強制視聴・長いリードタイム・絶対評価……ミツカンが抱える3つの課題
MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに、味ぽんのマーケティング展開において、テレビCMはどのような役目を担っているか教えてください。
伊山:テレビCMは幅広い消費者の方に効率的にアプローチするための強力な手段です。また、営業行動のバックアップとしての役割も担っています。「テレビCMを打っている注力商品なので売上が期待できます」と、流通の方々にわかりやすくお伝えできます。
さらにミツカンでは、「PESO(ペソ:Paid Media、Earned Media、Shared Media、Owned Media)」モデルで消費者コミュニケーションを設計しています。テレビCMはペイドメディアとしての役割を担いつつ、単に広告を投下するのではなく、「PESOの中でどのような役割でテレビCMを活用していくのか」という戦略に基づいて広告展開しています。
戦略はブランドによって違いますが、味ぽんでは「UGCを増やすためにテレビCMを活用する」という視点で、シェアードメディアに寄与することを目指しています。
MZ:2021年にREVISIOを導入したそうですが、CM展開や効果測定にどのような課題があったのでしょうか。
伊山:当時は広告宣伝費におけるテレビCMの割合が非常に高く、実施に当たっては経営層にできるだけ早く効果の有無を報告して適切な資源配分を行う必要がありました。しかし、調査には3つの課題がありました。
第1に自然なCM視聴ではなく、強制視聴による意識調査だった点。第2にテレビCMの放映から調査結果の納品まで1ヵ月以上のリードタイムが発生していた点。第3に、その期に制作したCMクリエイティブのみの評価しか取れない点です。過去のCMと比較した際の相対評価ができず、議論の幅に限界がありました。
MZ:評価の方法やリードタイム、過去との比較ができない課題に対し、REVISIOの導入を決められた経緯を教えてください。
伊山:REVISIOの注視データは、実際に生活者が視聴している状態で調査できる点が非常に魅力的でした。単に「テレビが点いている」状態の視聴率ではなく、「視聴者が実際に画面に視線を向けている」状態を計測するため、実態に即した調査ができますし、当社の課題にマッチしていました。
またREVISIOなら、早ければCMの開始から1週間以内にデータを確認できます。このスピード感も大きなポイントでした。さらに過去のテレビCMのデータと比較できる利点もあり、より高品質な検証が可能になると考え、導入に至った次第です。
ダッシュボード×勉強会で“見られる”CMの知見を共有
MZ:具体的にどのようなREVISIOのソリューションを活用しているのでしょうか?
須増:現在はCM改善のPDCAを支援するダッシュボードツール「REVISIO One」をご導入いただいております。REVISIO Oneには、2020年以降に放映されたCMのデータが格納されており、ミツカン様は自社のCMがどのくらい視聴者に注視されたのかを「Cスコア」という指標でチェックできる機能を使っていらっしゃいます。
Cスコアとは:放送枠の見られやすさによる影響を極力排除して、クリエイティブ本来の注視度(良し悪し)を可視化・評価できるREVISIO独自の指標
またミツカン様では、半期に3回のペースでCMクリエイティブ勉強会を実施しています。最近ですと、初回は「業界全体でどんなCMが見られているか」というマクロ分析を行い、2回目はそこで浮かび上がった仮説をもとに「BGMなど音楽の使い方」「機能訴求の素材」「ロングセラーから派生した商品のアプローチ方法と見られ方」といったテーマを設定して詳細分析を実施しました。そして3回目は「ミツカン様の自社CMの振り返り」という構成で知見を共有しました。
小黒:ミツカン様の場合、導入時から「全員で共通の知見を作っていきたい、それをもとに改善していく体制を作りたい」というお考えをお持ちでした。だからこそ、「データを見て終わり」ではなく、「データを見て、それをどのように活用していくか」という視点があり、それが勉強会をスタートした意図につながっています。
注視スコア9ポイント上昇、前年同期比売上107%に寄与した「見られるCM」の作り方
MZ: REVISIO OneでCMの注視状況や反応を確認しつつ、勉強会で知見をアップデートし、味ぽんのCM制作やクリエイティブ改善に活かしているのですね。実際に取り組みの中で得られた知見や成果をお聞かせください。
伊山:2024年に制作した「ぽん!と変えちゃう?」篇というCMをご紹介します。味ぽん60周年を機に、ブランドの戦略を大きく転換する第一歩として制作したCMでした。
従来の味ぽんのテレビCMは、1つのメニューにフォーカスして味ぽんを訴求するスタイルが主流でした。ところが、このCMでは、お弁当に味ぽんをかける、ラーメンにかける、アジフライにかける、といった様々な使い方を次々と見せる構成に刷新しています。
次々と映像が切り替わるため「本当に印象に残るのか?」「商品の魅力がしっかり伝わるのか?」が最大の論点になりました。そこに、これまでの勉強会で得た知見をフル活用して制作と社内への説明を行いました。
今は倍速視聴が当たり前の時代です。時代に合わせた疾走感のある演出や、シズル音を効果的に組み込むことで注視が得られることを社内に伝えました。シズル音はたとえば、「味ぽんを開ける時の"ぽん"という効果音は注視を得やすい」ことがREVISIOとの取り組みでわかっていました。
MZ:実際の成果はいかがでしたか?
伊山:主なお客様であるF23主婦層のCスコアが99から108に上昇しました。Cスコアが9ポイント違うということは、CMを1回放送する間にCMを視ている人が9%増えているということですから、目に見えて改善されました。データの波形からも、クリエイティブを工夫した箇所できちんと注視が得られていることがわかりました。まさに「狙いどおり」です。
売上も同時期対比で106〜107%を達成しました。お客様の購入には様々な要因があるので一概には言えませんが、テレビCMも売上の向上に寄与できたのではないかと考えています。
CM放映の2週間後には追加投資を判断
MZ:リードタイムが長いという課題についてはいかがでしょう?
伊山:CMが放映されて2週間後には売上データと注視データを経営層に報告しました。「これだけ成果が出ているので、追加で投資したい」と上申し、年間での投下量を大幅に増やすことができました。以前は1ヵ月以上を要した意思決定が、わずか2週間で可能になったスピードに感動しましたね。
MZ:注視データが意思決定に活用されているのですね。
伊山:はい、注視データをベースに経営層・マーケティング・広告担当全員の目線が合う仕組みになっています。テレビCMを放映してある程度GRPが蓄積されたら数値を報告するフローになっていますし、経営層も注視データが何を示すか理解しています。私たちも、まず注視データで良し悪しを判断することが基本になっています。
MZ:CM制作チームとの連携に何か変化はありましたか?
伊山:データがあると納得度が高くなるので、制作サイドや代理店の方とは、結果が出た段階でCスコアとその波形を共有するようにしています。「ここが狙い通りでしたね」「ここで注視をしっかり維持できました」と具体的なフィードバックができています。次のクリエイティブ制作に直結するインプットを提供できているのではないでしょうか。
トップから現場まで、ミツカンの「データ活用体制」の強さ
MZ:ミツカン様の取り組みを伺うと、REVISIOのデータを活用する体制が整っていると感じます。REVISIO様から見て、他社が参考になりそうなポイントがあれば教えてください。
須増:先ほど伊山様が話されたように、社内でREVISIOのデータを共通指標として活用しているという点は、ぜひ他社様にも知って頂きたいポイントです。
我々はREVISIOのデータで「こういう知見が得られる」というご紹介にとどまらず、データを指標としてレビューする体制を作ったり、社内に浸透させたりするための組織づくりについてもしっかりサポートさせていただきます。この体制を確実に整えることが、ミツカン様のようにCMクリエイティブのPDCAをスムーズに、スピーディーに回す秘訣だと考えています。
MZ:担当者が変わるとツールが使われなくなるケースも耳にします。得られた知見を社内で引き継げる仕組みはあるのでしょうか?
伊山:毎年、新しく担当になったメンバー向けに勉強会を実施しており、「REVISIO様はこういうものを提供してくれる」と説明する場を設けています。それもあって、担当が変わっても問題なくスムーズに引き継げていると感じています。
また当社の特徴に、経営層と現場の距離の近さがあります。マーケティング担当が社長に直接報告することも珍しくないので、経営層も巻き込んで一緒に注視データを理解してもらう取り組みが、導入当初からできていたと思います。
小黒:ミツカン様は、当社のお客様の中でもREVISIOの指標をフル活用しながら継続的にクリエイティブ改善に取り組まれている企業の一つです。導入当時の担当者様が上長の方を巻き込んで、「REVISIOをどう使えばいいか」をみんなでディスカッションする機会を作ってくださいました。
そのため担当が変わっても、過去の知見を得て、それをアップデートしていくことが継続できています。勉強会には部長や課長の方々にご参加いただくこともあり、それもとても嬉しいですね。
ジョブローテーションが活発な事業会社の方からは、「担当者が変わると、過去の学びや知見が蓄積されにくくなってしまう」というお悩みを伺うことも多いです。ミツカン様の事例はヒントになるのではないでしょうか。また、当社はこうしたお悩みに最大限応えられるよう、各企業様に寄り添った形で伴走していきます。
仮編集での意思決定に、CTV展開に、データを活用していきたい
MZ:今後、さらにREVISIOの活用を広げていきたい領域はありますか?
伊山: 2点あります。1つは、絵コンテや仮編集の段階での活用です。2026年3月から展開している新CMについても、仮編集の段階で社内の10〜15人に視聴してもらってフィードバックを集めました。定性的な情報をもとに「だから大丈夫です」と経営層に報告したのです。この段階で定量評価が可能になれば、仮編集の段階で数値を把握し、本編集でもう一度修正できる余地が生まれますし、決裁者への説明も格段に楽になります。
もう1つは、CTV(コネクテッドTV)への対応です。YouTubeやTVerをテレビデバイスで見るユーザーが増えている中で、地上波と同じように注視データで評価できると、より統合的なクリエイティブ改善につながると思っています。
須増:当社は「CMが毎秒単位でどう見られているか」という膨大な独自データを保有しています。これに生成AIを掛け合わせることで、制作の「絵コンテなどの事前段階」から、その内容がしっかり見られる作りになっているかどうかを予測したり、より良くするための具体的な改善案を提示したりできるツール「AIコンテ/クリエイティブレビュー」の提供を始めています。
CTVについては、地上波と比べると視聴態度が異なるので、そこを踏まえる必要がありますね。地上波とCTVの予算配分、それぞれのメディアに合わせたクリエイティブの工夫という両軸で、テレビデバイス全体での視聴者への届け方を一緒に検討させていただきたいです。
小黒:もはやテレビCMもデジタル広告も視聴者にとっては同じ「動画コンテンツ」としてシームレスな感覚があると思います。REVISIOとしても、将来的にはすべての動画コンテンツで、より視聴者に見られるためのソリューションの提供を目指しています。REVISIO独自のテクノロジーを活かしながら、ミツカン様のマーケティング活動を支援させていただきます。
テレビCMのPDCAを高速化するダッシュボード「REVISIO One」
REVISIOが独自取得したアテンションデータを可視化し、広告効果改善の様々なニーズに対応するツールです。放送後最短2日で、CMクリエイティブ・メディアキャンペーンのパフォーマンスを精緻なデータで分析可能。地上波・CTV広告においてスピーディーかつ根拠のある改善を行うためのサポートをします。
詳しくはサービスサイトをご覧ください。

