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リゾームマーケティングの時代

2020年、現実となったマクルーハンの予言 データとUXと自由、その主権とインテリジェンスの意味

 著者である有園雄一氏の体験告白から始まる本コラム。不思議体験かと思いきや、その思考の枠組みは情報の認知・非認知という視点を経て、デジタル主権の背景と真意にまで到達する。

強烈な体験

 あなたは、夢のなかで夢をみている夢をみたことがあるだろうか? 朝、目を覚ましたとき、夢の記憶がある。だが、その夢の中でも、夢をみていた。夢が入れ子になっているのだ。つまり、夢から目が覚めて、「なーんだ、夢か」と思って朝の身支度をすませて仕事に出かける。それからしばらくして、また目が覚めて、「あれ? また、夢か」と気づく。そんな感じだ。

 入れ子の夢から目が覚めたとき、私はゾッとする。なぜなら、いま自分がいる世界は、夢の世界なのか? 現実の世界なのか?  その区別がつかず、現実感の消失や離人感を抱くことになるからだ。じつは、これは、とても苦しい。(参照:離人感・現実感消失症

 私は19歳の夏、タンクローリーとの事故に遭った。原付バイクに乗車中、私は突然、後方から激突され転倒した。そして、左右の前輪の間を斜めに滑ってタンクローリーの車体の下に飲み込まれた。と思った次の瞬間、左側の後輪で踏まれたのだ。いまでも、はっきりと、大きなタイヤが私の身体の上を乗り越えていく映像をスローモーションで覚えている。私は、その刹那、死んだのだ。その前後の記憶は、はっきりとある。でも、現実感覚は曖昧だ。

 救急車で病院に搬送され、全身麻酔で手術を受けた。手術前に医師が言った。「失敗したら、脚を切断するかもしれません。同意していただけますか?」と。選択の余地などない。私は呆然と、「はい。お願いします」と返した。

 手術から目が覚めて数日後のことだった。病室のベッドの横で看護師が「手術中に埋め込んだ、小さなチューブを抜きますね」と私に言った。幸いにも、手術は無事に成功し、私の身体は切断されてはいなかった。ただ、左脚の内出血が多量だったらしく、左脚の裏側に長さ1センチ弱、直径数ミリのチューブが、おそらく、20本ほど埋め込まれていた。左脚に溜まっている血液を流し出すためだった。

 「あれ、チューブ? どっかで見た気がする。なんでだろう?」と内心、私は思った。看護師がチューブの話をした瞬間、私は、手術中に私の左脚にチューブを埋め込んでいる医師の映像が脳裏に浮かんだ。そして、無意識に私は看護師に言った。

 「チューブ、20本ぐらいですよね。」

 看護師は驚き、気味が悪いと言った。「あれ。なんで知っているんですか?」と。つまり、全身麻酔で意識を失っていた私がチューブのことを知っているのはおかしいのだ。でも、私は、チューブの本数も大きさも知っていた。

 私は、手術中に夢をみたのだ。それは、自分が手術を受けている姿を、空中3メートルぐらいの高さから、私が眺めている夢だった。医師は手術の仕上げの一つとして、チューブを埋めてくれた。

 手術から数日後に看護師が「チューブを抜きますね」と言ったとき、私は自分自身が入れ子の夢をみたことに初めて気がついた。全身麻酔で意識を失っているとき、自分が手術を受けている夢をみたのだとぼんやり思っていた。ただし、その夢は、本物の手術の状況と酷似している夢だった。そして、全身麻酔がとけて、現実の世界に戻ったとき、私は病院のベッドの上にいた。

 私はいまでは、幽体離脱したのだと確信している。もちろん、経験したことのない人は、なかなか信じてくれないだろう。

 しかし、東京大学先端科学技術研究センターの高橋宏知氏の著書『メカ屋のための脳科学入門 – 脳をリバースエンジニアリングする』では、以下のように、幽体離脱の実験例が紹介されている。

「被験者にヘッドマウントディスプレイを装着し、被験者の背中の映像を提示する。被験者に棒を持たせ、前方の人を突かせると同時に、被験者の背中を突く。このとき、背中を突いている様子も視覚的にフィードバックする。これを数分間も続けると、自分が自分を突いているという不思議な感覚に陥る。この状況に混乱した脳は、自分の身体を離脱させることにより、物理的な矛盾を解消しようとする。」(p23)

 被験者の約半数の学生が、幽体離脱したかのような体験をしたらしい。私は、自分の経験としては、宙に浮いたという事実に疑いはない。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

zonari合同会社 代表執行役社長/株式会社ビービット マーケティング責任者/電通総研パートナー・プロデューサー/アタラ合同会社 フェロー早稲田大学政治経済学部卒。 1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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