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翔泳社の本

NFTとは一体何なのか? 今のうちに理解しておきたいトークンの性質やNFTの種類を解説

 マーケティングにおいても活用が進みつつあるNFT。聞いたことがあり、なんとなく知ってはいても、実際にビジネスで利用できるほどの理解はできているでしょうか。今回は書籍『NFTのすべて』(翔泳社)から、トークンやNon-fungible(非代替性)の性質、そしてNFTにどんな種類があるのかを紹介します。NFTはまだ投機性の高いというイメージがあるかもしれませんが、主にデジタル作品やプロモーションの分野で今後の盛り上がりが期待されているため、ぜひ今のうちに基本的な知識を押さえておきましょう。

 『NFTのすべて 歴史・仕組み・テクノロジーから発行・販売まで』の「第2章 NFTとは何か?」から抜粋し、編集したものです。

※本書はMatt FortnowとQuHarrison Terryによる『The NFT Handbook』(2021、Wiley)の邦訳です。

なぜ人は収集するのか?

 NFT(非代替性トークン)は、ブロックチェーンで保護されたユニークなデジタル収集品の機能を持っています。これについて考える前に、「収集」の仕組みを理解する必要があります。ビーニー・ベイビーズ(Beanie Babies)の事例は、私たちがなぜモノを集めるのか、その背景にある不規則で奇妙な心理を明らかにしてくれるかもしれません。

 NFT以前からたくさんのコレクターズアイテムがありました。切手、南北戦争の武器、スニーカーなど、人々はさまざまなものをさまざまな形で集めています。よって、デジタル上でのコレクターズアイテムに市場があることは、驚くことではありません。しかし、「デジタルで収集する」という概念は、現時点では理解しにくいでしょう。それでも、ほかの人が持っていないユニークなアイテムを所有したいという点では、デジタル・コレクターは物理的なコレクターとほとんど変わりません。

 そこで、なぜ人々がNFTを収集するのかを理解するために、1990年代に一世を風靡した収集品と比較してみることにします。ビーニー・ベイビーズの事例です。

 1993年の創業当初から、ビーニー・ベイビーズの創始者であるタイ・ワーナーは、その製品に希少性を持たせていました。このぬいぐるみは、チェーン店や大量注文を避け、小規模な小売店に限定数で販売されました。タイは、人々が欲しがるビーニー・ベイビーズを容易に発見、購入できるようにしたくなかったのです。同社は、ビーニー・ベイビーズの流通数を非公開としていました。また、特定のビーニー・ベイビーズを引退(生産中止)させることにより、さらに独占的な市場を作り出しました。また、意図的に印刷ミスや欠陥のあるビーニー・ベイビーズを流出させたことも知られています。

 ビーニー・ベイビーズが一般的に認知されるようになった頃にeBayが登場し、世界中の収集品を売買するオンラインプラットフォームとして知られるようになりました。相乗効果により、ビーニー・ベイビーズの二次流通が高まり、同時にeBayは多くの収集家にとって貴重なツールとなったのです。引退した5ドルのぬいぐるみを運良く手にした人は、eBayに出品すれば、最低でも2倍から3倍のリターンが期待できることでしょう。また、「Pinchers the Lobster」を「Punchers the Lobster」と誤植したような希少なものもあり、ある収集家は、この商品を再販することで1万ドル以上を手に入れたといわれています。

 1990年代末、ビーニー・ベイビーズが一世を風靡しました。このぬいぐるみを巡って、強盗や殺人事件まで発生したのです。たとえば、1999年にウェストバージニア州のホールマーク社では、ビーニー・ベイビーズの入荷が遅れたことで緊張が高まり、警備員が射殺される事件が起きました。

 まともな大人たちが、人生を変える可能性を秘めた希少価値のあるビーニー・ベイビーズを求めて、探し回ったのです。ある離婚した夫婦は、ビーニー・ベイビーズのコレクションが財産分与の最も重要なものであると考え、所有権を争いました。そして1997年、マクドナルドとTy社は共同でこのブームに乗ろうとある企画を行いました。マクドナルドのハッピーセットに「Teenie Beanies」という小さいぬいぐるみをつけました。そして、わずか10日間で、1億個を売ることに成功したのです。

 最盛期には毎月65万部を売り上げたアメリカの雑誌、『Mary Beth’s Beanie World』は、見開きでビーニー・ベイビーズの特集記事を掲載しました。その中で、「ビーニー・ベイビーズは投機的な商品として価値があり、適切な戦略をとれば、子どもを大学に通わせるのに十分な利益を生むことができる」と、評価したのです。

 ビーニー・ベイビーズが何十年も続く収集品になるかと思われた矢先、すべてが崩れ去りました。高値で取引されるようになったことで買い占める人がeBayに急増し、供給過多となったのです。その結果、ビーニー・ベイビーズの価格は急落しました。一夜にして、貴重と思われたビーニー・ベイビーズのコレクションがほぼ無価値となったのです。投機目的で10万ドル以上を費やしたクリス・ロビンソン・シニアという人の話は、この一連のブームの大敗を象徴するものとなりました。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、ビーニー・ベイビーズを「1990年代後半のサッカーママ界におけるドットコム株」になぞらえました。我々は、NFTがビーニー・ベイビーズと同じ運命にある、つまり、バブルが崩壊する運命にある、といっているのではありません。ビーニー・ベイビーズの事例は、人々がなぜ収集をするのか、その原動力を教えてくれるものなのです。ビーニー・ベイビーズの収集に人々を駆り立てたのと同じ基本原理が、NFTの収集に当てはまります。投資、投機、感情的なつながり、知らないことへの恐怖(FOMO:The Fear of Missing Out)、獲得のスリルなどほかの要因もコレクターを刺激しますが、収集の核心は希少性です。何を集めるにしても、その数が限られているからこそ、人は集めたくなるのです。

 NFT市場は暴落する可能性があるのでしょうか? あらゆることが起こりうるといってよいでしょう。しかし、NFT市場はビーニー・ベイビーズとは異なり、美術品や収集品市場を悩ませている問題に対する現実的な解決策を提供します。これについては、第3章「なぜNFTに価値があるのか?」で詳しく述べます。それでは、物理的であれ、デジタルであれ、人々が収集する理由を説明したところで、本題に入りましょう。NFTについてです。

NFTとは一体何なのか?

 NFTは一般に、Beepleのデジタルアート、ロバート・グロンコウスキーのデジタルトレーディングカード、アメリカの著名なバラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ」のショートビデオ、アメリカのコメディグループ、三ばか大将の占い師カーリーの写真とそれに付随する特典、そしてCryptoKittiesなど、デジタル・コレクティブルとして知られています。しかし、NFTとは一体何なのでしょうか?  NFTは、暗号資産に使用されているのと同じ技術であるブロックチェーンによって検証、保護されたユニークなアイテムです。NFTは、特定のアイテムの起源、所有権、希少性、永続性などを提供します。ここで、非代替性トークンという用語を詳しく見てみましょう。

トークン

 まず、トークンという単語から説明しましょう。Dictionary.comによると、トークンの定義の1つは、「a memento(小さな記念品); souvenir(旅行・場所・出来事などの思い出となるような)記念品);keepsake(形見、思い出の品)」だそうです。

 NFTは一般的にデジタル上でコレクションできるものとして知られているので、NFTのトークンはこの定義に由来していると思われるかもしれません。しかし、NFTのトークンは、ブロックチェーンという全く異なるものに由来しているのです。「はぁ、技術的な話がはじまってしまったなぁ……」と気をもんでいる方もいるかもしれませんが、NFTを完全に理解するには、ブロックチェーンについて少し学ぶ必要があるのです。

 ビットコインやその他の暗号資産について耳にしたことがあるのではないでしょうか。インベストペディアによると、暗号資産とは「暗号技術で保護されたデジタルまたは暗号資産」だそうです。ただ、暗号資産がデジタル通貨であることを念頭に置いておいてください。暗号資産はインターネット上に存在するデジタル通貨であり、投資目的で売買したり、暗号資産でものを買ったり、あるいは暗号資産を出資することもできるものです(この場合、暗号資産を貸して利息を得るという意味です)。

 売買、送金、投資など、誰かが暗号資産で取引するときは、その取引は必ず検証されなければなりません。検証プロセスでは、送信者が送信される量の暗号資産を持っているかどうかを判断します。これにより、暗号資産の安全性と信頼性が保たれるのです。暗号資産の取引が検証されるとき、たとえばビットコインでは、単一の取引ではなく、取引のグループに対して検証が行われます。この暗号資産取引の一連のデータはブロックと呼ばれます。各ブロックには一定の記憶容量があります。ブロックが埋まり、取引が確認されると、その取引ブロックは先に確認されたブロックに追加され、増え続けるブロックの連鎖、いわゆるブロックチェーンが形成されます。このプロセスを繰り返し、ブロックチェーンはどんどん長くなっていきます(図2-1参照)。

図2-1 ブロックチェーンのイメージ
図2-1 ブロックチェーンのイメージ

 つまり、暗号資産のブロックチェーンは、その通貨のすべての取引リストであり、対象の暗号資産の誕生までさかのぼることができます。誰かがビットコインを売買したり、ビットコインで購入、交換、送金したりするたびに、その取引はビットコインのブロックチェーンに記載されます。1日のビットコイン取引数は2021年1月時点で約40万回に達し、イーサリアム(第2位の暗号資産)は1日に110万回以上処理されています(参照:Statista.com)。ブロックチェーンは、極めて長い会計台帳だと考えてください。

コイン対トークン

 暗号資産について語るとき、人々は大抵の場合コインとトークンという言葉を使い分けています。そこには、重要な違いがあるからです。ビットコイン、ライトコイン、ドージコイン、イーサリアムなどのコインである暗号資産は、それぞれのブロックチェーンを持っています。これに対して、トークンは、独自のブロックチェーンを持たない暗号資産です。その代わり、トークンはブロックチェーンの機能を利用して存在しています。

 たとえば、ゲームクレジット(GameCredits、GAME)やスシトークン(SushiToken、SUSHI)など、その他何千ものトークンは、イーサリアムブロックチェーンを利用したトークンです。イーサリアムブロックチェーン上に存在する暗号資産トークンは、ERC-20トークンとしても知られています。ERC-20とは、暗号資産トークンを作成するためのイーサリアムの標準規格のことです。ゲームクレジットは当初、独自のブロックチェーンを持つコインであったという興味深いコインです。しかし、イーサリアムのネットワークが提供する優れた機能を利用するために、ERC-20トークンに切り替えたのです。つまり、現在、ゲームクレジットの取引(およびほかのすべてのERC-20トークンの取引)は、イーサリアムのブロックチェーンに記録されています。これが、イーサリアムが1日に多くのトランザクションを処理する理由です。

 つまり、NFTのトークンは暗号資産トークンなのです。NFTはブロックチェーン上に存在しています。現在、ほとんどのNFTはイーサリアムのブロックチェーン上に作成され、そこで取引されています。一部のNFTはWAX、Binanceスマートチェーン、その他いくつかのブロックチェーン上に存在します。

Non-fungible(非代替性)

 トークンの説明を終えたところで、次に非代替性という特徴に目を向けてみましょう。Fungible(代替)とはどういう意味でしょうか? Dictionary.comによると、fungibleは形容詞で、「(特に商品について)自由に交換できるような性質や種類であること、全体または一部を、同様の性質や種類の別のものと交換できること」を意味するそうです。では、例を挙げながら見ていきましょう。

 ドルは交換可能です。私たちがあなたに5ドル紙幣を渡し、あなたが私たちに1ドル紙幣を5枚返す場合、交換価値は等しくなります。どのドル紙幣を渡したかは関係ありません。1ドル札の束があったとします。そのうちのどの5枚を私たちに渡しても、それは問題にはなりません。5ドルをVenmoで送ることもできます。ドルは完全に交換可能なのです。

 同様に、暗号資産も交換可能です。あなたがビットコインを送ったら、それがどのウォレットから送られたものであろうと、ビットコインはビットコインです。1ドルが1ドルであるのと同じことです。

 ドルもドルであるように、ビットコインもビットコインなのです。(先の定義で指摘したように)石油樽のような一部の財や商品でさえ、交換可能であると見なされます。どの樽を送ってもいいのです。同じグレードの石油であれば、どの樽でもいいのです。この定義からすると、代替性のない品は自由に交換したり、類似品に置き換えたりすることができないことがわかります。たとえば、ダイヤモンドは非代替です。ダイヤモンドは、大きさ、色、透明度、カットなど、1つひとつが個性的で、もし、あなたが特定のダイヤモンドを買ったとしても、それはほかのダイヤモンドと簡単に交換することはできないでしょう。同様に、NFTは非代替性のものです。それぞれのNFTはユニークで、あるNFTを別のNFTと自由に交換したり、取り替えたりすることはできません。

 それぞれのNFTの特徴は何でしょうか? あなたはこう思っているかもしれません。結局、インターネット上に存在する画像をダウンロードしたり、コピーして共有したりすることは容易にできるのではないでしょうか? その通りです。しかし、NFTの特徴は、その画像(正確には、画像の所有権と保管場所を証明するデータ)をブロックチェーン上に記録することができることです。これをミント(鋳造)といいます。NFTの世界では、私たちが日々使う法定通貨の小銭を鋳造するのと同じように、ブロックチェーン上で記録するためにトークンをミントします。

 暗号資産のコインやトークンが作成されると、それらはミントされます。通常、特定の暗号資産では、数百万から数十億のコインやトークンが採掘またはミントされます。一般に、暗号資産には、すでにミントされたコインやトークンの数である循環供給量と、ミントできるコインの総数である最大供給量があります。最大供給量は、暗号資産を作成したオリジナルのコードに焼き付けられており、変更することはできません。

 これとは対照的に、米ドルのような不換紙幣は、ドルを増刷することで継続的に供給量を増やすことができます。ドルの需要が同じであれば、ドルを印刷すればするほど、1ドルあたりの価値は下がります。したがって、ドルやほかの不換紙幣の最大供給量は存在しません。

 ビットコインの最大供給量は2100万コインですが、たとえば、ERC-20トークンであるUniswap(UNI)の最大供給量は10億トークンとなっています。NFTは暗号資産のように機能しますが、NFTの最大供給量は1です。これがNFTのユニークな点であり、同種のものがないため自由に交換することができない点です。NFTを絵画の原画のように考えてください。絵画は複製や印刷が可能ですが、オリジナルは1つしかありません。

 NFTの最大供給量が1であることを説明しましたが、1より大きい供給量のNFTを鋳造することも可能です。たとえば、同じNFTの「コピー」を100個作ることができます。厳密には、100個のトークンのうちの1NFTです。各トークンは、同じ効力を発揮するため、同じNFTのほかのトークンと交換することができます。このようなマルチトークンNFTはNFTと見なされますが、供給量が限られているとはいえ、交換可能であるため、技術的にはNFTとは呼ばないことにします。

 マルチトークンNFTと、限定版や特別なデザインのシリーズものは区別する必要があります。たとえば、ロブ・グロンコウスキーは、4つのシリーズNFTを発行し、各シリーズのデザインは彼が出場したアメフトのチャンピオンシップを表しています。各シリーズは、彼の背番号である87のNFTが発行され、1/87から87/87が記載されています。

 同様に、三ばか大将のNFTシリーズ「All Stooge Team」は30枚の同じデザインのNFTがナンバリングされたものです。図2-2はその中の#19の作品です。

 図2-2のNFTは30個のシリーズの一部ですが、この作品に限っていえば、(ナンバリングされていることから)供給量1のユニークなトークンであり、まさにNFTです。同様に、グロンコウスキーのNFTもそれぞれユニークなNFTといえます。

図2-2 三ばか大将のNFT「All Stooge Team」#19 of 30
図2-2 三ばか大将のNFT「All Stooge Team」#19 of 30

 一方、マルチトークンNFTは、限られた回数だけ鋳型から鋳造され、その後鋳型が壊される彫像のようなものといえます。各像はオリジナルであると同時に、鋳型から作られたほかの像と同一です。各像に順次マークがつけられ、各像がユニークになる場合、このケースには当てはまりません。

 作品番号は、異なる価値を持つことがあります。一般的に物理的なアート作品の場合、最初に印刷されたもの、つまり500番中の1番に最大の価値を与えます。しかし、NFTでは、この作品番号の価値が異なる場合があります。

 たとえば、NBA Top Shots NFTでは、選手の背番号と同じ番号のエディションが最も価値が高いとされるのが一般的です。レブロン・ジェームズの場合、エディション#23が最も価値が高く、ルカ・ドンチッチの場合はエディション#77が最も価値が高くなります。このような特別な要素がない場合、作品番号1は、アートプリントのように最高の価値を持つ可能性があります。

 繰り返しになりますが、ロブ・グロンコウスキーと三ばか大将のNFTでは、個別の番号は、それぞれ別に鋳造する必要があることを忘れないでください。マルチトークンNFTの場合、そのNFTのすべてのトークンが1回のミントで作成されます。

NFTの種類

 一般的にNFTというと、デジタルアートや収集などを目的としたNFTコレクションを思い浮かべるかと思います。メディアで報道されているものは、特に高値で取引されているNFTです。しかし、NFTにはほかにもいくつかの種類があります。このセクションでは、これらのNFTをすべて取り上げます。

デジタルアートと収集

 デジタルアートは、1950年代に起源を持つ比較的新しい芸術の形態です。1980年代から1990年代にかけてコンピュータが普及すると、デジタルアートは急速に普及しました。一般的に、アートとは、キャンバスに描かれた絵画や大理石の彫刻のことでした。デジタルアートは、コンピュータやスマートフォンで制作されますが、「デジタルで制作・保管・鑑賞」されているという点で、そのデジタル性そのものが新しい芸術領域といえます。もちろん、画像はプリントアウトすることもできますが、真のデジタルアートはデジタルのままであることに意味があるのです。

 デジタル・コレクターズアイテムは、デジタルアートと同様、デジタル上で制作、保存されることを想定して作られています。しかし、コレクターズアイテムには、一般的に、特定の人気テーマがあります。前出のロブ・グロンコウスキーのデジタルトレーディングカードNFTや三ばか大将のNFTなどがそうです。もちろん、これらのグッズには、かなりの芸術的努力が注ぎ込まれており、それ自体がデジタルアート作品となっています。たとえば、グロンコウスキーのNFTは、アーティストのブラック・マードレがイラストを描き、グロンコウスキーがクリエイティブディレクションを担当、また、三ばか大将のNFTの一部は、アーティストのパトリック・シアが制作を担当しました。

 デジタルアートやNFTコレクションは、以下のいずれかの形態 をとることが一般的です。

  • 画像
  • ビデオ
  • GIF
  • 音声
  • 3Dモデル
  • 書籍と文章

画像

 NFTの多くは、CryptoPunksやBeepleの作品など、単なる静止画像です。デジタルで撮影されたものであれ、デジタル形式に変換(スキャン)されたものであれ、あらゆるタイプの画像が含まれます。もちろん、画像はオリジナルの芸術作品であっても、それらを組み合わせてもよいのです。当たり前ですが、静止画なので動作はありません。

 NFTでは、画像のサイズや解像度に制限はありませんが、NFTのマーケットプレイスによっては、提供できるファイルサイズを制限している場合があります。一般的には、大きな画面で表示できるように、高解像度の画像を提供することをおすすめします。

ビデオ

 動画もまた、NFTで人気の形式の1つです。NBAの歴史的な瞬間のハイライト動画を収録した「NBATop Shots NFTs」は、5億ドル以上の売上を達成しました。当然のことながら、ルブロン・ジェームズのNFTsが最も人気を博しています。動画は実際の映像だけでなく、デジタルアートとしても人気が高まっています。たとえば、ロブ・グロンコウスキーのコレクターズカードは、静止画ではなく動画です。デジタルならではの効果を狙ってデザインされたものです。グロンコウスキーのアートワークが表示されるのみならず、カードが反転して、裏面に作品番号や詳細情報が表示されます。裏面には、作品番号やグロンコウスキーのアメフトに関する情報が、より詳しく記載されています。

GIF

 GIFは、自動的に繰り返される(またはループする)短く簡易なビデオに使われるファイル形式です。GIFはGraphic Interchange Formatの略で、静止画にも対応しています。実は、GIFはもともと静止画用に開発されたものですが、1つのGIFファイルに複数の画像を格納できるため、短い動画やアニメーションに活用されるようになりました。動画やアニメーションのGIFをアニメーションGIFと呼ぶ人もいます。しかし、私たち(そしてほとんどの人)にとって、GIFが静止画であっても、GIFをアニメーションGIFと呼ぶことは不要です。今は、アニメーションでない限り、GIFファイル形式を使う理由はないからです。

音声

 音声のNFTも作ることができます。アメリカのバンドKings of Leonは、NFTのアルバムをリリースした最初の人気バンドで、 200万ドル以上の売上を記録しました。

 メジャーアーティストだけでなく、インディーズアーティストもオーディオNFTなどの音楽を売るだけでなく、ファン層を広げるための素晴らしい方法として期待されています。

 NFTには、MP3よりWAVファイルをおすすめします。というのも、MP3ファイルは圧縮されていますが、WAVファイルは非圧縮なので高音質で再生できるからです。OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスでは、音声NFTのプレビュー画像(またはGIF)を含める設定になっていることがあります。これは、アルバムのカバーアート、またはその他の画像やGIFを設定します。

3Dモデル

 3Dモデルとは、現実世界または概念的な物体や芸術的デザインを3次元で表現したものです。3Dモデルは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、ビデオゲーム、映画、建築、医療やその他科学など、いくつかの業界において不可欠なものです。3Dモデリングは、デジタルアーティストの間でも人気を博しています。

 3Dモデルは、VRやARのヘッドセットで見ることができます。また、パソコンのマウス(スマートフォンやタブレット端末では指)で操作することで、2次元の画面上に表示され、全方向に回転させたり、拡大・縮小させたりすることができます。3Dプリンターで3Dモデルを印刷する(物理的なモデルを作る)こともできます。

書籍と文章

 NFTのコンテンツは、詩や短編小説などのテキストだけでなく、書籍でもありえます。(執筆時点では)NFTの本や文書の例をあまり見たことがありませんが、もしあなたが自分の文章をマネタイズする別の方法を探しているなら、NFTはうってつけの方法かもしれません。

ゲーム内アイテム

 現在、全世界のビデオゲーム人口は28億1000万人で、2023年には30億人を超えると予想されています。これは、世界人口に占める割合としては非常に大きなものです。

 カウンターストライク:グローバルオフェンシブ(Counter-Strike:Global Offensive 、CS:GO)やDota 2など、数多くの人気ゲームにおいて、武器や防具、スキン(防具などにかぶせるデザイン)などのゲーム内アイテムが販売されています。

 そのため、手っ取り早く装備を整えたい場合は、何時間もかけてゲーム内でアイテムを獲得できるまでただ待つのではなく、代わりにさまざまな装備を購入することができます。多くのゲーマーは、ゲーム内でより多くの武装力やその他の優位性を求めてり、時間をかけてただ待ちたくはないのです。これらのアイテムは、もとをたどれば単なるコンピュータコードで作られたものです。よって、ゲーム開発者は、莫大な利益を得ることができます。

 人気ゲーム「ゴッズアンチェインド」のウェブサイトによると、2019年、プレイヤーはゲーム内アイテムに870億ドルを費やしたそうです。

 プレイヤーは、1つのゲームをプレイするうちに、複数のアイテムを蓄積していくことがあります。しかし、あるとき、別のゲーム、つまり次の楽しい体験をしたくなります。当初、プレイヤーは購入したゲーム内アイテム(時には比較的高額なもの)を手放せませんでした。その後、ゲーム内アイテムのマーケットプレイスが登場し、不要になったアイテムを、ほかのプレイヤーに販売することができるようになりました。アイテムによっては、もう手に入らないレアなものもあります。

 各所のレポートによると、プレミアがついているCS:GOスキンに10万ドルから15万ドルを支払ったプレイヤーもいるといわれています。

デジタル・トレーディングカード

 トレーディングカードというと、野球カードやその他のカードがパックになったもの、あるいはバブルガムと一緒になっているものを思い浮かべるでしょう。少なくとも、そのようなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。

 その他の人気のトレーディングカードは、「マジック:ザ・ギャザリング」などの人気ゲームのコレクター用デジタルゲームトレーディングカードです。マジック:ザ・ギャザリングはどのくらい人気があるのでしょうか? Wikipediaによると、プレイヤーは3500万人以上いて、2008年から2016年の間に200億枚以上のマジックカードが生産されたそうです。

 これらは、ゲームプレイで使用される実際のカードで、さまざまな種類のパワーや呪文を表しています。マジックカードは、取引所やeBayのようなサイトで取引されています。

デジタル不動産

 ゲーム内アイテムと同様に、デジタル不動産(仮想不動産とも呼ばれる)もNFTとして販売することができます。デジタル不動産は現実には存在しないため、矛盾しています。しかし、仮想環境を作るという目的では、土地または土地上の構造物であり、現実世界と類似した価値を持ちうるという点で不動産だといえます。Decentraland(ディセントラランド)のような仮想世界は、現実世界をマネしたオンライン環境であり、大勢の人々が世界を探索し、カスタマイズされたユーザーの自己表現メディアであるアバターを通じて交流します。 仮想世界の人々は、かつての開拓者のように、仮想世界の中によい土地を購入して定住したいという願望を持っています。あるいは、現実世界と同じように、投機家が将来的に利益を得るために、いくつかの区画を買い占めるかもしれません。

ドメイン名

 OpenSea NFTマーケットプレイスには、ドメイン名のセクションがあります。ブロックチェーンドメインは素晴らしいNFTになります。区別しておきたいのは、ここではブロックチェーンのドメインについて話しているのであって、インターネットを閲覧する際に思い浮かべる通常のドメイン名について話しているのではありません。

 ICANNは民間の非営利団体で、グローバルドメイン名システム(DNS)のポリシーを設定し、誰がどのドメイン名を所有しているかを記録しています。

 ICANNの一部ではなく、ブロックチェーンドメインの所有権は、暗号資産やNFTの所有権と同じように、ブロックチェーンによって決定されます。同様に、ブロックチェーンドメインも暗号資産ウォレットに保有されます。

 暗号資産ウォレットについては、第6章「NFTの作成とミント」で詳しく説明します。要するに、ブロックチェーン・ドメインはブロックチェーンアセットであり、NFTになるのです。

 ブロックチェーンドメイン名は、「.crypto」や「.eth」などの拡張子を持ち、一般的にウェブサイトへのアクセスに使用されることはありません。その代わり、主に暗号資産の支払いを簡略化するために使用されます。

 第6章で詳しく説明しますが、暗号資産のアドレスは、ランダムな数字と文字で構成されています。このアドレスは、暗号資産ウォレットを保護する秘密鍵とは対照的に、あなたの公開アドレスまたは公開鍵とも呼ばれることがあります。ビットコインのアドレスは通常34文字で、たとえば「18ZW9AQGdsYcCUYrrp1NDrtjAnTnTX4zRG」のようになります。また、イーサリアムのアドレスは42文字で、たとえば「0x969Bbaa8473180D39E1dB76b75bC89136d90BD84」のようなものです。

 「.crypto」ドメインを使用すると、ドメイン名と暗号化アドレスを関連付けることができます。

 たとえば、「example.crypto」というドメイン名を持っていたとします。この場合、Bitcoin、イーサリアム、その他の暗号資産を、長いアドレスではなく、そのドメイン名で受け取れるように設定することができます。誰かがあなたのアドレスを尋ねたら、ドメイン名を送るだけで、送られる暗号資産はあなたの関連する暗号資産アドレスに送られます。

 欠点としては、暗号資産を送る人があなたのドメイン名のスペルを間違えた場合、あなたはそれを受け取れず、ほかの人のウォレットに入ってしまう可能性があることです。

 ブロックチェーンドメインは、現在、初期導入段階にあり、通常のTLDドメインほど主流になるにはいたっていません。とはいえ、NFTブロックチェーンドメイン市場は、ブロックチェーンドメインNFTである「win.crypto」に10万ドルが支払われた例を見ても、市場が過熱し始めていることがわかります。

 一般名称を含むブロックチェーンドメインを手に入れるチャンスはまだあり、ブロックチェーンドメインの普及が進めば、価値が高まる可能性が高いでしょう。もちろん、どれくらいの時間がかかるか、大量導入が行われるかどうかは全く保証されていません。それが投機家といわれる人たちの運命です。

イベントチケット

 NFTのチケットでは、NFTの真正性がブロックチェーンで検証されるため、チケットの有効性を検証する中央集権的な組織が不要になります。第二に、NFTは転売によって生じた利益の一定割合を、チケットを作成した組織に自動的に送ることをプログラムで規定することができます。

 NBAチーム「ダラス・マーベリックス」のオーナーで、テクノロジーに関しても精通しているマーク・キューバンは、マーベリックスのチケットをNFT化しようと考えています。2019年3月のCNBC.comの記事で、彼は「消費者であるファンがチケットを買って転売できるだけでなく、二次市場でもそのロイヤリティを稼ぎ続けられるような方法を見つけられるようにしたい」と述べています。

ツイート

 2021年3月、ジャック・ドーシーが最初のツイートをNFTとして290万ドルで売ったというニュースをご存じでしょうか。まさか、ツイートをNFT化できるなんて、誰が想像したでしょうか。NFTのコンテンツが持つ可能性は、予想以上に大きいということです。

NFTのすべて 歴史・仕組み・テクノロジーから発行・販売まで

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NFTのすべて
歴史・仕組み・テクノロジーから発行・販売まで

著者:キューハリソン・テリー、マット・フォートナウ
翻訳:Pivot Tokyo(満木夏子)
発売日:2022年12月21日(水)
定価:2,200円(本体2,000円+税10%)

本書について

本書は「そもそも人はなぜ収集するのか」「デジタルアートへと続く、現代美術の流れ」「NFTは何を変えるのか?」といった、本質的な内容を、NFTの歴史とともに解説した翻訳書です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/28 07:30 https://markezine.jp/article/detail/40788

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