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なぜLTVが伸びる?ファンケルとGDOの戦略に見る成功の共通点

セグメント別アプローチで一人当たりの年間金額25%アップ

 「両社は顧客理解の考え方も似ている」と髙口氏は指摘し、それだけ業種問わず有用なアプローチであることを示唆する。では、実際にLTV向上に効果を上げたコミュニケーションとしては、どのような取り組みをしているのだろうか?

 顧客によって購入する商品傾向のタイプが様々なファンケルでは、年間購入金額を縦軸に、経過年数を横軸にして顧客をマッピングして、顧客に合わせた施策を実施している。

 たとえば特定の商品だけを長く買い続ける顧客は、目的買いをしているため情報誌などを送っても読まれる可能性は低いと考えられる。そこで、ECサイトでの購入行動中にレコメンドする。一方、長く複数商品を購入しているロイヤルティの高い顧客には商品購入を勧めず、ブランドと顧客が一体となって価値を「共創」するような特別な体験を提供するなど、顧客のセグメント別にアプローチを変えて設計している。

ファンケルのセグメント別アプローチ設計
ファンケルのセグメント別アプローチ設計

 「競合と比べたファンケルの強みは、化粧品と栄養補助食品の2事業それぞれで幅広い商品ラインアップを展開していること。そして、直営のリアル店舗があることです。さらに、お客様を主語にする文化が強いため、社内全体で顧客データを重視する文化も順調に育まれています。これらの強みを活かした、お客様軸の『面』での提案や、顧客理解の深化を進めています。今後は、実店舗とECサイトなどのチャネル融合による顧客育成に取り組みたいと考えています」(石川氏)

 これまで説明した取り組みを続け、施策やコスト構造の改善など様々な打ち手を行った結果、2022年からの2年間で顧客一人あたりの年間購入金額が25%、直営通販の利益率が4ポイント増えるという効果が出ている。

ファンケルのROI改善
ファンケルのROI改善

 「顧客の行動によってスコアが貯まるというロイヤルティプログラムに見直し、固定化したコストを削減するなど大きく変えました。その分の予算を他の施策に充てたことでROIが上がりました」(石川氏)

顧客接点を増やし、相互利用するユーザー数が22%アップ

 GDOでは、5年ほど前から各事業部が持つ様々なゴルファーとの接点を活用した戦略に取り組んできた。複数サービスを活用する顧客ほどLTVが高いため、直接的に収益を産まないアプリなどのサービスについても積極的に利用促進をしていった。

GDOの顧客接点増加施策
GDOの顧客接点増加施策

 「顧客接点を増やせば増やすほどLTVが上がります。2020年から2024年にかけて、ゴルフ場予約とECサイトを相互利用するユーザー数を22%増やしました。また、ロイヤルティプログラムもアップデートしています」(加藤氏)

 もともとゴルフ場予約とゴルフ用品販売の会員向けだったロイヤルティプログラムを全サービスの会員制度に統一することで、顧客のGDOへの接触機会を増やし、「ゴルフと言えばGDO」と想起させることを目指した。

 たとえばゴルフ場の予約やプレー人数に応じて「ヤード」が付与され、ヤードが貯まった特典として特別コースの予約や先行予約受付ができるといったように、顧客のベネフィットを設計している。

GDOのロイヤルティプログラム
GDOのロイヤルティプログラム

 グレードが高くなるにつれ、お得か否かよりも、情緒や感情に訴えかける体験価値を享受できる仕組みに変更した結果、少しずつ成果が出ているという。

 「高グレードな人ほどLTVが高く、継続率も高い結果が出ています。これからも、ロイヤルティプログラムの施策を推し進めていきます」(加藤氏)

両社の共通点から見えたLTV最大化のヒント

 「ファンケルとGDOでは想定顧客の性別や提供価値が異なるものの、顧客のファクトを分析し、その裏にどのようなマインドがあるかを分解して見ていくところが共通しています」と髙口氏。

 ファンケルは顧客理解を深化することでいろいろなフェーズを発見し、それによりタッチポイントを増やして満足度を上げたり、さらにはコストのアロケーションに活かしたりしていた。一方GDOは、もともと持っている垂直的なタッチポイントを活用して顧客接点を増やし、顧客がもっと利用したくなるような提案へとつなげていった。

ファンケルとGDOのLTV向上戦略の比較
ファンケルとGDOのLTV向上戦略の比較

 このように2社の取り組みをまとめた髙口氏は、最後にLTV向上のヒントを示し、講演を終えた。

 「AI時代に入っても、おそらく顧客理解やLTV向上施策の基本はあまり変わらないでしょう。こうした基本を押さえた上で、『どのように顧客理解と提案のサイクルを回すのか?』に、自社の特長を活かすことが重要です」(髙口氏)

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/28 08:00 https://markezine.jp/article/detail/49923

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