新規獲得が難しい時代、LINE×CRMへの注力が盛んに
TimeTechnologiesの浅利氏は、昨今のマーケティング環境を「新規獲得の限界」と定義。検索結果からサイトへ遷移せずに解決する「AIオーバービュー」(ゼロクリック検索)の普及が、流入数減少に拍車をかけていると指摘した。
さらに、プライバシー規制による広告精度の低下や、サービスのコモディティ化によるCPA(顧客獲得単価)の高騰が重なり、「新規獲得に依存し続けるモデル」はもはや持続不可能であると警鐘を鳴らした。
既存顧客との関係構築が急務となる中、浅利氏は「チャネルの再定義」を促す。若年層を中心としたメール離れや、アプリのプッシュ通知が埋没・停止されるなど、従来手法の限界が見えてきたからだ。

そこで浅利氏が提言するのが、生活インフラであるLINEと、顧客データを高度に連携させるCRM施策だ。LINEは他チャネルを圧倒する開封率・クリック率を誇るだけでなく、「いつ、誰が、どこから来たか」を蓄積するハブ、すなわち「簡易的なCDP」としても機能する。
「たとえば、流入経路に合わせたメッセージの出し分けや、Web上の行動履歴に基づくパーソナライズされた商品レコメンドも可能。これまでのCRMでは困難だった『今、その人が欲しい情報』の提供が、LINEなら実現できます」(浅利氏)
ユーザー一人ひとりに最適化されたOne to Oneコミュニケーションは、もはや理想論ではなく、LTV(顧客生涯価値)向上のための必須条件だ。顧客の反応がダイレクトに現れるLINEにおいて、先進企業がデータ連携を急ぐのは、「適切なタイミングで、適切な情報を届ける」ことの成否が、そのまま顧客離脱の防止に直結するからに他ならない。
既存ファンを逃さないために。ショップチャンネルが直面した「一斉配信」の限界
先述の浅利氏の指摘を受け、ジュピターショップチャンネルの相澤氏は「当社でもLTVの向上が新たな指標になっている。新規獲得と並行して、既存ユーザーの継続利用を促す必要がある」と市場変化の実感を語った。
同社は24時間放送のテレビ通販「ショップチャンネル」を軸に事業を展開してきた。番組視聴後は電話による購入に加え、近年はECサイトや公式アプリの利用も増加。オフラインとオンライン、ふたつのチャネルを併用して長年利用を続ける熱心なユーザーを抱える。この既存ユーザー層に対してメルマガやLINEによる利用促進・販促施策を実施した結果、2024年度には約1,678億円という過去最高売上を記録した。

しかし、その後の販促強化で壁にぶつかった。メルマガ会員にはセグメント配信を行う一方で、LINE公式アカウント単体では「誰が今、どの商品を見ているか」というリアルタイムの関心を捕捉できず、結果としてすべての友だちに同じ情報を送る「一斉配信」に頼らざるを得ない状況だった。
「配信コストの面でも、LINEの友だちが増えるほどターゲットを絞って配信することが理想です。しかし、年齢や地域、性別といったLINE公式アカウント上の情報だけでは、ユーザーの行動や関心は理解できません。LINEでも最適な情報をお客様に届けるため、Liglaを導入しました」(相澤氏)
Liglaを採用した決め手は、「ID連携前のライト顧客」に対しても、その行動に基づいたアプローチができる点だ。多くのLINEマーケティングツールがLINEのID連携を前提としている一方、LiglaはID連携をしていないユーザーに対しても、サイト内の行動を計測して蓄積し、配信に活用できる。
浅利氏は、ジュピターショップチャンネルと同様の課題を抱える企業は多いと指摘する。「今、何に悩み、何を欲しているか。顧客の微細なサインを察知し、即座に個別のコミュニケーションへと昇華させる。これができなければ、アクション(購入)へ導くことは難しい」とし、顧客の行動をもとにパーソナライズしたLINE活用の重要性を改めて強調した。
では実際に、ショップチャンネルではLiglaをどのように活用したのか。相澤氏は3つの実践を紹介した。

