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『MarkeZine』(雑誌)

第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

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【新年特集】2024→2025 キーパーソンによる予測と展望

2025年は「マーケティングの本質」に立ち戻る―AI時代こそ見直される「人」の価値―

 日本マクドナルド「スマイルあげない」、日産「GREENJOURNEY」、自社開発の「SHELLTEC(シェルテック)」などの注目プロジェクトを手がけ、2024年にはLIA「Regional Agency of the Year for Asia」やCampaign「Japan Creative Agency of the Year」を受賞するなど様々な方面で活躍を見せるTBWA\HAKUHODO。日本のクリエイティブをリードする同社の細田氏に 2025 年のキーワードをうかがった。  

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広告代理業の再定義を進めた2024年

 当社にとって2024年は、以前から取り組んできた様々な活動が花開いた年だったと思います。

株式会社TBWA\HAKUHODO ChiefCreative Officer/Disruption Lab 細田 高広氏。博報堂、TBWA\CHIAT\DAYを経て現職。KIT虎ノ門大学院客員教授。2023年より2年連続でCampaign誌より日本と韓国の「クリエイティブ・リーダー・オブ・ザ・イヤー」に選出。主要クリエイティブアワードの多くでグランプリを獲得、世界的な広告賞で審査員も務める。著書に『コンセプトの教科書』(ダイヤモンド社)など。
株式会社TBWA\HAKUHODO ChiefCreative Officer/Disruption Lab 細田 高広氏
博報堂、TBWA\CHIAT\DAYを経て現職。KIT虎ノ門大学院客員教授。2023年より2年連続でCampaign誌より日本と韓国の「クリエイティブ・リーダー・オブ・ザ・イヤー」に選出。主要クリエイティブアワードの多くでグランプリを獲得、世界的な広告賞で審査員も務める。著書に『コンセプトの教科書』(ダイヤモンド社)など。

 大きな取り組みとしては、広告代理業の再定義を進めてきました。ブランド体験全体を包括的に捉える「トータルブランドエクスペリエンス」の考え方に基づき、商品開発やパッケージデザイン、さらにはビジネスモデルの構築といった、より根本的な部分からブランド作りに関わるようになっています。

 この新しい領域を「イノベーション領域」と呼び、その実現のために「イノベーションハブ」という新チームを設立、クリエイティブ部門だけでなく、アカウントやストラテジー部門も含めた全社的な再編成を行いました。日産自動車(以下、日産)様との「GREEN JOURNEY」プロジェクトがその代表例です。

 従来の自動車マーケティングの枠を超えて、日産様、日本旅行様、JR各社様など異業種企業との協業により、新しい形の旅行パッケージを開発しました。それを単なるマーケティング施策ではなく、独立した事業体として展開したことも特徴として挙げられるでしょう。

 また、「コンテンツ」の拡充にも力を入れてきました。広告を単なる「見せるもの」から、視聴者が自発的に「見たいと思うもの」へと進化させています。マクドナルド様の「スマイルあげない」や日産様の「NISSAN LOVE STORY」などが例として挙げられます。

 加えて、NHK様との番組制作など、業界の垣根を超えた取り組みも推進しています。

AI活用時代、最も重要なメディアは「人」

 2025年は、新たな課題が見えてきています。

 メディアサイドでは、特にパフォーマンスマーケティングへの過度な傾斜が指摘されています。データドリブンで成果を追求しすぎた結果、新規顧客を育成できなかったケースがメジャーブランドでも見受けられます。このことから、データドリブンのパフォーマンスマーケティングには、一定の揺り戻しが予想されます。

 そしてマスメディアに目を向けると、より深刻な課題が浮かび上がっています。選挙報道などを見ると、人々はマスメディアに「無関心」ではなく、むしろ「敵対的」に捉えることが増えており、マスメディアは信頼性の危機に瀕しているとも言えるのではないでしょうか。

 では、これからのブランド構築や人々に興味を持ってもらうためにどうすればいいか? その答えの一つとして私が注目しているのが「企業のエンターテインメントブランド化」です。大ヒットしたマテル社の映画『バービー』や、LVMH社の映像制作会社設立など、広告的な目的を広告ではない形のコンテンツで届けようとする動きが活発になってきています。

 お金を払ってもブロックしたい広告をつくるか。お金を払っても見たい、と思えるコンテンツにするか。後者を目指したのが「スマイルあげない」や「NISSAN LOVESTORY」でしたが、どちらも広告的な目的を果たしながら、一つのエンターテインメントとして受け入れられ、その効果を発揮しています。

 今後はミュージックビデオ、映画、ショートフィルムなど、エンターテインメント性の高いコミュニケーション形態と広告が溶け合うクリエイティブがますます増えるでしょう。

 もう一つ注目すべき点は、「人」が最重要メディアになっていくということです。いま人を超えた価値あるメディアはありません。実際、停滞気味の広告市場の中でインフルエンサーマーケティングは著しく成長を示している分野の一つです。

 AI活用時代の到来により、反動として人の重要性が一層、際立ってきました。論理的には AIは人間以上に優れた、完璧な料理や音楽をつくることができます。しかし、私たちがその料理や音楽に真の愛着を持てるかは別問題。作り手や歌い手の個性が見えない限り、人はその創作物に本当の意味での愛着を持つことは難しいのではないでしょうか。

 つまり、「何を」「どのように」作るかということ以上に、「誰が」作るのかということが極めて重要になっています。特にコンテンツ領域においては、この傾向が顕著です。自動運転のように、純粋な技術的性能でAIが人間を凌駕する分野もありますが、創造性や感動をともなう領域では、やはり「人」の存在が不可欠です。

 5W1Hの要素の中で「Who(誰が)」が最も重要な要素となっており、これはメディアとしても、コンテンツを支える存在としても同様です。これが、私たちが考える2025年に向けた重要な示唆の一つです。


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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/16 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47555

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