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第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

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【新年特集】2024→2025 キーパーソンによる予測と展望

ビジネスの成長にはEX向上が不可欠に――みずほの挑戦から学ぶ

 CXの向上にはEX(Employee Experience)の向上は欠かせない。EX や人材育成、企業文化の醸成はマーケティングの視点でどう捉えられるのか。アドビの日本法人副社長として日本市場におけるマーケティングなどに携わった後、みずほフィナンシャルグループにて、グループ全体のカルチャー改革、コミュニケーション活性化、ブランド価値の向上などに取り組んでいる秋田氏に現在のチャレンジと2025年に向けたビジョン、そしてマーケターへの提言についてうかがった。

将来予測が困難な時代、企業に求められること

 今、日本企業は変革期を迎えています。マーケターの皆さんの多くは日々、顧客体験(CX)の向上を目指していると思いますが、実はその前提として必要なのが従業員体験(EX)の向上です。

 近年は働き方改革やリモートワークの浸透により、労働の意義を問い直す機会が増加しています。特にZ世代においては、収入よりも自由時間を重視する価値観が顕著となり、従来の労働観からの大きな転換が見られます。

 組織と個人の関係性においても変化が生じており、人的資本の重要性が広く認識されるようになりました。加えて、ビジネス環境は昭和・平成前半と比較して著しく複雑化しています。異業種からの参入や既存ビジネスモデルの崩壊など、過去の延長線上での将来予測が困難となっている状況です。

株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCCuO兼グループCBO 秋田 夏実氏。東京大学経済学部卒業、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。マスターカード日本地区副社長、シティバンク銀行デジタルソリューション部長など約20年に渡り金融業界に身を置き、2018年アドビ日本法人副社長に就任。2022年 5月、みずほフィナンシャルグループ入社。
株式会社みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCCuO兼グループCBO 秋田 夏実氏
東京大学経済学部卒業、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院卒業(MBA)。マスターカード日本地区副社長、シティバンク銀行デジタルソリューション部長など約20年に渡り金融業界に身を置き、2018年アドビ日本法人副社長に就任。2022年 5月、みずほフィナンシャルグループ入社。

 そこで、みずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)は創業150周年を迎える前年、2022年に企業理念の再定義に取り組みました。グループ全体で6万人超の社員からなる組織の求心力となるものです。基本理念、パーパス、バリューの3 要素を見直し、2023年5月に公表しています。

 また、ブランドスローガンをそれまでの「One MIZUHO 未来へ。お客さまとともに」から「ともに挑む。ともに実る。」へと変更しました。これは、時代の先を読み、お客さま・社会の変化を捉え、課題に対するお客さまの挑戦を支え、自らも変革に挑戦しながらお客さま・社会とともに成長する決意を表現しています。

 みずほの源流を作った渋沢栄一の「公益と私益の両立を追い求めよう」とする思想に通ずるものです。このパーパスに込めた決意を全社員が共有し、目指すべき姿の実現に向けてグループ一丸となって取り組んできました。

 2023年はパーパスの浸透に注力し、2024年はそれを継続しながら、価値観や行動軸であるバリューの浸透と実践に重点を置いてきました。さらに、2023年5月の中期経営計画では、非財務指標として社員エンゲージメントとインクルージョンの指標を KPIとして新たに導入しました。これはエンゲージメントとインクルージョンに関わるそれぞれ4つの質問への肯定的回答の比率を測定するもので、着実に成果を上げています。

6万人超の組織で企業理念を浸透させるために

 みずほでは、社内の取り組みを社外に発信し、それに対する評価を社内に環流させる「2つの輪を回す」ことを重視しています。これは6万人超の大規模組織における「伝える」という課題への重要な解決策となっています。

 社内では、新しい企業理念に根差した企業風土変革の活動を展開。全社的なトップダウンとボトムアップの双方向から、様々な施策を主導しています。そして、この取り組みで生まれたアクションを、さらに対外発信に活用していく循環を作っています。

 社外に向けては、新たなパーパスに基づく情報や施策を、リブランドされたコミュニケーションを通じて継続的に発信しています。そして、社外からの評価を社内に還流させ、さらに社員の背中を押す好循環を生み出すことを目指しています。

 たとえば、2024年7月の渋沢栄一を肖像とした新1万円札発行を機に、社員への企業理念(パーパス/バリュー)の浸透を加速させるキャンペーンを実施しました。対外発信を通じた「ミラー効果」により自分ごと化を促し、社員へのインパクト最大化を図っています。

 具体的な施策として、単なるイメージ発信ではなく、社員が実際に企業理念を体現した推奨事例を自社メディア「みずほジャーナル」で取り上げたほか、年次の「みずほアウォード」の役割の見直しと、それを中心にした企業理念浸透の仕組み化を行いました。

 これらの取り組みの結果、社員のエンゲージメントスコアは着実に向上しており、特に社員の「変革の実感」は2年間で52%から69%へと大きく上昇しました。今後は行動様式の変革を促し“大きな潮流”にすべく、引き続き多様な打ち手を講じていく予定です。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/17 09:30 https://markezine.jp/article/detail/47608

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