はじめに:組織マネジメントの重要性とは
本連載の過去の回では、実例を交えてマーケティング戦略の考え方を解説してきました。私が代表を務めるNexGenは、次世代をリードする事業や人財を創ることを目指して立ち上げた会社です。人材育成やマネジメントについて、読者の皆様が悩んだときに振り返る考え型の1つとしてこの連載の内容を活用していただけるなら本望です。
今回からお送りするのは、組織マネジメント編です。複数回にわたって「会社として、組織としてのパフォーマンスを最大化させるためにはどうしたら良いか」ということを皆様と一緒に考えていきたいと思います。
なぜこの連載で、いわゆる戦略の話のみに集中せず、組織マネジメントの話をさせていただくかというと、答えはシンプルです。事業の継続的成長には、戦略を実現する組織能力が必須だからです。
「戦略とは実行が9割」とも言われますが、実行できない戦略を立てても意味はありません。戦地において、作戦は完璧でも実行部隊がその作戦を実行できなければ意味がないですよね。その観点では、「実行する組織能力が高ければ高いほど、戦略を立てて成功させることができる可能性が上がる」と言えるのです。
コロナ禍明けの店舗急拡大を可能にした企業の強みとは?
私が7~8年間伴走させていただいているフィットネス会社の軌跡は、まさにその「戦略を実現する組織能力」とは何か、なぜ重要かがよくわかる例でした。
当時、その会社ではホットヨガ事業を展開していました。ホットヨガはブームとなり、大小様々な会社が存在していますが、その業界では3番手の位置につけていました。しかし、ホットヨガも市場としては成熟し、流行の入れ替わりの激しいフィットネス業界では次なるトレンドとしてピラティスのニーズが上がってきていました。
そのピラティスを含めて次なる成長事業を模索する中で、コロナ禍が始まりました。長い間、事業成長よりも事業を守る期間が長く続きました。そんな長いコロナ禍も終わりが見えてきた最中、次なる成長事業としてピラティスの店舗展開に投資を集中する戦略を立てました。その展開スピードは、年間数十店舗のレベルです。店舗モデルでは、集客しやすい立地に店舗を敷き詰めるスピードがマーケットシェア獲得の鍵となります。マーケット成長に合わせて人が集まる場を押さえることが、店舗マーケティングでは成功の80%を握るといっても過言ではありません。
この戦略の鍵となるのが、店舗開拓後の店舗運営能力でした。この店舗展開スピードに組織の運営能力を追いつかせる勝負なのですが、同社の場合はホットヨガでの実績から不動産業者とのつながりがあり、店舗開拓にはその資産も使えます。そうすると、後は店舗運営能力の育成が戦略を実現するためのハードルでした。
結論から言うと、ピラティスのマーケット成長に合わせて店舗を大量展開した結果、大きく売上、利益成長をしてこの会社は上場を果たしました。今では200店舗以上を擁する会社となっています。
では、なぜこの年間数十店舗を一気に出店する戦略が実現できたのでしょうか。それは、この会社の本質的な強みが「人財育成マネジメントの力」だったからなのです。この会社は店舗スタッフも含めてすべて社員雇用をしており、新卒を中心に早期育成するための仕組みを持っています。外部から見ると強烈な文化に映るのですが、その仕組みの本質は、お客様に感動するサービスを提供する姿勢と、相互フィードバックによりチームで成長するスタンスの教育でした。そして、この教育研修システムが店舗のスピード展開を実現する上で必要不可欠な強みとなっていたのです。
