マーケティングにひもづく組織マネジメントとは何か
ここまで、組織マネジメントとは何かを皆様と一緒に前提をあわせてきました。先述のように、マーケティング戦略には組織遂行能力が必須であり、KPIを持続的に最大化し続けるために組織マネジメントがいかに重要であるかはおわかりいただけたのではないかと思います。
ただ、私はこの組織マネジメントの定義の中に、1つマーケティングの観点を加えたいと思っています。加えたほうがより組織が早く、強く育つということをリクルートやNexGenにおける事業伴走を通して確信しているからです。
マーケティングとは、「人が創り出すマーケットのニーズに、限りなくリアルタイムに価値を届けるための適応をして、利益を生み出すこと」と過去の連載の中で定義してきました。そして、その本質は強みをマーケットに最適化することだと述べてきました。
マーケットがいかに大きかろうと、競合がいようといまいと、自分たちの強みが適応できなければそのマーケットでの事業成長をすることは極めて困難だからです。強みがなければ、外からその強みを持ってくるという手法(例:M&Aや提携)もありますが、いずれにせよ、強みをマーケットに適応させることができて初めてマーケティング戦略としての勝ち筋を描けます。
私は事業でマネジメントをさせていただく中で、おもしろいことに気づきました。事業を成長させるときに考えることと、人を成長させるときに考えることがよく似ているのです。マーケティングでは、「この事業の強みは何か」を考え、その強みをどのマーケットで価値に変えるかを考えます。そして、人のマネジメントも同じです。「この人の強みは何か」を考え、その強みをどの役割で価値に変えるかを考える。事業も人も、強みが価値に変わって初めて成果になります。私は、事業も人も「強み → 価値 → 成果」という同じ構造で成長していると考えています。だからこそ、マーケティングの考え方は事業だけでなく、人や組織の成長にも応用できるという考えに至りました。
この「強み」という概念をマネジメントにも適用することで、個人のキャリアアップにもつながっていくと考えています。それは、個を起点に考えることで、人財市場の中でどのようなジョブに対して自分の強みを活かし、市場で評価される成果や実力をつけていくかをともに考えていく構造になるからです。また、よりマーケティング戦略にひもづいた組織マネジメントとなるとも考えています。私は、この強みにフォーカスして育成する手法を取り入れて、マーケティング・マネジメントと呼んでいます。
組織やチームは、全員が同じ能力を持つ必要はありません。分析が得意な人、実行が得意な人、人を巻き込むことが得意な人。それぞれの強みを持ち寄り、組織として総合点を高めることが重要です。
各組織が「自律的に成長する」手法
マーケティング・マネジメントの考えを取り入れると、少しマネジメントの定義が変わります。具体的には、「持続的な事業成長を支える組織の成長を促すために、人の強みと成長を引き出して、組織のKPIを持続的に最大化し続ける」と私は定義しています。
マーケティング・マネジメントは、個の強みを組み合わせた組織を創り、成長を引き出して成果を最大化するマネジメントにより、組織が自律的に成果を生み出していく手法なのです。
成果を最大化するためには、各組織の役割がどの変数に責任を持つかを明確にすることが重要です。役割が明確ではない組織は弱く、役割が明確になってこそ個の強みも発揮ができます。したがって、利益やKPIを最大化するために役割を明確にした組織を設計し、個の強みと役割を一致させ、その強みを引き出すマネジメントによってマーケットの変化に自律的に対応しつつ成長する組織を創る。それがマーケティング・マネジメントの考え方です。
組織は人に依存せず、自律的に成長していく仕組みがなければなりません。そのためには個の強みに徹底的にフォーカスする考え方が重要です。「強みを持ち寄った組織とマネジメントでアウトプットが最大化される」という法則は、私もマネジメントでしくじりを繰り返して痛感した学びです。強みに沿わない仕事をお渡しした場合、それがたとえ本人の意志に合致していたとしても、メンバーの成長を引き出せたことはありませんでした。
だからこそ、NexGenではマーケティングとマネジメント双方のノウハウを活かして事業を自律的に成長させていく仕組みを創ることを志向しています。
このマーケティングを取り入れたマネジメント(マーケティング・マネジメント)として組織マネジメントをさらに再定義すると、「人の強みと成長を引き出して、組織成果を最大化すること」となります。
私は、今までの事業や事業伴走での経験を通じて、戦略だけで成長した会社を見たことがありません。必ず、その戦略を実行できる人と組織の成長が存在していました。したがって、マーケティングを担う人が事業成長に責任を持つのであれば、人と組織にも向き合わなければならないのです。
