ナハトが仕掛ける「ジャンルレス」なD2C戦略
━━まずは、ナハトという会社がどのような背景を持ち、なぜ今D2C事業に注力しているのか、安達社長から伺えますでしょうか。
安達 ナハトは現在、インフルエンサーマーケティングやSNS広告運用、そしてD2C事業をはじめとした自社事業という3つの柱で動いています。創業当初はインフルエンサーマーケティングの支援から事業を拡大し、組織拡大とともに2025年度の連結売上高は310億円まで成長してきました。最近では「働きがいのある会社ランキング(中規模部門、Great Place To Work発表)」でナンバーワンに選ばれたことも、我々の成長を象徴する出来事だと思っています。
中田 私はナハトの執行役員を兼任しながら、子会社のBoldies(ボルディーズ)の代表を務めています。Boldiesのミッションは、ナハトが培ってきた圧倒的なSNS運用力やナレッジを活かして、D2C事業を一気通貫で展開することです。
世の中のメーカー様の多くはマーケティングを代理店に委託されますが、私たちは自分たちで「良い商品」を企画し、ブランドを構築し、マーケティングからファン化までを自社完結させています。
━━特定のジャンルに縛られない「ジャンルレス」な展開が特徴的ですね。
中田 はい。ヘアケアブランドからガジェットまで、ジャンルレスに非常に幅広く手掛けています。私たちが大切にしているのは「雑食であること」です。美容メーカーだから美容ブランドを出す、という固定観念はありません。市場の熱量があり、私たちのマーケティング力が活かせる領域であれば、ジャンルを問わず挑戦します。
もちろん商品を出す基準はあり、消費財中心でリピート性があること、そしてマーケットサイズが十分に大きく、投資に対して適切なリターンが見込めるものであることです。その戦略の中から生まれた代表例が、今回お話しする「magpic」なのです。
求められる「検索」から「発見」への対応 magpicのTikTok Shop活用背景
━━ヒット商品となった「magpic(マグピク)」について、改めてその特徴を教えてください。
中田 一言で言えば、マグネット式のスマートフォンホルダーです。金属面であればどこでもスマホを固定でき、三脚なしで撮影ができる点が最大の特徴です。TikTokなどへの動画投稿が当たり前になった今、若者にとって「三脚を持ち歩くのは面倒」という課題がありました。また、外出先で全身を映したダンス動画を撮りたいとき、電柱などにもくっつくmagpicは非常に便利なんです。
━━単なる便利グッズ以上の「体験」を提供しているように感じます。
中田 そうですね。当初は「若者の自撮り用」というフックでSNS拡散を狙いましたが、そこからさらにターゲットを広げていきました。たとえばジムでのフォームチェック、キッチンでレシピ動画を見ながらの料理、さらにはペットや赤ちゃんの撮影など、「どこでも手軽に撮れる・見れる」という体験を意図的に仕掛けていきました。
━━その販路として、なぜ今「TikTok Shop」を最重視されたのでしょうか。
中田 EC市場が「検索型」から「発見型」へと大きくシフトしているからです。これまでは検索エンジンで検索して比較・検討し購入するのが主流でしたが、今はSNSや動画プラットフォームで動画を見ていて、欲しいと思った瞬間にその場で購入できるスピード感が求められています。
これまではTikTokで商品を知っても、一度アプリを離れてECサイト・モールへ遷移する必要があり、そこで大きな離脱が生じていました。TikTok Shopであれば、欲しいと思った瞬間にアプリ内で決済まで完了する。このシームレスな購買体験こそが、これからのECのスタンダードになると確信しました。
安達 ナハトとしても、TikTok Shopの国内上陸には注目していました。国内のTikTok Shopの担当者とも上陸前から情報交換を行い、日本でこれが爆発することは予見できていました。ナハトとしては「まずは国内で一番になるために、全力でリソースを投下する」という意思決定をしました。自社でライブコマーサーをスカウトし、ライブ専用スタジオを完備するなど、TikTok Shop活用を推進するための様々な取り組みを行ってきました。

