販売チャネルの分散によるデータのサイロ化と属人化
──マーケティング基盤の内製化に至る前、はなさく生命保険(以下、はなさく生命)ではどのような課題がありましたか?
畝村:私たちダイレクトマーケット推進部は、Webやテレビなどの広告運用を通じてお客様に当社の保険商品を認知・契約いただくことがミッションです。課題は、ダイレクトの申込方法として郵送、Web申し込み、オンライン面談など複数経路あるため、計測データや指標がチャネルごとに分散していたことでした。このサイロ化により、複合的に業務改善のサイクルを回す設計が難しかったのです。
日下部:もう1つの課題は、データチームが行う高度な分析結果の理由や背景が、なかなかチーム全体に伝わらない点でした。「なぜこの結果なのか」をすぐに確認したくても、回答に時間をとらせてしまう心理的な遠慮もあったのです。
畝村:そのため、成果が個人のスキルに依存してしまいがちでした。この属人化を解決するには、豊富なマーケティングデータを活かし、組織全体でナレッジを共有し、経験則だけに頼らず第三者目線でデータを分析できる統合的基盤の構築が必要でした。実現すれば業務の効率化にも、経営に対するアウトプットの基盤にもなり得ます。こうして、マーケティング組織全体で活用できるデータソースの構築を目指すことにしたのです。
高いガバナンス基準をクリアし、部署をまたぐAI活用へ
──電通デジタルとのパートナーシップが始まった経緯を教えてください。
日下部:最初は広告運用の支援を受けることから協業が始まりました。次第に、コンバージョンAPIの設計や、自社で持つ契約データなどのファーストパーティーデータをマーケティング施策にどう活かすかといった、より深い領域へと自然に範囲が広がっていきました。2026年で4年目になりますが、当社の事業を深く理解いただけている点が、電通デジタルさんとの関係が続いている最大の理由です。
──デジタル面だけでなく、保険業界特有の事情もあったかと思います。
日下部:そこは非常に重要なポイントです。保険業界はシステムや法令、個人情報・セキュリティの取り扱いに対するハードルが非常に高いのです。その点で電通デジタルさんには、守るべき基準をすでにご理解いただいているからこそ、プロジェクトのスピードが圧倒的に早く、課題を一緒に乗り越えられる信頼感がありました。こうした積み重ねがあったからこそ、複数の部署をまたいで、高いガバナンス基準が求められるAI基盤の構築にも踏み出せたのです。
──AI基盤構築プロジェクトのゴールと、手法を教えてください。
櫻井:最終的なゴールは「AIソリューションを業務プロセスに組み込み、ワークフローを強化すること」です。しかしAIは技術の進歩が速く、最適なソリューションがその時々で変わります。だからこそ早期に成果を創出し、実アウトプットを確認しながら最終形へ近づける必要がありました。そこで最初のゴールとして、「早期のPoC(概念実証)」を掲げました。
中﨑:今回のPoCでは、はなさく生命様が将来的に使用していく分析AIエージェントを短期間で調査・検証することを目標としました。そこで環境構築としては、はなさく生命様が基盤とされているGoogle Cloud Platform(GCP)の環境を活用し、データマートの設計やファーストパーティーデータの具体的な活用プロセスを一緒に整理していきました。

