても「なぜ悪いのか」まで潜って考察しないと筋の良い打ち手は生まれないですよね。悪いところを切るだけだと売上も利益も規模が縮小するだけなので。

 「LTVForecast」ではLTVだけでなく、LTVを構成する他の指標も見られるので、打ち手は考えやすいと思います。例えば「CPAは高いけど、LTVも高い広告」は優良顧客の獲得はできているので、CPAが高いという理由だけで止めたくない。では、CPAを何とか下げて優良顧客の獲得数を増やそうと考えるかと思います。

 その際に、CPAとLTVを別々にウォッチしていては最終的な良し悪しがわからないので、2つの指標を組み合わせた利益ベースのLTVを使って判断する必要があります。「LTVForecast」では製造原価やフルフィルメント費なども加味することができるので、より精緻な収益計算が可能です。

西守:結局のところ優良顧客や長く使ってくれるお客様は、高いお金を出してでも獲得したほうがいい、という話ですよね。数字上は同じ1万円のCPAでも、LTVを組み合わせることで初めて良いお客様なのか、そうではないのかが見えるようになる。

 その投資判断のためにはLTV予測が重要で、マーケターがLTVを気にする理由がそこにあると思っています。上手く活用すれば、マーケターが経営層に、もしくは代理店がクライアント企業に広告投資額を増やす交渉もしやすくなるでしょう。

LTVを加味した広告投資判断をスタンダードに

――最後に、ビタブリッドジャパン様、イルグルム様のそれぞれの立場から、今後の展望をお聞かせください。

西守:ここ1、2年に関して言うと、RPA(Robotic Process Automation)を自社で極めたいと思っています。具体的には、RPAを使い自動でデータを取得できる仕組みを構築し、自分たち専用の管理画面をさらに作っていきたいです。

笹井:イルグルムとしては、将来的にD2C市場の中で利益やLTVを加味した広告の投資判断がスタンダードとなる世界観を作っていければと考えています。

 そこには超えなければならない壁や、変えなきゃいけないカルチャーもあるでしょうが、「LTVForecast」を起点にそうしたハードルを打破し、変えていくような活用をご案内していくつもりです。それに合わせて、「LTVForecast」、アドエビス共にバージョンアップさせていきます。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/18 11:00 https://markezine.jp/article/detail/37632