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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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ブランディング先進企業に学ぶ、マーケティング戦略としてのブランディング

スターバックス「CMO」が「CRMO」に。人を中心にビジネスを展開する組織戦略としてのブランディング

CMOを拡張しCRMOへ。その背景は?

木村:森井さんは10月付けで、CMOからCRMO(Chief Retail and Marketing Officer)になられました。マーケティングの責任者としては、前例がないほど広い領域を統括されることになると思います。というのも、大手外食チェーンなどを見ていても、いわゆるコミュニケーションと店舗運営でマーケティングは分かれていて、多くはコミュニケーションを担当するのがCMOの役割となっているようです。スターバックスのCRMOは、店舗でのエクスペリエンスを含めてマーケティングを統括していくポジションだと聞いていますが、CRMO設置にはどういった考えがあったのでしょうか?

森井:冒頭で、商品を作ったり、コミュニケーションを企画したりする私の仕事は要素の一つにしか過ぎないというお話をしました。その話がここにも通じてくるのですが、商品もコミュニケーションもデジタル施策も、スターバックスのマーケティングはすべて「体験を作る要素」という位置づけです。これらの要素がお客様に届けられるのは「店舗」ですから、お客様の体験を良くするためのマーケティングを一気通貫で行うために「R(Retail)」まで網羅するというのが、CRMO設置の大きな理由です。

 また、木村さんが触れられた大手外食チェーンは、多くがフランチャイズ制を採っていると思います。そのモデルの違いが前提としてありつつ、やはりスターバックスの根幹はピープルビジネスなのです。「R(Retail)」に加えて、「人」の要素があって初めてスターバックスのビジネスは成り立ちます。だからこそ、特に日本では直営にこだわってきたわけです。

 マーケティングに「R(Retail)」と「人」の要素を加え、これまで以上に相乗効果を出すことで、お客様の体験価値をさらに高めていく。これがCRMOとして私に課されているミッションです。

マーケティングとは、経営である

木村:CRMOとしての主な仕事は、店舗での体験作り、たとえば空間づくりや演出などが主になってくるのでしょうか?

森井:基本的には、「人」へ注力していくことになると思います。お客様の体験価値を高めるために、パートナーが個性やオーナーシップを十分に発揮できる環境づくりをしていきます。

 次は、パートナーのエンゲージメントの向上ですね。スターバックスでは、プロモーションや様々な施策をどのように各店舗でお客様に伝えるかを、それぞれの地域のお客様をよく知る店舗のオーナーシップに委ねています。たとえば、マーケティングが企画した「タンブラー部」という継続施策があります。この施策の導入時期に店舗に行くと、様々な伝え方でタンブラー部が紹介されていたのですが、これらもすべてパートナーたちの自発的な取り組みでした。タンブラー部という活動を自分たちなりに解釈し、自分たちの立っている店で何をすべきか・何をしたいかを話し合って、お客様に届けてくれています。

 これは、スターバックスへのパートナーのエンゲージメントが高くないと絶対に実現できないことですよね。

スターバックスの店内のスペースに掲示された「タンブラー部」の紹介。いずれも店舗のパートナーが自発的に取り組んでいるもの
スターバックスの店内のスペースに掲示された「タンブラー部」の紹介。いずれも店舗のパートナーが自発的に取り組んでいるもの

タンブラー部:サステナビリティ活動の一環として、2023年5月に開始した発足したプロジェクト。タンブラーをもっと「楽しく」「気軽に」「継続的に」利用してもらうことを目的に、楽しみながらマイタンブラーを使うことで、使い捨てからリユースへのシフトを推進している。

木村:パートナーの皆さんの「ブランド愛」を深めていくわけですね。具体的には、どういう取り組みを考えられていますか?

森井:まだ着任したばかりなので、具体的な始動はこれからですが。たとえば、企画の届け方ひとつとっても、一斉に業務連絡を回して、資材を店舗に送って終わりにするのか。それとも「へえ、そうなんだ」と興味を持ってもらえるようにストーリーを伝えて、お店の中で自発的な議論や行動を促すようにできるのかで大きく変わってきますよね。パートナーのエンゲージメントや「ブランド愛」を高めることで、さらなるお客様の体験価値やブランド価値の向上につながるようにしていきたいと考えています。

木村:そうなると、マーケティングというより、組織戦略と言えるかもしれません。すごいですね、経営そのものです。

森井:マーケティングって経営ですよね。私はそう解釈しています。ウェブマーケティングなども専門領域としてありますが、広義の意味では経営だと考えています。

 マーケティングは経営戦略に直結するところですから、どんなマーケターにおいても経営視点を持つことはとても大事です。会社がどこを目指しているのかを理解した上で自分の仕事をしないと、経営のゴールには繋がらないかもしれない。自分の仕事がどこに繋がっているかを理解しておくことは非常に重要です。これができている人は、すごく伸びていくように思います。

木村:経営=マーケティングであるというのは、私もまったく同じ考えを持っています。マーケティングの上流戦略の根幹とも言えるブランド形成もまた経営と表裏一体で、スターバックスにおける体験を生み出すお店、そしてお客様と向き合う人こそがスターバックスのブランドの根幹であることを再認識しました。

 私はマーケティングや経営においてブランド戦略 に向き合うことは最も重要な核を成すという考えで『ブランド・パワー』を執筆しました。そして、やはり僕のマーケターとしての基礎を作ってくださったのは、森井さんや第1回にご登場いただいた中川さんたちなんだなと、今日のお話しを聞いて改めて感じました。それぞれが経営に向き合いながら常に考えれていることは、自身の企業が有するブランドに対するお客様の評価に向き合い、それを磨き続けてることを愚直に行われていることを再確認できたからです。

 久しぶりにお会いできたので、もう少し色々お話しさせて下さい!

11月27日(月)に後編『マーケが「one of」でも経営視点で社内をドライブしていく。スターバックスCRMOが語るCMO像』を公開予定です。ぜひ合わせてご覧ください。

 

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/43994

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