「AIを使えば分析が誰でもできる」と言われていますが、現場の実感はどうでしょうか。AIにコードを書かせ、グラフを描かせ、要約まで出力させて、そのスピードと出力の多さに感銘を受けたとしても、「ビジネスの意思決定に役立つか」は別の話です。本連載では、マクロミルグループでマーケティング戦略支援を行うエイトハンドレッドのデータアナリスト上田拓朗氏が、データ分析の7つのフェーズを軸に、各ステップでAIをどう活用し、人間は何を判断すべきか解説します。初回はデータ分析の基本プロセスと、人間の役割の確認です。
AIに「何でも聞ける」時代に、何が変わったのか
生成AIの登場以降、データ分析の現場は大きく変わりました。「自然言語でコードを書かせ、グラフを描かせ、分析結果の要約まで出力させる」、ほんの数年前にはいわゆるデータサイエンティスト・アナリストでなければ難しかった作業が、今では誰でも試せるようになったのです。

「データ分析の民主化」とも呼ばれるこの流れは、確かに現場の生産性を底上げしています。しかし同時に、こんな誤解も広まっています。
「AIに聞けば、答えが出る」
もちろん答えは出ますが、それが「正しい問い」に対する答えかどうかは別の話です。どんなに優れたAIも、問いが的外れであれば的外れな答えを返します。むしろ流暢な文章で、もっともらしく書かれるため、なんとなく良さそうという感覚は得られるものの、実際には役に立たないという厄介なものになってしまいます。
また、「AIがそう言っていたから」という根拠をもとに判断を下す人も、少なからず見受けられます。しかしそれでは、人間がいる意味がありません。AIは道具であり、その出力を評価し、責任を持って判断するのは、あくまで人間の役割です。
では、データ分析において人間とAIはどのように役割を分担すればよいのでしょうか。
本連載では、マクロミルの消費者購買履歴データ「QPR」を用いて、マーケティング分析の現場で実際に使われるレシート(購買)データを題材に、データ分析の各フェーズでAIをどう活用し、どこは人間が判断すべきかを実践的に解説していきます。
AIに丸投げするのでも、AIを遠ざけるでもなく、人がAIを適切に用いる、現実的かつ有用な分析を行うための進め方をご紹介できればと思います。
本連載が想定する読者は、データ分析をビジネスの現場で使う、あるいは使おうとしているすべての人です。専門的な統計知識やプログラミングスキルは前提にしません。「AIを使えば分析できそう」と感じながらも、どこか確信を持てないマーケターや事業担当者、あるいはAI・分析ツールを導入したものの、チームとしての使いこなし方に迷っているマネージャー層にも参考にしていただけます。
特に、「分析はできているけど、ビジネスに活かしきれていない」と感じている方にとって、具体的なヒントが得られる内容を目指しています。日々データ分析者として仕事をする中で私が特に心掛けていることでもありますので、読者の皆さんの一助になれば幸いです。
データ分析は「7つのフェーズ」で動いている
まずデータ分析の全体像を押さえておきましょう。データ分析のプロセスは、大きく7つのフェーズに分けられます。
| フェーズ | 内容 |
|---|---|
| 1.課題・論点設計 | 何を明らかにするかを定める |
| 2.仮説構築 | データを見る前に「こうではないか」を持つ |
| 3.分析設計 | 何のデータをどう分析するかの図面を描く |
| 4.データ収集 | 必要なデータを揃える |
| 5.データ品質確認・前処理 | データを分析可能な状態に整える |
| 6.実分析 | 仮説を検証し、パターンを発見する |
| 7.結果の読み解きと意思決定 | 数字をビジネスの言葉に変える |
注意していただきたいのは、これらが一方通行ではないことです。実分析の結果を見て仮説を修正し、前処理に戻ることもあります。また、データ品質が思っていたものでなければ、分析設計そのものから見直す必要があります。データ分析は行きつ戻りつを繰り返すプロセスを踏むものです。
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上田 拓朗(ウエダ タクロウ)
株式会社エイトハンドレッド リサーチ&サイエンスユニット マネージャー
西日本旅客鉄道株式会社を経て、2022年に株式会社エイトハンドレッドへ入社。購買行動データ、Webアクセスログ、意識調査データ等を活用した業界横断的なデータ分析に従事。直近では、大手レジャー予約プラットフォームにおける販促・プライシング戦略の最適化や...※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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