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注目マーケティングトピックス2026

今週、あなたの顧客に会いましたか?田岡凌さんに聞くAI時代に必要な「顧客思考」の実践方法

組織に顧客理解をインストールするヒント

MZ:チームや組織全体に「顧客思考」をインストールしていくためには、何が必要なのでしょうか。

田岡:顧客理解がしっかりと浸透し、実際に事業を伸ばせている組織の共通点はたった1つだけなのです。それは、「経営層やCMO、マーケティング責任者が、誰よりも泥臭く顧客に会っている」ことです。

 トップが現場に足を運び、お客様と向き合っている。その背中を見せるだけで組織は変わります。社員が「これこそが自分たちの仕事なのだ」と自然に認識するようになるからです。それに、経営層よりも顧客を知らない状態でいくら議論を戦わせても、良い戦略は生まれません。

 実際に顧客思考がインストールできているスタートアップ企業では、ミーティングで「最近、契約をしてくれたAさんがこう言っていてね……」と、普通にお客様の名前が会話に出てきます。かしこまって「顧客ヒアリングの発表会」をするのではなく、日常のコミュニケーションの中に顧客の具体的な存在が入り込んでいるんです。

MZ:組織の規模が大きくなると、一次情報を日常的に共有するのは難しくなるかと思いますが、どうすれば良いのでしょうか?

田岡:ある大手企業のマーケティングチームでは、私の本を読んだ後に「会議のやり方を変えた」と教えてくれました。毎週ミーティングの冒頭に、メンバーが持ち寄った顧客の一次情報を必ず1つ共有する時間を設けたそうです。

 そして非常に重要なポイントが、一次情報を「綺麗にまとめない」こと。実際の会話の「書き起こし」をそのまま持ってきて、全員でそれを読みます。

MZ:AIにテキストを要約させないのですか?

田岡:AIや誰かの手によって綺麗に要約させた瞬間に、情報が平均化されてしまいます。最も価値のある「顧客の生々しい違和感や細かな表情、発話のニュアンス」がすべて削ぎ落とされてしまうのです。編集や加工をまったくしていない、生の言葉や様子をそのままみんなで見聞きする。そこに意味があるのです。

AI時代に立ち戻るべき4W1Hの原点

MZ:顧客思考を実現するにあたり、これからマーケターに必要な資質は何だとお考えですか?

田岡:私は、AI時代こそマーケターの「人間としての価値」や「人生経験」が問われるようになると確信しています。

 なぜなら、顧客が本音を話してくれるのは、こちらも人間だからです。AIと対話する時を思い出してほしいのですが、伝えることを整理して情報にしていますよね。人間同士の場合、アイスブレイクを経て、議題に沿った話の中でポツリと本音を漏らしてくれる。あるいは、飲み会だから本音を語り合える。これらは、AIには絶対に真似できません。

 戦略の構築やコンセプトの作成自体はAIが人間より優秀に、高速に作れるようになっていくでしょう。しかし、そのAIを動かすインプットとなる「一次情報の質」は、自分たちの足で稼ぐ以外にありません。一見、非効率なコミュニケーションこそ、ビジネスを俯瞰した時に最短距離を選んでいると私は考えています。

 もう1点、マーケター自身の「人生経験」の豊かさも重要です。自分が色々な体験をしていれば、顧客の1つの行動から5つも10も深い仮説を導き出せます。旅をし、遊び、ライフステージの変化を経験する。そうした多様な人生経験を持つマーケターこそが、同じ生活者である顧客の課題を最も深く理解できるはずです。

MZ:最後に記事をご覧になっている方へ向けて、自分に顧客思考があるのかを確認するための「問いかけ」をいただけますか。

田岡:「あなたの顧客は誰ですか?」そして、「その顧客について、4W1H(When、Who、Where、What、How)の事実で、詳しく説明できますか?」です。

 手法やツールが溢れる今だからこそ、このあまりにもシンプルで根本的な「事実の整理」に立ち戻ってほしいと思います。チャンスは「Who/What」だけでなく、「When」や「Where」にも必ず眠っています。

 マーケティングの本質は「顧客理解を通じた、顧客の創造」です。今後AIに代替される業務は、本来のマーケティングではないかもしれません。「なぜこの人はこんな不便なことをしているのだろう」といった現場で生まれる強い違和感や強烈な悲しみ、あるいは希望といったエモーションこそが、マーケターの仕事の原点です。ぜひ、現場に行って顧客に会い、心を動かされる体験から、本当のマーケティングをスタートさせてください。

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この記事の著者

伊藤 桃子(編集部)(イトウモモコ)

MarkeZine編集部員です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/06/04 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50793

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